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中国リポート

馬龍が10年ぶりの戴冠、選考ポイントで王楚欽を猛追。五輪3連覇への挑戦は成るか

9月10日に閉幕したアジア選手権の男子シングルスで、決勝で樊振東をゲームオールで破って優勝した馬龍。バックハンドの技術力はまさに円熟の極みで、バック半面でのバック対バックのラリーでも深く厳しいボールを送り、巧みにコースを打ち分けた。台上でのネット際の攻防でも、少しでも浮いたストップにはすかさずフォアのパワードライブを打ち込んだ。

試合後、馬龍が「10年前に優勝した時も同じく韓国だった」と語ったように、前回の優勝は2013年の釜山(韓国)大会。2009・2012年大会に続く3連覇を飾り、「アジアの帝王」とも言われていた。しかし、これは馬龍本人にとってはあまりありがたい称号ではない。アジアの大会で圧倒的な強さを見せる一方、世界選手権などのビッグゲームでは先輩の王皓や、ライバルの張継科の後塵(こうじん)を拝していたからだ。

それから10年、2015・2017・2019年世界選手権3連覇、男子初の五輪シングルス2連覇など球史に残る記録を作ってきた馬龍。試合後のミックスゾーンで「今の実力は、数年前と比べるとかなり下がっているかもしれない。タイトルを獲得するのはとても大変だけど、自信を得るためには大切なこと。会場でのファンの方々の応援も、大きな力になりました」と語った。

 

樊振東を男子シングルス決勝で破り、歓喜を表す馬龍(写真=ATTU)

 

今年5月、中国卓球協会はパリ五輪に向けた選考方式を発表。パリ五輪のシングルスの出場権は、世界ランキングポイントに国際大会での成績に応じて与えられるボーナスポイントを加えた「パリ五輪シングルス選考ポイント」で、2024年5月7日の時点で上位2名に入った選手に与えられる。最終的な出場選手の決定権が協会にあることに変わりはないが、「公平・公正・公開」の「三公」をスローガンに、透明性の高い選手選考となっている。

アジア選手権の前後で、中国男子の選考ポイント上位5名のポイントは下記のように変化した。

1位 樊振東 「6880」→「9630」
2位 王楚欽 「3820」→「5220」
3位 馬龍  「1755」→「4855」
4位 梁靖崑 「1700」→「3175」
5位 林高遠 「750」→「840」

2位の王楚欽がシングルスでポイントを獲得できず、団体戦での勝利による1400ポイント(決勝800/準決勝400/準々決勝200)に留まったのに対し、馬龍はシングルス優勝により世界ランキングポイント「500」とボーナスポイント「2000」、さらに団体戦での勝利ポイント「600」(準決勝400/準々決勝200)を獲得。「2065」あった王楚欽との差を「365」まで縮めた。もし馬龍が団体決勝のチャイニーズタイペイ戦で起用され、勝利していたら、順位は逆転していたことになる。

 

馬龍の正確無比なバックハンドは、さらに完成度を高めている(写真=ATTU)

 

パリ五輪のシングルス代表は樊振東と王楚欽で、馬龍は団体戦の3番手として豊富な経験でチームを支える。これが中国男子の既定路線だったはずだが、王楚欽は孫穎莎との混合ダブルス出場が確実視されている。攻撃的なスタイルの王楚欽は今までに左腕をはじめ、多くの故障を抱えており、混合ダブルス・シングルス・団体の3種目出場にはリスクも伴う。

シングルス代表を王楚欽から馬龍にスイッチし、3選手が2種目ずつ出場する形になれば……馬龍の前人未到の五輪シングルス3連覇への道が見えてきたのか?

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