昨日の女子準決勝の香港戦2番で、1ゲーム目はゲームポイントを奪われながらもストレートで勝利を収めた早田ひな。1月の全日本選手権に続き、今大会でのプレーの充実ぶりは、目を見張るものがある。
香港戦で渡辺武弘監督が張本美和をトップに起用できたのも、2・4番に出る早田の存在があってこそ。さらに3番に平野を置くことで、万が一前半で張本が失点することがあってもリードして後半につなぎ、4番・早田が決める。
早田は朱成竹戦を振り返り、「1ゲーム目の入りがあまり良くなかった。相手が思い切って攻めてきたことも重なってジュースになってしまった」と語った。2番に出場する選手は、1番の試合の進行状況を見ながら準備を進めなければならない。
「昨日の準々決勝では、日本の前の試合(フランス対ドイツの女子準々決勝)が競っていたので、『一度体を動かしたほうがいいな』と思って試合前に練習に行きました。今日(23日)はスムーズに試合が始まるかなと思ったので、試合が始まってからアップや練習はしなかったんですけど、1番で3−2まで競ったので30〜40分くらいベンチにいて試合に入ってしまった。1ゲーム目はあまり感覚がなかった。
これが団体戦の難しさというか、この先は1番で試合をしている選手がいても、2番だったら絶対練習したほうがいいと思いますね」(早田)
ベンチでコートを着込んだ選手たちの映像は、日本でも流れていることと思うが、今大会の会場はかなり寒い。早田も試合前のアップや練習には相当気を遣っているが、より細心の注意が必要ということだろう。
これで早田は7戦全勝。準々決勝のルーマニア戦でドラゴマンに1ゲームを落としただけという、圧倒的な強さ。サービスひとつとっても、トスの高さ、回転量、コースを変えながら、まるでラリーを楽しむように相手の攻撃をしのぎ、反撃で逆を突く。まだ実力の半分ほどしか出していないようにも見える。
2018年大会ではチームメイトの石川佳純、伊藤美誠、平野美宇らが東京五輪の代表選考レースの真っ只中で、早田の出場はグループリーグの1試合のみ。前回の2022年大会では体調が整わず、決勝のコートに立つことができなかった。「世界卓球の団体戦とは不思議と縁がない」と語っていた早田。今大会での活躍はその鬱憤を晴らすものだ。
いよいよ臨む女子決勝の中国戦。「ここまでは負けない卓球を貫けば、自分も日本チームも負けることはなかったと思うんですけど、ここからは本当に勝つ卓球をどんどん入れていかなきゃいけない」。そう語る早田だが、意識が過剰に攻撃に寄りすぎることはない。
「やっぱり同じ人間なので。ちょっと打たせてミスを誘うとか、すべて自分で勝負しなくても点を取れたりもする。中国人選手のほうが、『絶対に勝たなきゃいけない』という緊張感をより強くもっているからこそ、私自身はより大きく構えていける。
負けない卓球、プラス勝つ卓球。それに名古屋でのWTT女子ファイナルズ以降、カタール(WTTスターコンテンダー)での孫穎莎選手との試合も含めてやってきたことを、しっかり出せたらいいと思います」(早田)
世界卓球団体戦の決勝は、出場することになれば今回が初めてだ。
「今の自分で、どう戦えるか。初めての舞台ではあるので楽しみではあるんですけど、もうどっちに転ぶかわかんない。それも卓球人生のひとつの経験として、思いっきり楽しんでいきたいです」(早田)。その意気や、良し。全力で楽しむ早田ひなの姿を最後まで見届けたい。
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