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Tリーグ

Tリーグ開幕戦、張本智和の心身の充実。20代の鮮烈なスタートダッシュ

7月29日に東京・アリーナ立川立飛で行われたTリーグ2023−2024シーズンの男子開幕戦。昨季王者の琉球アスティーダの絶対的エースとして、2番シングルスと5番ビクトリーマッチで勝利。琉球のひとつの「悲願」だった、初の開幕戦での勝利へとチームを導いた張本智和。

先週末、パリ五輪に向けた5回目の国内選考会となった、『2023 全農カップ 東京大会』で優勝。その後は少し休養を取り、本人曰く開幕戦での状態は「あまり良くなかった」という。
しかし、2番シングルスでは、3月に行われた昨季のTリーグプレーオフファイナルで完敗を喫した篠塚大登(愛知工業大)にストレート勝ち。ビクトリーマッチ(1ゲームマッチ)でも及川瑞基に対し、序盤は4−4まで競り合いながら、中盤で一気に突き放して11−5で快勝した。琉球の張一博監督も「昨シーズンよりさらにプレーが良くなっている。プロだから調整がものすごくうまいし、見ていても一番安定している」と全幅の信頼を寄せる。

開幕戦のビクトリーマッチで勝利し、琉球のスタッフと笑顔でハイタッチを交わす張本

全農カップでは5回の選考会のうち、3度目の優勝を果たした張本。2位の戸上隼輔(明治大)以下を大きく突き放し、独走状態。「パリ五輪は出場する、しないの問題ではなく、前回の選考会が終わってから確実にメダルを獲ることだけを意識している」と、自らの中ですでに選考レースは「修了」。メダル獲得という目標に向け、ギアを切り替えたことを明かした。

開幕戦で対戦した木下マイスター東京のエース、世界ランキング9位の林昀儒(チャイニーズタイペイ)は2020東京五輪のシングルス4位で、パリ五輪でも中国に次ぐライバルとなる選手。張本も「ビッグゲームでは林昀儒選手とメダル決定になる可能性が高い。プレーを見ていろいろ吸収していきたい」と語る。
今季からチームには、15年世界選手権男子ダブルス2位の大物「助っ人」、周雨(中国)が加入。周雨は開幕戦で林昀儒に敗れたものの、張本に対してベンチで戦術のアドバイスを送り、林昀儒戦では巧みな戦術で速攻に対抗。張本にとっても大いに参考になるプレーを見せた。

「2番の篠塚戦では周雨選手からもたくさんアドバイスをもらった。アドバイスも自分にとって全部プラスになるとは限らないし、自分でしっかり処理していく必要がありますけど、今日はすごく良いアドバイスをもらいました。コーチからのアドバイスだけでなく、選手からの選手目線のアドバイスというのはすごく助かります」(張本)

林昀儒戦で巧みな戦術を見せ、張本にもアドバイスを送った周雨。元中国代表の加入はチームにも、張本にとっても大きい

プレーの部分でも、心身の充実がうかがえた。開幕戦で心がけたのは、攻撃で勝ち切るプレーではなく、「緻密でミスのないプレー」。国内の試合においては、最大のライバルである戸上以外には「あまりリスクを犯す必要はない」と語った。勝利後のパフォーマンスもクールなものだった。
「堅実に手堅くプレーできれば、たとえスコアは3−2になっても勝てると思っている。対戦相手が変われば戦術も変えていけばいいし、Tリーグではこのような(ローリスクな)プレーでも良いと思います」(張本)。

かつては大振りなフォアドライブでの強攻にミスが出たり、逆にフォアサイドを突かれてから連打されると防戦一方のプレーになったり、攻守のバランスを崩すことが少なくなかった張本。しかし、先週末の選考会や開幕戦でのプレーを見ると、攻守の切り替えが非常にスムーズになっている。天下一品のバックハンドに、打球点を落とさないコンパクトなスイングのフォアドライブがうまく組み込まれ、さながら対戦相手の前に立ちはだかる両ハンドの分厚い壁。これまでにない迫力と貫禄を感じる。

ラリー戦での途切れない集中力で、篠塚と及川という難敵を退けた

開幕戦では試合途中の3番シングルスから、隣接する昭和記念公園での花火大会がスタート。大玉が打ち上げられると、会場を震わせるような大音響が響いたが、張本曰く「最初はゲリラ豪雨かなと思った。コートに立っている時はあまり気にならなかったです」と余裕のコメント。「ぼくも花火のように登っていけるように(笑)」とメディア向けに名言を残すことも忘れなかった。

6月に20歳の誕生日を迎えた張本。心身ともに充実、10代での多くの苦難を乗り越え、鮮やかな20代のスタートダッシュを見せた。ちなみに8月発売の卓球王国10月号では、張本智和&美和の「兄妹インタビュー」を掲載します。素顔のふたりのインタビュー、ご期待ください!

試合後、ファンにサインをする張本。短い時間の中でも精一杯のファンサービス

琉球の張一博監督も、会見で張本に賛辞を送った

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