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「中国に勝てるのは日本だけだ、ということを世界中に示した」田㔟監督、10月8日の成都を振り返る

世界選手権成都大会(団体)の最大のクライマックスは決勝ではなく、日本男子の張本智和が2点を奪い、王者・中国を追い詰めた準決勝だった。試合から1週間後、全日本男子の田勢邦史(たせい・くにひと)監督は「日に日に『中国に勝ちたかった』という気持ちが強まっています」と語る。中国を追い詰め、ラストまでもつれ込んだのは、2001年大会の中国対韓国以来、21年ぶりだった。日本が、そして張本が見せた闘志と可能性。それでもくずれなかった中国。田㔟監督は「10月8日の中国戦」を振り返った。

前編・後編、2回に分けて掲載する。

聞き手=今野昇

 

「中国戦の張本は

本当に強かったですね。

あれが私が求めている卓球ですね」

 

●準決勝

               中国 3−2 日本

○樊振東           5、10、4          戸上

王楚欽            8、ー8、ー6、ー9      張本○

○馬龍     ー8、5、5、2       及川

  樊振東     ー7、6、3、ー9、ー9     張本○

○王楚欽            10、7、4              戸上

 

王楚欽、樊振東と互角に打ち合った張本のフォアハンド

 

観客席に陣取った中国国家チームの選手とコーチも必死に応援

 

中国ベンチも必死だ。「日本に負けられない」「中国卓球史の中に敗戦の文字を刻みたくない」という思いだ

 

世界チャンピオン樊振東を破った張本。世界が驚き、称賛の拍手を送った

 

●−準決勝の中国にはずっと勝っていない。その中国戦の前に選手たちにはなんと言ったのでしょう。

田勢 みんなにはまず「いろいろある中でよくメダルを獲得してくれた。みんなの戦いには感動している。しかし明日は中国戦。いろいろなことを考えずに1本1本集中して挑戦者として向かっていこう」と伝えました

 

●−準決勝のトップは戸上と樊振東でした。

田勢 緊張はしていたと思うけど、戸上は黃鎮廷(香港/ウォン・チュンティン)にしか負けていないし、ずっと良い試合をやってきていたので、「やってやるぞ」という顔つきでした。2ゲーム目はジュースまで行ったので、そのゲームを取っていたら面白かったと思う。いろいろと課題が見つかったけど、2番の智和につながる戦いでした。

 

●−2番の張本はもともと王楚欽には分が悪い。1ゲーム目を落としたけれど、2ゲーム目からは素晴らしい内容でした。

田勢 レシーブができるようになってきているし、速いラリーにもついていけるので、試合中に自信を持ってプレーできていた。これはいけるという試合でした。(張本)智和はルーマニアが終わってから気持ちを入れ替えた。ここで中国とできることに対し、「おれがやってやるぞ」というポジティブな気持ちになっていた。

 

●−ベンチに帰ってきたときの様子は? ベンチでも彼のほうから話をして確認しているようにも見えました。

田勢 そういうときは良いときなんです。やることが明確になっているときです。ダメなときには自分のやることに固執しているとき。あのときは、自分のやることはしっかりわかっていながら、いろんなことにトライしていた。

 

●−バックはもともと強い選手なのに、強化してきたフォアハンドは中国と互角くらいの感じで打ち合ってました。

田勢 すごく強かったですね。あれが私の求めている卓球ですね。もちろんまだまだ進化できると感じているしあれが最低基準になってくれると本当に強いと思う。課題と言われてきたフォアハンドにおいて、今まで取り組んできた結果が今回出ました。長所を伸ばすのはもちろん大切だけど、卓球というスポーツは弱点を攻められるスポーツです。智和は今まで長所を伸ばすことに目が向いていたけど、自分の課題に受け入れ取り組んだことで、あれだけ卓球が変わりました。

董崎岷さんに智和の指導を重点的にお願いし、智和も受け入れている。ぼくも董さんとは意見が同じです。智和自身も自分の可能性を感じていると思います。

 

●−3番に中国は馬龍でした。及川は1ゲーム目を取り、3ゲーム目の4−1までリードしました。

田勢 馬龍が3番という鬼のようなオーダーですが、及川は馬龍と試合をしたときと、他の試合が違う。なぜ馬龍とやったときと同じようなメンタルで他の試合ができないのか。馬龍のときは自分から仕掛けたり、落ち着いてやってみたり、ガッツを出しながらプレーしていた。それまでは常に不安な表情、自信がない表情を見せていました。及川は自分の中に問題があるのではないか。そこを調整、克服しなければいけない。馬龍に勝ち切ることは難しかったけれど、あの試合は非常に良かった。次の智和の試合にもつながったと思います。

4番の智和は世界最高峰のラリーだったし、もっともレベルの高い試合でした。智和は樊振東に引けを取らないフォアの打ち合いと、バックのラリーを見せてくれた。メンタル含めどちらかが細かいミスをしたら負けの内容だった。ふたりともすごかった。大会のベストゲームですね。

 

●−あの試合、日本で見ていた人は鳥肌が立ったんですけど、中国をラストまで追い込んだのは2001年大阪大会の中国対韓国戦以来。日本対中国でラストに行くのは1973年サラエボ大会以来、勝てば1957年ストックホルム大会以来となります。ベンチにいてどういう状態でした。

田勢 そこまでさかのぼるんですね(笑)。張本が勝って、戸上を送り出すときには、「勝つとか負けるとかを考えるのではなく、最後だから思い切ってやってこい」と。戸上もベンチも「おれたちがやってやるぞ」という雰囲気でした。

 

樊振東を破り、ベンチに戻る張本

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