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中国リポート

6枚の金メダルと29の勝利、たったひとつの敗北。馬龍、オリンピックの旅を終える

パリ五輪卓球の男子団体決勝で、中国がスウェーデンを3−0で破り、団体戦が導入された2008年北京五輪からの連続優勝記録を「5」に伸ばした。トップで馬龍/王楚欽が、スウェーデンのシェルベリ/K.カールソンとの接戦に3−2で勝利。最終ゲーム、10−7での4回目のマッチポイントで、馬龍はウイニングショットのフォアドライブを決めた後、大きく吠えてもう一度フォアドライブをフルスイング。「マロン・トルネード」で感情を爆発させた。

北京市チームの後輩、王楚欽とのペアで男子団体決勝トップで勝利(Photo:ITTF/Rémy Gros)

パリ五輪は、馬龍にとって記録ずくめのものとなった。まず4大会連続のオリンピック出場は、中国の卓球選手では初めて。これまでに男子では孔令輝、王励勤、王皓、女子では王楠、郭躍らが3大会連続で出場していたが、馬龍が新記録を樹立した。そのうちシングルスの出場は2大会だが、競争の激しい中国での4大会連続出場は燦然と輝く。

そして今大会で獲得した通算6個目の金メダルは、卓球のみならず、すべてのオリンピック競技(夏季・冬季)を通じて中国選手の新記録。これまで馬龍は女子飛込み競技の呉敏霞や陳若琳、男子体操の鄒凱と金メダル5個で並んでいた。1大会で複数の金メダルを獲得できる競泳や体操の新鋭が現れれば、馬龍の記録も抜かれる可能性があるが、しばらくは抜かれそうにない。

また卓球では、女子の鄧亜萍・王楠・張怡寧・陳夢がオリンピックで金メダル4個を獲得している。一方、男子では張継科と樊振東の3個が最高。現役選手では樊振東や陳夢が馬龍の記録に並ぶ可能性はあるが、更新するのは難しいだろう。

男子団体表彰での馬龍(中央)。6枚目の金メダルを手にした(Photo:ITTF/Rémy Gros)

ちなみに2012年ロンドン五輪から、シングルスに2回、団体戦に4回出場している馬龍は、単複合わせて30試合でプレーした。キリ良く30戦全勝ならば完璧だったのだが、実は一度だけ敗れている。

オリンピックでのデビュー戦となった、2012年ロンドン五輪・男子団体1回戦のロシア戦。2番でエースのシバエフにストレート勝ちした馬龍は、王皓と組んだダブルスでスミルノフ/スカチコフにゲームオールで敗戦。準々決勝以降は王皓/張継科にペアを組み替えられた。このダブルスでの敗戦は、中国男子が男子団体5連覇の過程で記録した、わずか3つの敗戦のうちのひとつだ。少々ほろ苦いデビューとなったわけだが、その後は一度も負けなかったというのもすごい。

ロンドン五輪の男子団体1回戦、王皓とのペアでスミルノフ/スカチコフに敗戦。中国男子が五輪団体戦で喫した、初めての黒星だった

ロンドン五輪当時の馬龍。先輩の王皓が天敵で、ライバル張継科にも先行を許していた。のちに「絶対王者」となることを想像するのは難しかった

パリオリンピックでの男子団体優勝会見で、「この(ロンドン五輪からの)12年間は浮き沈みの多い旅(journey)でしたが、私はとても幸運だと感じています」と語った馬龍。「東京の後、パリに来るとは思っていませんでしたが、この3年間で精神的にも技術的にも成長できました。世界最高のチームメイトふたりがそばにいてくれたことに感謝していますし、この金メダルは私のオリンピックの旅を締めくくる素晴らしいものです」(馬龍)。

オリンピックへの出場は今大会が最後だと語った馬龍。2月の世界卓球釜山大会(団体戦)の後、世界卓球も釜山大会が最後になると語っていた。今後の去就については「帰国してから考えたい」と明言を避けたが、さすがに第一線からは退くことになるだろう。中国では2025年11月に全中国運動会・卓球競技がマカオで開催予定。オリンピックの翌年に行われる、この4年に一度の総合競技大会を現役最後の舞台にする選手も多いが、果たして馬龍はどうするか。

ちなみにパリ五輪の大会期間中、中国のメディアから引退後にコーチになる可能性を尋ねられた馬龍は、こう答えている。「ぼくはコーチには絶対向いていないと思う。たぶん選手への要求が厳しくなりすぎるから」。卓球に対して最もストイックであり続けた男・馬龍の第二の人生も、大いに興味あるところだ。

表彰式後、劉国梁会長の胸に金メダルをかけていった中国チームのメンバーだが、6人目の馬龍はメダルを渡さず(Photo:ITTF/Rémy Gros)

「中国は5種目優勝なので、首にかけるメダルも5枚がいい」。そそくさとメダルをポケットにしまう馬龍(Photo:ITTF/Rémy Gros)

満面の笑顔の劉国梁会長。そういうわけで、首にかけたメダルは5枚です(Photo:ITTF/Rémy Gros)

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