3月25日夜、中国男子チームの樊振東が『微博(ウェイボー/SNS)』に投稿。「最近、私の身分証番号がインターネット上で悪意を持って拡散され、プライバシーと名誉を深刻に侵害している。身分証番号から私の携帯電話の番号を調べ、嫌がらせの電話をかけてくる人もいる」と述べ、インターネット上で個人識別情報などを無断で公開する「ドキシング」の被害に遭っていることを明かした。
「私の身分証申請に使用されたいくつかの身分証番号は家族のものだったため、家族にも大きな精神的ダメージを与えている。私は一部の人たちに、理性を取り戻し、決して法律に触れることはしないよう求める。インターネットは無法地帯ではないし、『飯圏(ファン・グループ)』も誰かを守ってくれることはない。
もし法律に違反すると知りながら法を犯し続けるのなら、私は(韓国からの)帰国後に証拠を集めて警察に通報する。法の網は粗いようでも、決して悪を見逃すことはないと覚えておいてほしい」(樊振東)
中国国民は16歳になると身分証明書に当たる「居民身分証」を作成し、『公民身分号碼』と呼ばれる18桁の番号が割り当てられる。結婚や就職など重要な場面だけでなく、銀行口座の開設や長距離移動、果ては公園に入るだけでも身分証の提示が求められる。
どんな手続も身分証ひとつで済む一方、18桁の身分証番号は特定が容易で、政府要人や芸能人の個人情報の流出、大規模な個人情報の流出が後を絶たない。機密情報や個人情報の暴露を目的とする『悪俗圏』なるネットユーザー集団も存在するという。
樊振東については、3月7〜17日に行われたシンガポールスマッシュで、本戦のスタート前にアメリカの女性トップシンガー、テイラー・スウィフトのライブを訪れた際の私的な映像が拡散。その後、決勝トーナメント2回戦で後輩の林詩棟に敗れ、ベスト32で大会を終えたことで批判的なコメントが相次いだ。
大会が閉幕した日、樊振東は『微博』で「私はコートでは、『為国争光(国に栄光をもたらす)』という義務をこの10年以上怠ったことはない。一方でコート外のプライベートの時間では、普通の趣味や人間関係を持つ普通の青年だ」と語り、自身の行動への理解を求めた。しかし、この騒動によって悪意あるネットユーザーの標的になってしまったようだ。
昨年4月、ホテルの部屋にファンが侵入した事件をはじめ、何かとファンとのトラブルに見舞われることの多い樊振東。それだけ熱狂的なファンが多いということなのか……。常に「人民の模範」であることを求められるのは中国代表の宿命だが、このネット社会では余計な気苦労も多い。
中国リポート担当の編集部タローは、樊振東が優勝した2012年世界ジュニア選手権から彼のプレーを見てきた。2017年にジャパンオープンで来日した際にはインタビューもさせてもらったが、コートでの鬼気迫る表情とは対照的に、普段は穏やかで礼儀正しく、チャンピオンらしくないくらいの好青年。今はただ競技に集中できる環境で、競技人生のひとつの集大成となるパリ五輪へと向かっていけることを願っている。
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