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中国リポート

卓球台に当てた右の拳。馬龍、世界卓球の「旅」を締めくくる

2月25日に閉幕した世界卓球(団体戦)・釜山大会。大会最終日に行われた男子団体、中国対フランス戦の3番で勝利を収め、中国男子の「V11(11連覇)」を決めたのが35歳の馬龍だ。

準決勝の韓国戦では、3番で李尚洙にゲームオールで敗戦。バック対バックに以前よりもミスが増え、そのバック対バックからフォアを突かれてノータッチで抜かれる場面も多かった。決勝のフランス戦3番でも、ゴーズィに出足からバック強打で攻められ、あっという間に1ゲーム目を落とす。

「さすがの『絶対王者』も、歳には勝てないのか……」

そう思われたのだが、2ゲーム目からが馬龍の真骨頂だった。1−0でロングサービスから回り込んでパワードライブを放ち、2−0からフォアクロスへ鮮やかなフォアドライブのレシーブでノータッチ。5−0、7−2、11−2であっという間にゲームカウント1−1に追いつく。

ゴーズィのサービスが少しでもあまくなれば、レシーブから打ち抜いた

その後もあまいサービスはレシーブからフォアドライブで打ち抜き、ストップから早いタイミングのツッツキ、バックの堅い連続ブロックなど多彩な技術で得点を重ねた。3ゲーム目、11−6での勝利の瞬間は22時ジャストだった。
深夜の優勝会見で、馬龍はこう語っている。

 「私にとって世界選手権はどれも思い出に残っていますが、今回は特に忘れられないものです。昨日の準決勝、韓国との激戦の後でチームはリセットされ、今日はずっと良い精神状態で臨むことができた。中国チームのために勝利し、タイトル獲得に貢献できて本当にうれしい。
 
 同時に、樊振東、王楚欽、林高遠、梁靖崑らの成長も目にすることができた。チームがここからさらに成長していくことを信じているよ。これがぼくの世界選手権の『journey(旅)』の、最後のイベントになるだろうと考えている。」(馬龍)

男子決勝3番で中国の優勝を決めた瞬間、ラケットを握る右の拳を卓球台に当てた馬龍。最後の世界卓球の舞台で、「俺の魂はここに置いていく」というメッセージだったのか。

優勝を決めた瞬間、右の拳を卓球台に当てた馬龍

まだ中国はパリオリンピック代表選考レースの真っ最中だが、馬龍はパリオリンピックで代表入りし、選手生活の有終の美を飾る可能性が高い。その後、2025年の第15回全中国運動会には出場するかもしれないが、国際大会への出場はパリが最後になるだろう。世界卓球も今回の釜山大会が最後だ。

11連覇を決め、会場での優勝インタビューに答える馬龍

「この勝利で旅を締めくくることができるのは、完璧なエンディングだね」と会見で語った馬龍。2006年の世界卓球(団体戦)ブレーメン大会で、17歳で世界卓球にデビューし、それ以来世界卓球は2021年ヒューストン大会(個人戦)を除く17大会に出場。「V11」のうち9回の団体優勝に貢献した。

20代前半まではライバルの張継科の後塵(こうじん)を拝し、勝負弱いところがあった馬龍。個人的には2013年に地元・遼寧省鞍山市で行われた全中国運動会での優勝が、プレーヤーとしての転機になったと感じている。

常に熾烈な競争を強いられる中国代表選手で、これほど長い競技人生を全うし、円満にその締めくくりを迎えられる選手は極めて少ない。それは馬龍が卓球に対して、誰よりも真摯であったことの証左であるかもしれない。「絶対王者」のプレーを、最後の瞬間まで堪能しよう。

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