グループリーグでヨルジッチを擁するスロべニアがシンガポールと対戦した。トップのダルコ・ヨルジッチは1月のヨーロッパトップ16で3連覇している。世界ランキング15位の25歳、対するはアイザック・クエク。シンガポール生まれのシンガポール育ちの17歳で、世界ランキングは55位。
二人は熱い試合を展開。ヨルジッチの強力なバックドライブを、クエクが巧みなブロックとカウンターで対抗する。
●グループリーグ <スロベニア対シンガポール1番>
ヨルジッチ 11、−8、13、7 クエク
4ゲーム目、10−5とヨルジッチがマッチポイントを取ったところから、10−7とクエックがじりじりと追い上げたところで、ヨルジッチのつなぎのフォアドライブがネットインで入り、浮いた。しかし、クエクがタイミング合わずに、ドライブをオーバーミスしてゲームセットとなった。
試合が終わり、ヨルジッチが握手を求めに行くと、ネットインにカーッとなったクエクが握手を拒否。その態度に対して、ヨルジッチも何やら怒った口調で言う。「ネットインで入ったとは言え、握手もしないやつは最低だぞ」(想像)と言わんばかりに形相を変えた。
そして相手ベンチに挨拶して、自チームに戻る時に、少しばかり冷静になったクエクが手を差し出したのだが、ヨルジッチはこれを無視して、ベンチに戻った。
試合内容が良かっただけに後味が悪いものになった。
興奮気味のヨルジッチをベンチで待っていた女性はスロベニアのアンドレア・オジュスターセク監督。子ども時代からヨルジッチを指導して、現在はドイツの「ザールブリュッケン」でヨルジッチの指導に当たっている。
まるで母親のようにヨルジッチにアドバイスを送るオジュスターセク監督。ヨルジッチは彼女の前をウロウロしながら言葉を頭に残しているはずだ。
世界15位の選手を教える母親的な女性コーチ。シンガポール戦でヨルジッチは4番でパン・コーエンに勝ち、2点を奪った。
試合終了後、お互いの選手が握手をかわす。世界選手権の団体戦では当たり前の風景。シンガポールのベンチに歩みを進め、コーチや選手と握手を交わすヨルジッチ。最後にトップの試合後に握手をかわさなかったクエクがいた。そこでヨルジッチはこのジュニア選手の手を握り、言葉をかけ、肩をポンポンと叩いた。
ゲームは終わった、ふたりのわだかまりも消えた。卓球界の後輩クエクに激励を送った先輩ヨルジッチ。
激戦のエンディングは「フェアプレー」だった。
ツイート