現役を引退した石川佳純さんが語ったのは、現役を離れたからこそ言葉にできる「真実」だった。
卓球王国の最新号の特集『今だから言える石川佳純の真実』「私の心・技・体・智・食」(前編)では鎧(よろい)を脱ぎ捨てるように自分自身を言葉で表現している。
・・・・・・・・・
苦しくて卓球をやめたいと
思った時期もあった。
でも、もう一度卓球の楽しさを
味わってからやめようと思った
・・・・・・・・・
2019年の東京五輪代表レースを戦っていた頃の心境である。
トップ選手に取材していくと、男女で全く違うことがいくつかある。最大の違いはインタビューで女子は決して戦術的なことを発言しないこと。記者に「今の相手にはどう攻めて勝てたのですか」と聞いてもはぐらかす。必然的に、心理面やメンタルに関する発言が多くなる。
それは過去に福原愛さんや平野早矢香さんでも同じだった。
その話を石川佳純さんに向けると、「そりゃ、そうですよ、自分の手の内を相手に教えることはしませんよ」との答え。5月に現役引退した石川さんは、今まで封印していた卓球の話を卓球王国へ語ってくれた。女子選手のほうが勝負に徹し、「負けることを嫌う」体質なのかもしれない。もしくは彼女たちについている専任コーチたちが日夜対戦相手を選手とともに研究しているからだろうか。
ところが、男子では戦術的なコメントを語らないということはあまりない。「2ゲーム目まで相手はミドルとフォア前もチキータで狙ってきた。途中からは相手のバックへ長く出すロングサービスを混ぜてチキータを封じました。ラリーに持ち込んだらミドル攻めですね」と、このような具体的な攻め方の話をするものだ。
男子の中では、どうせコメントしてもしなくても、相手はこちらの戦い方をわかっているのだから、次に当たった時には違うことをすればいい。このような考え方をするのだ。
男女が同じルールで行う卓球であっても、その考え方や表現方法というのは男子選手と女子選手では相当に違うののは興味深い。
さて、現役時代に逆転勝ちが多く、勝負強いという印象がある石川さんだが、その理由を説明してくれた。
・・・・・・・・・
周りの方からは「なぜ石川さんは競った時に強気でいけるのか」と聞かれたこともあります。
私も競って弱気になる時もあったし、常に強気でプレーできたわけではない。もし他の人からそう言っていただくことが多いとしたら、それは両親に感謝すべきだと今は思えます。
小学生の頃、卓球を教えてくれた両親から「9-9の競り合いになったら攻めなさい」と言われていて、それが私の中に刷り込まれています。「競ったら打て」というのは、当時も今もあまり「普通のこと」ではないかもしれません。誰でも競り合いになったらミスすることを怖がるし、選手も安定志向に入るものです。
子どもの時に「9-9になったら攻めろ。負けてもいいから攻めろ」と言われてきたので、反射的に競り合いになったら攻めるような卓球になっています。(卓球王国9月号より)
・・・・・・・・・
引退会見でもそうだったように、卓球人生を振り返りながら本音を語ってくれた石川さんの言葉は素晴らしく、力がある。
卓球王国の最新号は石川佳純ファンでなくても、卓球の奥深さに興味のある人にとって必読の一冊となった。
卓球王国最新号9月号は明日21日発売
https://world-tt.com/blog/news/product/az317
ツイート