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インタビュー

【People 森谷行利】岡山を愛し、卓球を愛する「院長先生」の飽くなき探究心

岡山市北区にある森谷外科医院。堂々たる外観に圧倒されながらその門を潜り、少々緊張しながら静謐な廊下を抜けていく。そして、とある建物の扉を開けると目に飛び込んでくるのは、真紅のフロアマットとブルーの卓球台。壁には有名選手のサインがズラリ。

 まるで秘密基地のような魅惑の卓球空間を、自らの病院の一角に作り出した人物こそ、この医院の「院長先生」森谷行利である。戦型は右ペンホルダードライブ型。表(おもて)面から放つ豪快なバックドライブに、男のロマンと飽くなき探究心を捧げる。

 

ペンホルダーの表(おもて)面から豪快なバックドライブを操る森谷行利

−病院の中にこんな卓球場があるなんて驚きです。卓球をやりたい時には、いつでも打てる環境ですね。

森谷行利(以下・森谷):卓球は空いている時間に、すぐそばで体を動かせますからね。外科医というのは仕事柄、緊急時の対応を考えるとあまり遠くに出かけるわけにはいかない。いざという時に連絡がつかないと大変ですから。それを考えると選べるスポーツも限られてくるし、卓球はベストのチョイスじゃないかと思いますね。

−森谷さんが卓球を始められたのは何歳からですか?

森谷:関西医科大学で卓球部に入部した18歳からです。高校時代に京都府ベスト8だった選手がチームメイトにいたこともあり、チームは西日本医歯薬学生大会で3冠を取りました。

 卒業後はライオンズクラブの大会や医局対抗戦などでたまにラケットを握るくらいで、本格的に再開したのは54歳の時です。外科医はまず健康でなければならないし、体力も必要。普段からフィットネスやスポーツクラブには行っていましたが、やはり好きなことでないと長くは続けられない。生涯スポーツとして卓球を選び、のめり込んでいったわけです。

関西医科大学では西日本医歯薬学生大会で団体優勝を果たした(後列左が森谷)

−森谷さんにとって、卓球というスポーツに感じる魅力とは何でしょう?

森谷:本当にすべてのことを忘れて集中できる、没頭できるという点ですね。それから、限られたスペースでプレーするスポーツなので、優れたスポーツの才能がなくてもある程度上達できるし、身体能力の差が出にくいというのはありますね。

 それに卓球は、負けた試合でも自分の技術レベルが上がったことを感じられるでしょう。もちろん負けると悔しいんですけど、「この技術ができるようになったな」「自然にこの技術が出せたな」というところに喜びを見出だせるんです。スポーツでは勝利の喜びが大きいですが、上達の過程でも喜びを感じられないと、なかなか続けられないですよ。

−この卓球場は、地元の卓球愛好家にも開放されていると聞きました。そんな病院は聞いたことがないですね

森谷:ぜひアピールしてください(笑)。やはり、地域の方に楽しんでもらいたいという気持ちはありますね。岡山は卓球人口が多く、親御さんがお子さんを連れて来て打ち合うことも多いです。

−壁に飾られたサインもすごいですね。この卓球場にはいろいろな卓球人が来ると聞いています。

森谷:たくさん来ていますね。岡山リベッツに在籍している時、吉田雅己選手や町飛鳥選手が来てくれたし、李尚洙選手(韓国)とかグナナセカラン選手(インド)も来ましたよ。彼らともお手合わせしてもらいました。

 地元の選手では、パラリンピアンの岡紀彦さんもパラリンピックの前にはずいぶん練習に来られていました。テレビの撮影をしたこともあります。岡さんは卓球場を使う時のマナーも素晴らしく、時間厳守で、帰り際には黒板に「使用させていただいてありがとうございました」と書いて帰られる。あれこそ真のプロの姿だなと敬服しました。

2022年12月の取材後、2023年1月に新しい卓球場が完成。広くて天井が高く、快適な卓球空間だ(写真提供:森谷行利)

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