昨日の男子開幕戦よりも公式入場者数は少し減ったものの、それでも4572人の観客が入った女子開幕戦。男子開幕の翌日で、「宴のあと」にならないかと一抹の不安がよぎったが、それは杞憂に終わった。特に3番の平野美宇対徐孝元の一戦は、大逆転に次ぐ大逆転で、ニッセイ応援団とTOP名古屋応援団も大興奮。最近の国内の試合で、ここまで盛り上がったのは記憶にないくらいだ。
試合後、平野は「いろんな方が応援してくださってすごく力になったので、感謝の気持ちでいっぱいです。いろんなリーグに出たことがあるんですけど、今回が演出が一番すごかったのでビックリして、思ったより緊張しました。でも今日はその緊張を力に変えられました」とコメントした。「普段の日本の大会や海外の大会とはまた違った雰囲気があって、演出とか応援の感じが本当にプロリーグなんだな、新しい挑戦なんだなと思いました」(平野)。4番で勝利したルーマニアのサマラも、「これほど多くの観客が来て、そして観戦してくれた。本当に興奮したし、ハッピーでした。アジアでプレーするのは好きですね」と語っていた。
こうしてみると、Tリーグが団体戦という形を取ったことは、観客の熱量という点では大きい。シングルスのトーナメント戦だったら、これほどの盛り上がりがあっただろうか。ボールの回転の変化や戦術転換、用具の違いがわからなくても、観客は皆「おらがチーム」の選手のために、心おきなく声援を送ることができるのだ。
そしてその声援は、日本選手でも海外選手でも関係ない。徐孝元に送られた声援は盛大なものだった。世のオジさんたちは韓国の女子プロゴルファーにご執心だが、何本もカットでしのいでからフォアストレートへ華麗な反撃を決める徐孝元は、そのルックスも相まって十分なスター性を備えている。これから彼女の「親衛隊」が登場しても不思議ではない。
コアな卓球ファンは男子の迫力あるプレーに惹かれるが、卓球を全く知らない人から見れば、女子選手のプレーでも十分に感動するし、観て楽しめる。あとはどれだけ、卓球を知らない人に足を運んでもらうことができるか。これは男女を問わず言えることだが、日本のトップリーグとして多くの観客を惹きつけていくには、プレー以外の「付加価値」にも知恵を絞ってほしい。プレーで唸らせるのはもちろん、プレー以外の部分でも卓球を知らない人たちにアピールしていけるかどうか。
昨年の世界ジュニアを取材した際、一般の観客などほとんどいないコートで、勝利の後の「決めポーズ」を見せるモアガルド(スウェーデン)を見て感じたことがふたつある。「なかなかのナルシストだな」ということと、「この子はすでにプロ選手なんだな」ということ。対戦相手への敬意を失わなければ、勝利のパフォーマンスもいろいろ考えられるし、会見や囲み取材、そしてSNSで言葉力を駆使すれば、メディアもどんどん巻き込んでいける。卓球というスポーツと卓球選手に対して、改めて多くの可能性を感じさせてくれたTリーグの開幕戦だった。
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