卓球王国 2021年9月21日 発売 vol.294
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最強ジュン・ミマ対談アーカイブ「我ら五輪延期にも動じず」

 

<卓球王国2020年6月号より>

Jun×Mima

水谷隼&伊藤美誠

最強ジュン・ミマ対談

「我ら五輪延期にも動じず」

 

アーカイブですが、東京五輪の写真を使います

 

 

「1年後なら自分で頑張ろうという気持ちも

まだまだキープできます。

自分がまだ強くなれる可能性も

あるので頑張りたい」〈隼〉

 

「強くなってオリンピックの舞台に立てるし、

オリンピックまで成長できる」〈美誠〉

 

 

 

インタビュー=今野昇

写真=江藤義典

 

(2020年)新型コロナウイルスの影響で首都圏を中心に

緊急事態宣言が発令され、

全国で学校の部活動や公共施設での活動、

卓球大会やイベントの自粛が続いている。

そんな中で、東京五輪の延期が決まり、

代表内定選手は変更されずに、そのまま五輪に挑む。

3月のカタールオープン。見事混合ダブルスで優勝した水谷隼と伊藤美誠。

この二人は静岡県の豊田町卓球スポーツ少年団の出身。

奇しくも「豊スポ」出身の二人が五輪の舞台でペアを組む。

今回の対談は「日本の卓球ファンを元気にする」ことをテーマにした。

まるで兄妹のようなコンビの元気放談の始まり、始まり。

 

 

「選考レースの体と精神面の

疲れも全然取れていなかった。

逆に1年後のほうがいいです」〈隼〉

「私自身はやり続けます。

今もやり込んでいるし、 

リセットすることはない」〈美誠〉

 

閉塞感が強く漂う2020年3月中旬に「日本の卓球を元気にする企画」を考えた。

3月のカタールオープンの混合ダブルスで優勝し、東京五輪でも有力なメダル候補である水谷隼(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)の二人の対談。打診すると、二人とも快諾。

静岡県の豊田町卓球スポーツ少年団の出身で、当時は家も近所で家族ぐるみの付き合いをしていた二人が、五輪で混合(ミックス)ダブルスを組み、メダル候補と言われている。なんとも不思議な縁である。

あえて、二人がいつも呼び合っている「ミマ」と「ジュン」のままで原稿を作り、こちらもいつもの呼び方を文字にしたことをご容赦願いたい。この対談は素の二人の言葉のラリーである。

◇◇◇◇

●─いつもの雰囲気でやりたいので、あえて隼と美誠ちゃんと言わせてください。ちょうどこの対談の前日に「五輪延期」が発表となりました。今の率直な気持ちを聞かせてください。

伊藤美誠(以下・美誠) 延期になるのかなと思っていましたが、来年の夏というのが決まり、自分自身は成長するのみなので、プラスにとらえてます。さらに強くなってオリンピックの舞台に立てるし、オリンピックまで成長できると思います。それはミックスダブルスも同じで、ワールドツアーもないので、試合感覚は大事だけど、ダブルスでも成長するために課題を持ってやっていけると思います。

水谷隼(以下・隼) 延期になる可能性はすごく高いと思っていたので、延期は想定内です。延期が1年後になるか2年後になるかわからずに、2年後の可能性が高いと思っていたけど、1年後なら自分で頑張ろうという気持ちもまだまだキープできます。

これから準備期間があると思えば、自分がまだ強くなれる可能性もあるので頑張りたい。

 

●─選手としてピーキングを考えれば、延期でいったんリセットするのかな?

美誠 私自身はやり続けます。今もやり込んでいるし、あと4カ月だと思ってやっていたけど、リセットすることはない。しっかりとオンとオフは使い分けるけれど、そのままやり続けます。何日か休むとかはない。今までどおりでさらに1年伸びたくらいのつもりでやっていきたいし、成長する部分しかないですね。

 

●─隼はリセットでしょ(笑)。

 まあそうです(笑)。去年1年間本当に大変で、代表が決まってから時間が全然足りなかったし、オリンピックの代表選考レースでの体の疲れも精神的な疲労も全然取れていなかった。逆に1年後のほうがいいです。

美誠 ワールドツアーがなく、いきなりオリンピックに出るよりも、来年のワールドツアーをやってからオリンピックを迎えるほうが良いですね。その分、今は試合感覚を鈍らせないためにしっかり練習試合をやっています。

 

●─今回の企画は、「日本の卓球ファンを元気にする」というテーマです。実際に3月のカタールオープンで中国勢を破ってのミックスダブルス優勝で、日本を元気にしてくれました。強かったね。実際はどうでした?

