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最強ジュン・ミマ対談アーカイブ「我ら五輪延期にも動じず」

「隼と組むイメージは

全くなかったです。組めたら

楽しいなと思ったけど」〈美誠〉

「女子の中で美誠は圧倒的に

強いので、ぼくが組めば上に

行けるなと思ってました」〈隼〉

伊藤が豊スポ時代に、近所だった伊藤家の自宅を訪れ、ミマと遊ぶジュン少年

 

●─二人は豊田町卓球スポーツ少年団の出身だけど、二人が同時に所属していたことはないんだよね。

美誠 一緒に練習した時期はないです。たまに隼が実家に帰ってきた時にボールを打ってもらったことはあります。あとは地元に帰ってきた時に、私の家に来てくれました。

 家族みんなでしょっちゅう(美誠の家に)行ってましたね。

美誠 私もまだ小さかった。隼は卓球は真剣にやらないけど、ちょーんちょーんとボールを打ってくれた。

隼 当時はドイツに行っていて、たまに帰ってきた時にいつも美誠の家に行っていた。美誠は(全日本)バンビで優勝した頃ですね。

美誠 卓球というよりも一緒に遊んでました。追いかけっことか。あとはよくおんぶしてもらっていた(笑)。

 

●─表紙をおんぶにすれば良かったな。

美誠 絶対嫌だ(笑)。

 

●─美誠ちゃんから見たら、その頃の隼はどういう存在だったんだろう。

美誠 お兄ちゃんのような感じで、強い選手とはわかっていたけど、オーラもなかった。普通に自転車こいで家に来たり、結構道端で会ったりして、「え?隼、なんでいるの?」とか。

 

●─そんな近所なの?

美誠 歩いて5分くらい。私はその豊スポ(豊田町卓球スポーツ少年団)が隼の出身のチームだと全然知らなかった。

 

●─小さい頃の美誠ちゃんは、何か他の子と違う部分はあったのかな。

 毎日6時間くらいやっていたらしくて、とにかくよく練習する子だなと。

美誠 豊スポは週2回だけで、それでもママが気がすまなかったら、家に帰ってからも練習してました。

 

●─すごい子だ(笑)。隼が美誠ちゃんと会った頃の印象は?

 クソガキじゃないですか(笑)。

美誠 めっちゃ、いろいろなところを走り回って、わちゃわちゃして、落ち着きのない子でしたね。

 

●─この子はひょっとして……と思ったのはいつ頃?

 たぶん中学の時くらいかな。(平野)美宇ちゃんと美誠が国際大会に出るようになってからかな。

美誠 男の子みたいとよく言われてましたね。

 おんぶだって、ぼくがしてあげるんじゃなくて、背中に乗ってくるんですよ(笑)。

美誠 確かに確かに。人の背中とか肩車が好きでした(笑)。

 

●─中学の時、将来ミックスを組むなんて思ってないよね。

美誠 私はいつか組めたらすごくうれしいなと豊スポにいる時から思ってました。オリンピックというよりも、国内の全日本でもいいから組めたらいいなと。隼のおじいちゃん(鈴木暁二・故人)は練習場や試合会場にはいつも来てくれていて、「二人がミックス組んだらうれしいな」と言っていたんです。その言葉はよく覚えています。おじいちゃんに良くしてもらったので、二人がミックスを組むことになった時には、おじいちゃんの夢が叶って良かったと思いました。もちろん、組むだけじゃなくて天国のおじいちゃんに金メダルを見せたいなと思って、もっともっと頑張ろうと。

 

●─良い話してるよ、隼。

 そうですね(しんみり)……珍しい。

美誠 ええー!(笑)

 

●─二人がダブルスを最初に組んだのはいつだろう?

 去年(2019年)の韓国オープン(7月)ですね。

美誠 私はずっと左(サウスポー)と組んでいたので、男子監督の倉嶋(洋介)さんから「世界ランキングの高い左のオリンピック候補と組んだらどう?」と言われて、世界選手権が終わった後に丹羽(孝希)さんと組んで、2、3大会出ましたが、隼と組むイメージは全くなかったです。組めたら楽しいなと思ったけど、組みたいという雰囲気が(隼には)全くなかったから(笑)。その後、倉嶋さんから「隼と試そうか?」とお話をいただいて、私は組みたかったので、試してみることになりました。

 

●─なぜ隼と組むイメージがなかったのかな?

