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世界卓球2024

トレビアン! フランスの躍進の理由は五輪効果だけではない。兄弟の秘密基地はモンペリエ

それは2017年9月に始まった。
IOC(国際オリンピック委員会)総会で、2024年のオリンピックがパリで開催されると決定した。
どの五輪でも、開催国は各競技でレベルアップするのが常だ。国内での五輪へ向けた機運も高まるし、いわゆるスポーツ庁のようなところからのお金(補助金)が開催決定以後に各競技団体、メダル候補選手たちに注ぎ込まれるからだ。

フランスも例外ではない。

2017年当時はフランスの卓球は低迷期とも言えたが、男子で言えば、シニアになりたてのゴーズィ、そしてまだカデット以下の選手だったルブラン兄弟(現在アレクシス20歳・フェリックス17歳)、女子のパヴァデ(19歳)が強化の対象となり、急激に力をつけている。その若手選手たちが今回、史上初のアベックメダル獲得の中心となった。特にルブラン兄弟のこの1年間の躍進は目を見張るものがある。

今まで、フランスのトップクラスのジュニア、シニアの選手はパリ郊外にあるINSEP(インセップ・国立トレーニングセンター)でナショナルチームとして居住しながら、練習を行うのが常だった。

しかし、コーチのナタナイル・モーリン氏とルブラン兄弟、そして父(ステフェン・ルブラン/元フランス代表選手)はINSEPに行かずに、地元の「モンペリエ」というクラブで練習を続けることを選択した。

日々の練習のテーマは「対応力」と「創造性」。ユニークな練習法で、固定観念にとらわれない卓球スタイルを作り上げていった。弟のフェリックスはヨーロッパではチウ・ダン(ドイツ)に続くように中国式ペンの両面打法を駆使したが、気がつけばあっという間にチウ・ダンを追い抜いて、現在世界ランキング6位と驚異的なスピードで世界の頂点へ近づいている。

中国とは違うペン両面攻撃のスタイルを築いたフェリックス・ルブラン

兄のアレクシスはジュニア時代から膝に問題を抱えていて、練習できない時期、大会に出られない時期もあったが、ポテンシャルは高い。以前、兄弟とコーチにインタビューした時には、「日本の個人のチームをモデルにしている」と言っていた。つまり、ナショナルチームに依存するのではなく、個人でスポンサーを集め、専任の技術コーチ、フィジカルコーチを作っていく体制を目指していた。

兄のアレクシス・ルブランは創造性と一撃のパワーを兼ね備える

また3番手として渋い働きをしているゴーズィは長年ドイツの「オクセンハウゼン」でプレーし、訓練している。つまり、フランス男子の3人は協会、強化本部との距離を適度に保ちつつ、オリンピックを目指している。だから今回、ベンチでは今までのシーラ監督ではなく、モーリン氏が監督として采配をふるった。

経験豊富なゴーズィ。この男が3番に控えるのもフランス男子の強みだ

今大会、女子は1991年以来のメダルを獲得し、男子は1997年以来のメダルを獲得した。予算面での選手強化としての「五輪効果」は明らか。だが、特にルブラン兄弟においては、五輪後もお金抜きで活躍は期待できる。それはユニークな強化方法やプレースタイルという強化の根幹が見えるからだ。

今日の午後5時、フランス男子はチャイニーズタイペイと対戦する。もし勝利し、決勝へ進むとなれば、こちらも27年ぶりの快挙。それはパリ五輪への高らかな号砲となるだろう。(今野)

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