卓球王国 2024年4月22日 発売
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トピックス

ドイツラバーは同じか否か。「組み合わせは無限」「ドイツ学校での天才的な成功者はいるのか」

 

卓球のラバーの原材料。天然ゴムと合成ゴム

 

卓球ラバーの一番最初の製造工程、ゴムの加硫

 

 

ドイツ学校にいる生徒はみな
ドイツ語を話す。しかし、
優秀な生徒と、そうでない生徒がいる。
優秀な生徒のラバーが
「優秀なドイツラバー」になる

 

卓球王国最新号8月号では世界最大のラバーサプライヤー「ESN」(ドイツ)を、創業者のゲオルグ・ニクラスのインタビューとともに紹介している。
ESNは世界の17ブランドにドイツラバーを供給し、社員270名を抱える卓球テクノロジー企業に成長している。ドイツラバーを売っている卓球メーカーでも、ESNを紹介するのを嫌がるメーカーもあれば、そうでないメーカーもある。
一時、「ドイツラバーはみな同じ」と言われることを恐れていたメーカーもあったり、さも「うちのラバーは自社で開発・製造しています」と装っていたメーカーもあったからだ。
しかし、ユーザーも馬鹿ではない。その打球感をテストしたり、カラーラバーが同じタイミングで発売されれば、おそらく同じ工場なんだろうと推測している。

ならば、「ドイツラバーはみんな同じ」なのか。

答えは「No」だ。
単純に卓球メーカーはESNが製造したものを振り分けられて仕入れているわけではない。どのメーカーに対しても、ESNはヒアリングをして、メーカーが望むもの、自分たちが提供できるテクノロジーを説明して、メーカーごとにレシピを変え、製造していく。
売れ筋の数種類のラバーに特化していくバタフライラバーと違い、ドイツラバーは自分の好みによって、メーカーを超えてユーザーが選べる強みもある。

 

ラバーの製造工程

 

ESNの創業者、ニクラスはこう言う。「ESNはラバー作りのテクノロジーを持っていて、3500種類のラバーを作ることができるし、計算上は100万種類のラバーを作ることもできる」
「ラバーには短く返す、止めるという役割と、強く打つ、相手の回転に負けない、遠くに飛ばすという役割があり、それを合わせたものが『ラバーのパフォーマンス』になる」

また2019年の卓球王国の取材で『ヴェガ』で世界的なヒットを飛ばしたXIOMのフィリップ・キム社長は絶妙な説明をしてくれた。
「ドイツにESNという学校がある。ドイツラバーのクラスルームに20人の生徒がいるが、一人ひとりが個性が違うし、同じ能力を持った生徒は一人もいない。共通しているのは皆ドイツ語を話すという点だけだ。この学校を卒業してビジネスで成功する人もいれば、成功できない人もいる。能力によって生徒たちの進路は違う。我々は天才的な成功者でありたい」

ESNは全く同じラバーを、違うメーカーには供給しない。とすれば、卓球メーカーごとにどのように異なるラバーが製造されるのだろう。「仲の良いメーカーには優先的に良いものを・・」「高いお金を提示したら良いラバーを・・・」「早いもの勝ち・・」。どれも違う。
ESNと卓球メーカーの間で、まず商品・開発ミーティングが行われる。そこでメーカー(ブランド)の市場でのターゲットラバー、ラバーへの思い、狙う価格帯などが話し合われる。その後、それに沿ったサンプルラバーが出てきて、メーカーは試打しながら「もっと食い込みが良いもの」「もっとスポンジ硬度を固くして・・」「弧線をもっと・・」というようなフィードバックをする。
この作業を数回繰り返して初めて最終サンプルが出来上がっていく。

これらの工程を同じようにやれば類似したラバーになると思うだろうが、実際にはそうはいかない。それは話し合いの深さと頻度の問題と、いかにしっかり試打をしてそれを生産するESNにフィードバックさせるかの熱意と知識の差が、メーカー間でくっきりと出てしまうのだ。
完成ラバーができてからは、メーカーの営業戦略、宣伝の差でヒットする、ヒットしないが変わってくる。だから同じドイツラバーであっても、あるメーカーのラバーは売れているのに、他メーカーのドイツラバーはあまり売れないという結果になってしまう。

これらのドイツラバーはすべて似ていると指摘されることに関して、最新号でESNのハンス・パーソンCEOはこう答えた。
「ラバーの組み合わせは無限です。カスタマー(卓球メーカー)が、コントロールの良いラバーを市場に出したいと言えば、それに合わせた試作品を作り、メーカーはテストを繰り返し、作り上げていく。もしくはこちらから新技術を提案し、カスタマーが興味を示して、それがブランドの戦略と合致すれば製品になります」
今やドイツラバーはひとくくりにできない。ブラインドテストをしても中級者レベルではバタフライのラバーとの判別できないレベルになっている。

卓球王国最新号での、今までタブー視されていたドイツのESNの紹介。世界最強の卓球テクノロジー企業が初めてベールを脱いだ。

 

 

バタフライの哲学とESNの方向性を特集した別冊卓球グッズ

https://world-tt.com/blog/news/product/bz120

↑別冊卓球グッズ2023

 

卓球グッズ2023で特集した「バタフライvs.ドイツ」日独ラバー物語

 

https://world-tt.com/blog/news/product/az316

↑最新号

 

最新号でのESNの特集

 

 

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