美誠 なんか隼がダブルスに出るイメージがなかったんですよ。特にミックスを組むというイメージが私の中には全くなかったんです。それに選考レースの真っ只中ですから。ただ、ミックスもオリンピックのシード争いに関係してくるし、実際に試したら、隼とのダブルスがいい、と思いました。練習してないのに、こんなにできるんだと。

 ぼくはミックスダブルスはいけると思っていた。美誠のミックスもそれまで見ていて、女子の中で美誠は圧倒的に強いので、ぼくが組めば上に行けるなと思っていました。韓国オープンでは1試合目でいきなりチャイニーズタイペイの林昀儒と鄭怡静のペアに勝った。

美誠 試合をやりながらもやりやすく感じたし、準決勝まで行って、許昕(と劉詩雯)のペアにも良い勝負ができました。

 

●─最初に組んだ時の力から比べると、今の二人のペアの力はどのくらい上がっているんだろう。

美誠 お互いに組み立てがうまくなっていますね。このサービスを出したらレシーブがこう来るから、こう攻めるとか、戦術の幅が広くなってきています。自分たちの展開じゃないと思っても、どこかで相手を崩してから自分たちのラリーに持っていくとか、流れをつかむのがうまくなってきました。

 最初は美誠がサービスを出した後の待ち方がすごく難しかったし、美誠のレシーブの後の待ち方もわからなかった。これは経験を積むしかなくて、最近は試合もたくさんしてきて、美誠がこのサービスを出した後、ここに返ってくる確率がこのくらいだというのがわかってきた。勝負どころではその確率で勝負を仕掛けるようにしています。

 

●─美誠ちゃんのような卓球スタイルというのは組みやすいのかな。女子では考えられないほどの技の種類を持っているけど。

 やりやすいとかあまり気にしたことがなくて、サービス、レシーブがすごく上手というのがいいですね。そこで先手を取れるのがいい。

 

「これだけ相手が見えて、コースを

逆に突いたりするのは……

頭が良いからできる」〈美誠〉

「相手の想像の範疇の外にある。

どうせ美誠のことを考えても、

その想像の外にいるんですよ」〈隼〉

 

●─卓球界の中でも二人は個性の強い選手だと思うけど。

美誠 個性は強いですよね。その中でもお互いに尊敬し合って、尊重し合えるので、「自分だけが」というのではなく、自分が強くなることで、お互いが強くなれる。二人は個々が強いけれども、しっかり話し合えるんです。試合中にチャッと短く話して終わる。中国選手は試合中に長く話をして、審判に注意されたりするけど、私たちのペアはほとんど注意されたことがないですね。試合中に「どうする?」となっても、すぐにわかり合えるんです。

 

●─でも、ほとんど美誠ちゃんがしゃべってるでしょ?(笑)

美誠 いや、隼もしゃべるようになって、自分の意見を言えるようになりました(笑)。それはうれしいです。

 

●─まるで美誠ちゃんが先輩のようだ(笑)。後輩の水谷君はどうですか。

 そうっすね。結構気を遣うことが多くて、ダブルスでは消極的になることが多いですね、ぼくは。でも、消極的な時は点数が取れない。「ミスするかもしれないけど、思い切っていくね」という時のほうが良い形になります。

美誠 思い切ってやる気持ちがすごく大事ですね。シングルスも楽しんでいる時があるけど、私はミックスがめちゃくちゃ楽しい。隼も楽しそうにやっている時には「おおー!」と思います(笑)。自分もますます楽しくなる。ラリーが続くし、しかも大きなラリーで自分が台から下がってもプレーできるのがすごく楽しいんですよ。ミックスであれだけレベルの高い試合はないし、そこで自分たちが勝てる回数が増えてくるとますます楽しくなりますね。

 

●─美誠ちゃんは、2012年ロンドン五輪の時に美宇ちゃんと観戦してたよね。

美誠 はい、11歳の時、小学6年ですね。

 

●─そのロンドンで隼の試合を見てるよね?