美誠 今までで一番強かったですね。(レベルが)上がってるなというか、決勝だけでなくて、準々決勝、準決勝と自分たちらしいプレーが全部できたし、やっていてすごく楽しかった。私は男子選手のボールを受けるのがすごく楽しくて、許昕選手のボールを受けたりすると、すごくワクワクするし、たまらないです。カタールの自分たちはメチャクチャ強かったと思います。

 カタールの前のハンガリーオープンで自分がケガをしてしまって、優勝する可能性が非常に高かっただけに、美誠に申し訳ないと思っていました。ハンガリーの後、「次のカタールは万全な状態で臨むから」と連絡して、その言葉どおりに自分もしっかり仕上げることができたし、結果もついてきたからとても良かった。

 

●─カタールの時の動きは良かったし、気合も入っていたね。

 ぼくらのミックスのランキングも3位か4位で順位を上げないといけないという中で、ハンガリーで試合ができなくて、逆にカタールは中国ペアがひとつ棄権したので、自分たちが優勝できるチャンスだと思っていた。かなり気合入ってましたね。

 

「ペアを組んで

まだ1年も経っていないけど、

どんどん強くなっている」〈隼〉

「隼の考えがすごい、

相手が見えている」〈美誠〉

 

●─五輪が延期になって、二人のダブルスがさらに強くなっていく予感はしますか?

美誠 今まで練習はそんなにしたことがない。試合前にバッとやるだけなんだけど、少しやるだけで、全然感覚が違う。まだまだお互いに持っているものはあるので、それをミックスでどう出せるのかという課題を持って今はやっています。その練習をして、さらに試合でどう活かせるのか。日本選手と練習するとボールが合うので返されることは多くなりますが、こちらのプレーが日本選手に効けば中国選手にも効くと思ってやっています。

 ぼく自身、ダブルスで国際大会にしばらく出ていなかった。ましてやミックスダブルスは10年以上もやっていないし、まだまだぼくらのペアは経験が足りない。逆に言えば、すごく伸びしろがあると思っています。ペアを組んでまだ1年も経っていないけど、どんどん強くなっているし、ぼく自身も良くなっているなという実感があります。その中で、自分に足りないこと、やらなければいけないことを試合の中でたくさん感じるので、それをこれから修正していきたいですね。

 

●─二人のペアはやりやすい?

美誠 やりやすいですね。

 もちろん美誠は女子のトップ選手ですから。単純に実力が違う。相手の女子選手と美誠が圧倒的に力が違うから、相手がヨーロッパ選手であれば、負けるわけがない。

 

●─本人は「男子のボールを受けるのが楽しい」と言ってるけど、女子選手が相手の男子選手のボールが取れない、嫌だというのが普通だけど。

 ぼくが思っている以上に、美誠が返球するので、その次のボールの準備をするのが大変です。ぼくのほうが諦めることが多いので、それを美誠が返球して、ぼくの反応が遅くなることがある。それは自分の悪いところですね。

 

●─それは悪いね(笑)、ダメだね。

美誠 (笑)。男子のボールを返したら、次は相手の女子の返球だし、そうしたら隼だから大丈夫だと言い聞かせているので、とにかく男子のボールは何とか当ててでも返そうと思っています。

 

●─この際だから、隼に注文を出したら?  もっと反応早くしてよ、とか。

美誠 いやいや(笑)。でも、本当に組みやすいんですよ。隼はコースや緩急のつけ方もうまいし、相手選手にフルスイングで打たれても、私にとっては相手のボールが70%くらいのボールに思えるんです。隼がうまいから、自分が返せると思う。隼は欠点がない。強いけど、「うまい!」とも思う。考えがすごい、相手が見えている感じがします。試合終わってからコーチと話をするんですよ。「やっぱり隼はうまいよね」と。

 

●─こんなに褒められたのは久しぶりだよね(笑)?

 フフ(笑)。二人だけの時はこんな話をしないから(笑)。ただ、頭で考えても、それをできる技術とメンタルがないとできないと思う。美誠にはロングサービスの指示や、レシーブでこうしてほしいという指示も出します。それは美誠の技術力があるからできる。普通の選手であれば、こうしてほしいと言うとミスも出てきてしまうけど、それを技術とメンタルでカバーできるのが彼女の強みだと思います。

 

●─今まで隼はダブルスを組むと、自分の技術力が高いから、時々、パートナーに「なんで今のボールミスするの?」という仕草や雰囲気を出すんだよね。

 出さないですよ(笑)。

美誠 (笑)

 出しません(笑)。

 

●─美誠ちゃんと組むと、逆に従っているような感じだよね。

 自分のほうがミスが多いから(笑)。常に申し訳ないなと思っています。

美誠 私もミスが多いから、私も隼以上にミスがなくなれば二人のペアは絶対負けないと思います。私自身が自由にやらせてもらっているから、私の良さも引き出してもらっている。普通、ダブルスを組むと、二人の良さは出ても、それぞれの良さが消えてしまうペアもあるけど、私は自由にやらせてもらっているので、1+1が2ではなく、私だけでも5くらいになっています。