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Tリーグ

上位・下位の明暗くっきり。今季も2強による首位争い〈前半戦総括・女子編〉

 11月17日に開幕したTリーグ 2020-2021シーズンは男女ともに年内すべての試合が終了。レギュラーシーズンの半分ほどを消化したが、順位を踏まえて前半戦を振り返っていく。男子編に続き、女子編。

 

【女子順位(12月25日終了時点)】

1位:木下アビエル神奈川(勝ち点32/10勝2敗)

2位:日本生命レッドエルフ(勝ち点28/9勝3敗)

3位:日本ペイントマレッツ(勝ち点9/3勝6敗)

4位:トップおとめピンポンズ名古屋(勝ち点3/0勝11敗)

 

上位と下位の差は核となる日本選手の存在とダブルスか?

 女子は男子以上に上位と下位で大きく差が開いてしまった。前半戦を終えての1位は木下アビエル神奈川。それを3連覇を狙う女王・日本生命レッドエルフが勝ち点4差で追っている。1st、2ndシーズン同様、この2チームが優勝を争う形だが、木下アビエル、日本生命に共通しているのは、核となる日本選手が複数いること、そしてダブルスの強さ。日本ペイントマレッツ、トップおとめピンポンズ名古屋との差はそこにあるように感じる。

 石川佳純の女子ワールドカップ、ITTFファイナル出場により、エース不在で開幕を迎えた木下アビエルだったが、もうひとりの「カスミ」が快刀乱麻の活躍。今シーズンよりチームに加わった木村香純が日本生命との開幕戦で早田ひなを下す衝撃のデビュー。続く日本ペイント戦ではシャン・シャオナ、さらに第3戦の日本生命との試合ではユ・モンユと世界トップ相手に3連勝を果たした。石川が参戦して以降、出番は少なくなったが12月14日のTOP名古屋戦ではサマラから勝利。関東学生選手権の優勝後に話を聞いても、Tリーグで勝利を重ねる中で自信を深めている様子が感じられた。

「きむかす」こと木村香純。開幕から大きなインパクトを与えた

 

 開幕4戦目のTOP名古屋戦が今シーズン初出場となった石川は8試合に出場し、7勝1敗。さすがのプレーでチームを牽引している。そして劉燕軍監督が「次期エースとして鍛えたい」と語る木原美悠が9勝4敗と好成績。早田ひな、加藤美優、馮天薇らから勝利をあげており、木原本人も「試合が続きますが、実力を試す機会が増えると思ってプラスにとらえています」と成長を実感しながら勝利を重ねている。

遅れて合流となった石川だが、参戦以降は白星を量産

 

 また、ダブルス起用の多い長﨑美柚は浜本由惟とのペアで6勝0敗、木原とのペアで2勝0敗と大きな得点源となっており、シングルスでも5勝の活躍。女子では唯一、今季ここまで海外選手抜きで戦っている木下アビエルだが、石川、浜本、長﨑、木原というすでに実績のある選手に、木村というニューカマーが加わり、盤石の戦いぶりを見せている。

木原は早田に次ぐ9勝をあげている

 

最多勝を突っ走る早田とダブルスの活躍が光る日本生命

 日本生命は平野美宇の腰痛による欠場が続き、ヨーロッパチャンピオンズリーグ参戦により、昨シーズンのMVP&最多勝の森さくらを欠いた時期があった中で2位。赤江夏星、麻生麗名という若手も起用しながら、この成績で前半戦を終えられたのは村上恭和総監督からすれば及第点といったところだろう。

 ここまでの日本生命はエースの早田、前田美優と赤江のダブルスを軸としながら、ユ・モンユと陳思羽の2人が脇を固める布陣で戦っている。早田は木下アビエルとの開幕戦でいきなり2失点を喫したが、以降は12月15日のTOP名古屋戦でハン・インに敗れたのみで14勝3敗という堂々たる成績で個人成績1位。12月23日の試合ではハン・インにもビクトリーマッチ(VM)でリベンジしており、村上総監督もエースとしての働きを讃える。