美誠 見た気はしますけど、個人戦の準決勝とかを見た記憶はありますね。

 

●─その時、隼は早々とメイスに負けたんだけど……(笑)。

美誠 アハハ(笑・拍手)。テレビで見たのかな。

 

●─豊スポの先輩を気にしてなかった?(笑)

美誠 全然(笑)。いや、頑張ってるとは思ってましたけど、中国選手を見るのがすごく楽しかった。

 

●─そういうことらしいけど、隼。

 自分も試合をした記憶がないですね(笑)。試合に出てない。あっという間に終わりました。

美誠 やっぱりそうだ(笑)。

 

●─お互いの卓球を見て感じることは何だろう。

美誠 シングルスで試合をしている隼を見ることもありますけど、ダブルスを組んで改めて感じるのは、やっぱり卓球もすごいけど、頭がすごいと思います。相手が見えている。瞬時に考える力がすごい。クロスに打とうとしていて、相手がそれを読んだ瞬間にパッとストレートに打ったりとか。

 

●─それは美誠ちゃんもそうでしょ。

美誠 感覚的にはそうなんですけど、隼のほうが相手を見ることが多い。私はゾーンに入ったら見えるけど、これだけ相手が見えて、コースを逆に突いたりするのは……頭が良いからできるのかな。考えすぎると足が止まることが多いのに、瞬時に何でもできるし、穴がない。

 

●─頭の良い隼君に聞いてみましょう。相当褒められているけど。

 美誠の何を褒めようかな(笑)。引き出しの多さでしょうね。サービスにしてもレシーブにしても、いろんなことができますよね。それに新しい技が多くて、見たこともないようなサービスやレシーブとかで相手を翻弄しているし、それをどんな場面でも、0-0でも10-10でも自分を信じて同じようにできる。それが相手の想像の範疇の外にある。美誠のことを考えても、その想像の外にいるんですよ。わからないんですよ。普通は美誠はこうやってくるだろうと考えるんだけど、考えて予測しちゃうと違うことをやってくるから、ぼくが美誠と試合をするんだったら何も考えないでやります。

 

●─二人で試合をしたことはないの?

美誠 最近、ちょこっと練習はしたけど。

 サービスが取れないんです(笑)。同じボールの軌道で全く違うサービスが飛んでくる。

美誠 隼はサービスを出すとすぐにロビングしてきます。

 勝てないっすよ。

美誠 1ゲーム目とか取れてもだんだん慣れられてくる気がします。

 

●─わざとやる気なさそうにやるとか、リードされてゲームを投げたふりをして、そこからまくるとか。そういう試合を隼はしそうだ。

美誠 そうそう。絶対、私とは試合をしないと思う。

 オレに勝ったら相当すごいよ。表(ソフト使用者)には10年くらい負けたことがないから。

 

●─女子の世界ランキング1、2、3位くらいの選手は、男子の20位くらいの選手に勝ったりすると聞いたことがある。

美誠 男子選手と試合をするのがすごく好きなんです。最初に男子とやるとサービスがメッチャ効きます。そういう経験がミックスや中国選手と試合をした時に活きるんですよ。隼はパワーだけじゃなくて、相手が見えているし、うまい選手なので、どうやって戦ってくるか楽しみ。はは(笑)、やる前提だけど。楽しそう。でも、やってくれないだろうな。

 

●─二人でやってくれないかな。

 勝てないですもん。自信ないんですもん(笑)。

美誠 いろんな男子選手に申し込んでも、断られるんですよ。

 美誠との試合か……本当にいいの?  その自信とっちゃうよ(笑)。

 

●─どっちなの、さっきから(笑)。自信ないと言いながら、自信を見せたりとか。(試合をしても)隼は失うものはないし、ちょっとプライドが傷つくだけだから。

 勝ったほうが試合中にダブルスの指示していいとか。まあ、勝負しなければお互い対等だから(笑)。

美誠 最後は美誠に負けて引退して。引退試合、東京体育館で隼と美誠がやろう。男子の若い選手に負けるよりいいでしょ。

 そうだね(笑)。

 

悲願、悲願、日本の卓球史を替えた二人。中国ペアを破り、金メダル

 

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