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Tリーグ

ついに本日開幕! Tリーグが新しい歴史を作る

30年前のどん底から卓球は復活した】

 今日の夜7時に東京の両国国技館で、卓球の新リーグ「Tリーグ」の男子(木下マイスター東京対T.T彩たま)が開幕する。明日も同時刻に女子(日本生命レッドエルフ対TOP名古屋)が開幕する。

 愛ちゃんこと、福原愛選手の現役引退のニュースを含め、この3日間で卓球に関する情報はとんでもなく多く配信されている。

 そして、いよいよTリーグが始まる。会場はほぼ満員になると予想されており、卓球ファンや一般の方の興味の高さをうかがい知ることができる。

 思えば、30年以上前の1980年代前半にテレビタレントの「卓球ネクラ」発言で大きなダメージを受けた卓球界。「中学での部活は卓球です」と自分のスポーツ歴を堂々と言えない卓球愛好者は多くいた。

 その後、愛ちゃんの活躍もあり、徐々にイメージ回復を遂げ、2012年ロンドン五輪では卓球として五輪初のメダルを獲得。福原愛・平野早矢香・石川佳純の戦いが感動的なシーンを生み、3人は「時の人」となった。

 その後、2016年リオ五輪では女子団体の銅メダルはもちろん、男子団体の銀メダル、水谷隼の男子シングルス銅メダルで、テレビの前の一般の人たちを卓球というスポーツはわしづかみにした。

 「昔の卓球のイメージはね・・・」と言い出す人は間違いなく45歳以上の人で、今の若い人にそんな昔話をしてもピンとこないだろう。今や卓球は世界選手権でもメダルを数多く獲得し、東京五輪でもメダル候補。次々に若く有望な選手が出現し、明るい未来を予感させるスポーツになった。

五輪メダリストが開幕戦で登場する


Tリーグは松下浩二チェアマンでなければ開幕できなかっただろう


 

【日本の卓球界には順風が吹くものの、Tリーグは逆風に向かっていった】

 世界で活躍し、才能ある選手を抱える日本の卓球界にはまさに順風が吹いているのだが、実はTリーグには逆風が吹いていた。日本の卓球が強ければ強いほど、そのリーグ結成の過程で「別に今、大変な思いをして新リーグを作らなくても……」という声が卓球界の中にもあった。「今変えなくては日本はダメだ」という決意を持ったサッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグとは180度違う状況だった。

 そういう中で、様々なしがらみや固定観念と戦い続けていたのが松下浩二チェアマンだった。開幕までの過程で松下自身やTリーグの対応を批判する人が多くいたのも事実。松下自身も反省しているが、反省してくよくよするよりも前に進むしかなかった。

 あまりに準備期間が短すぎて、スポンサー獲得やテレビ放映の放送枠の確保も困難を極めた。松下自身が投げ出したくなったことも一度や二度ではない。その度に、彼は「この事業は今やるしかない。卓球界のためだ。自分がやらなきゃ誰がやるんだ」と自分に言い聞かせた。

 実際に、危機感を持っていなかった卓球人の誰が松下の代わりにこの事業をやれたのだろう。松下の代わりなど誰もいない。あるチームの代表者は「松下がなぜひとり苦しむのか。何もやらない人間がTリーグを批判するな」と語気を強めて話をしたこともある。

 そんな紆余曲折の過程を経て、Tリーグが今日、開幕する。世界のトップランカーが集い、このリーグは世界に誇れる「世界最高峰のリーグ」になる。

 日本の卓球を変える。世界の卓球を変える歴史的な開幕の号砲が鳴るのは今日の夜7時である。 (今野)


世界9位の黄鎮廷はT.T彩たまから出場し、水谷か張本と対戦

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