 「早田は戦術をすごく研究している。相手が決まれば映像を見てすぐに対策を立てるし、そういう部分が成績に現れている。開幕戦で2敗したにも関わらず、切り替えて勝ち続けるのは素晴らしい」(村上総監督)

 

エースとして申し分ない働きの早田。VMでも4勝

 

 また、昨シーズン終盤から起用される前田/赤江も練習量を感じさせるプレーで勝利を積み重ねている。ここまで全試合に起用され、8勝4敗の成績はペアとしてリーグトップ。日本生命は昨シーズン、ややダブルスで苦しんだだけに、ダブルスが勝敗を大きく左右すると語る村上総監督としても前田/赤江ペアの成長はうれしい限りだろう。

前田(手前)と赤江(奥)はペアとしてリーグ最多の8勝

 

 ヨーロッパチャンピオンズリーグから帰国した森も年内最後の試合となった木下アビエル戦でストレートで石川から初勝利。平野が戦列に復帰すれば、ラインナップはさらに強力になる。木下アビエルと日本生命はここまで4度対戦し、2勝2敗。下位2チームから取りこぼしなく勝利を積み重ね、直接対決では1マッチでも多く取ることが重要。後半戦も熾烈な首位争いが繰り広げられそうだ。

森がチームに戻り、後半戦はさらに盤石の体勢に

 

加藤の合流で希望が見える日本ペイント。TOP名古屋は屈辱の前半戦全敗

 昨シーズンまでと同様、2強に大きく水をあけられているのが日本ペイントとTOP名古屋。ともに海外選手中心の布陣で挑むも、なかなか勝利に届かない。両チームの直接対決が前半戦で2回のみだったこともあるが、勝ち点で上位2チームに3倍以上差をつけられてしまった。

 日本ペイントはTOP名古屋から2勝、日本生命から1勝で計3勝。昨シーズン前期MVPに輝いたSu.サウェータブットが開幕戦から出場するも、動きにキレがなく1勝5敗。新戦力のシャン・シャオナは開幕から数試合に出場したが、ヨーロッパチャンピオンズリーグに出場のため一時離脱してしまった。女子ワールドカップ、ITTFファイナルを終えて合流した馮天薇もシングルス1勝4敗とまだまだ調整不足が否めない。15歳の小塩遥菜も0勝6敗と前半戦は苦しんだ。

 そんな中、今季加入した永尾尭子がダブルスで4勝、シングルスでも2勝と健闘。また、ITTFファイナルを経て合流したエースの加藤が4勝1敗の好成績を残しており、後半戦ではフル回転が期待される。

加藤は前半戦の中盤を過ぎてからの参戦となったが、4勝と実力を見せた

 

 そして深刻なのがTOP名古屋。開幕から勝ち星なしの11連敗で前半戦を終えた。2位の日本生命とは3度VMまでもつれているが、そのすべてで早田に勝利を阻まれた。6勝をあげているハン・インにサマラ、リン・イエが揃い、ここまで勝ち星がないのが不思議なのだが、そこが団体戦の難しさか、うまくかみ合わない状態が続いている。

 ダブルスも白星が伸び悩み、複数のペアを起用しているが解決には至らず。日本選手のシングルス勝利がここまで鈴木李茄の1勝というのも寂しいところ。鄭怡静、梁夏銀も新型コロナウイルスの影響で前半戦は来日せず、海外のビッグネームを揃えた編成は豪華な半面、新型コロナ禍で不安定な側面を露呈してしまった。前半戦は全敗に終わったが、中断期間で一度リセットし、後半戦ではとにかく早く1勝をあげて、これまでの流れを断ち切りたいところだ。

6勝と奮闘するハン・インだが、チームの勝利には届かず

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