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今野の眼

本物のプロリーグへ。大勢のファンに「Tリーグを感じてほしい」

Tリーグが9月10日に開幕した。

男子(木下マイスター東京対T.T彩たま) 1103人

女子(日本生命レッドエルフ対木下アビエル神奈川) 2333人

女子(京都カグヤライズ対九州アスティーダ) 443人

男子(琉球アスティーダ対岡山リベッツ) 867

これはTリーグ開幕戦(10・11日)での大田区総合体育館での観客数だ。同じ会場で、10日の男子は午後2時スタート、女子は午後6時スタート。男子の木下マイスター東京から世界ランキング5位のウーゴ・カルデラノが参戦。人気が高まっている篠塚大登や、前全日本チャンピオンの及川瑞基もいるし、T.T彩たまには人気者の松平健太もいる。

男子の開幕戦は少しばかり空席が目立ったが、試合内容は3-2というスコア、白熱した盛り上がりと緊張感があった。やはり男子の卓球はダイナミックで面白い。カルデラノも英田理志に苦杯を喫し、Tリーグのレベルの高さをも示す結果になった。

そのあとに行われた女子の開幕戦。日本生命レッドエルフにはTリーグ初参戦の伊藤美誠、人気急上昇の早田ひな、対する木下アビエル神奈川にはやはりアイドル的人気の平野美宇に、好感度No1の石川佳純がいる。特にこのうち3人は東京五輪の団体メダリストで、今や卓球ファンのみならず知らない人はいない人気選手だ。

開幕戦のチケットは、アリーナ席は男女で入れ替え制になり、2階席は男女で通しのチケット(両方観戦可)。開幕戦で、女子の試合で卓球をやっていない人がどれほどいたかはわからないが、卓球を知らない人でも、テレビで見ているスター選手をひと目見ようと会場に足を運んだのだろうし、家族連れも多かった。

卓球発祥のヨーロッパでは、選手たちや関係者が日本に来ると目を丸くして驚くことがある。テレビをつければ女子の卓球選手がCMに出ているし、スポーツニュースを見ても女子選手はたびたび登場する。男子の張本智和は認知度抜群だが、女子の上記の4選手の露出は極めて高く、今の卓球人気を支えている。

欧米では卓球に限らずプロスポーツでは男子が中心。世界トップリーグの卓球ブンデスリーガでも男子の1部ではまだ観客も入るが、女子の1部リーグでは地元のファンが応援するが観客はまばらで、大きな会場で試合をすることもない。女子選手の収入も少なく、卓球だけで生活している女子選手は多くない。

ヨーロッパでは卓球というスポーツのダイナミックさを見ようと男子の試合には人が集まる。ブンデスリーガのプレーオフ決勝とも慣れば、3千人以上の観客も集まる。身体を躍動するその迫力だけを見れば、やはり男子卓球のほうが女子卓球よりも面白い、と感じる卓球ファンは多いだろう。

しかし、女子の卓球には選手の可愛いさ、ルックスなどが加味され、スター性と認知度によって人気が分厚いものになっている。中国を見ても、同じような傾向があり、丁寧(元五輪金メダリスト)のようにボーイッシュなカッコよさと人なつこい笑顔と裏腹な男子並みのプレーに、数百人規模の親衛隊(女性のみ)が国内の大会に集結する。また海を超えたビッグゲームに足を運んだりするファンも少なくなかった。

コアな卓球ファンになればなるほど、女子のスター選手を見てみたいという気持ちと、男子のパワープレーを見たいという憧れの気持ちが交錯するのだが、卓球ファン以外の一般の人たちは華やかな女子選手に興味を持つのは自然なことだ。

2000人を越す観客を集めた日本生命レッドエルフ対木下アビエル神奈川

 

選手紹介で紹介されるリーグ初参戦の伊藤美誠

 

おどけたポーズで入場する早田ひな

 

2005年、テレビ東京が卓球の世界選手権を初めて地上波で放映した。当時は福原愛という絶対的なスター選手がいた。コアな卓球ファンからすれば、「なぜ女子の試合だけ放映して、男子の試合を放映しないんだ」と多くの不満がテレビ局や協会に向けられた。しかし、「数字を取れるのは女子の試合」とした明確なテレビ側の方針は揺るがなかった。その後、日本男子も世界で活躍。水谷隼が東京五輪混合ダブルスで金メダルを獲り、張本のような天才も出現し、テレビで取り上げてくれるようになったが、まだ女子のスター軍団には及ばない。

もちろん、Tリーグの女子の試合には常にたくさんの観客が集まるとも言えない。毎年発表する観客数ではやはり女子の試合よりも男子のほうが多い。今回も、京都カグヤライズ対九州アスティーダの443人という観客の数は開幕戦にしては寂しい(両チームのホームとは言えない東京での開催という面もあるだろう)。

卓球観戦の時に男子、女子ということではなく「スター選手を見てみたい」ということで会場を足を運んでいる人もいるだろう。幸いにも日本卓球界にはスター選手がそろっている。しかし、常にスター選手に依存するTリーグではなく、卓球そのもののゲームの醍醐味、リーグそのものの面白さ、観客サービスを多くのファンに味わってもらい、着実にファンを増やしてほしいと思う。

時間はかかるかもしれないが、親会社やビッグスポンサーのもとでのチーム運営だけでなく、いつか近い将来、観戦チケットの収益がチームを支えるようになってほしいと願うばかりだ。

卓球を見たことのない人が会場に足を運ぶきっかけは「女子のスター選手観戦」でもいい。それがきっかけでTリーグや卓球を見た人が、次は男子の迫力あるプレーにも触れることになるだろう。

Tリーグは面白い、熱い。頑張れTリーグ、頑張れ卓球、みんなで「Tリーグを感じて」盛り上げよう。

 

開幕戦、日本生命レッドエルフ対木下アビエルの試合前、外には入場を待つ大勢の人がいた

 

 

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