●女子シングルス準々決勝
伊藤美誠(日本)-6、8、6、8、9 王芸迪(中国)
ドライブ全盛の今、世界を見渡してもで伊藤しかできないフォアスマッシュでの得点力
女子シングルス準々決勝で伊藤が王芸迪を下し、自身初となる世界選手権でのシングルスのメダルを確定させた。勝利後のインタビューの伊藤の涙は、金、銀、銅メダルを獲得した東京五輪後から続いていたスランプを乗り越え、“大魔神”が再び降臨した矜持によるものか。心技体智の全てをぶつけて7連敗中の王芸迪に挑み、その分厚い壁を打ち砕いた。完全復活した伊藤が日本勢でシングルスメダル一番乗りを決めた。
第1ゲーム、これまでと同様に王芸迪は伊藤のバック深くにロングサービスを集めて、表ソフトでのレシーブを回転量の多い両ハンドドライブで攻める。伊藤はこの戦術に対応できずに6‐11で落とす。
第2ゲームも王芸迪は戦術を変えずに徹底して伊藤のバックにロングサービスを出して3球目を両ハンドドライブで伊藤のバック側に攻めていったが、伊藤はその攻撃をバックハンドで狙い打てるようになる。3‐3から6‐3と伊藤がリードを広げたが、強気で攻める伊藤にミスが続いて7‐7と追いつかれる。しかし、伊藤は攻撃の手を緩めず、9‐7にすると、次のバックへのサービスに対してこの試合で初めてチキータでレシーブして王芸迪はそれをミス。10‐7から1本取られたが11‐8でこのゲームを奪う。
第3ゲームは出だしてバックハンドレシーブから回り込んでフォアスマッシュで得点すると、ツッツキやストップ、速いバックハンドと手前に落とすブロックなど多彩な技で王芸迪を翻弄。伊藤がゲームを支配して11‐6で取る。
第4ゲームも伊藤のプレーが冴えわたる。王芸迪は戦術を変えることができないだけではなく、地に足がついていないのか伊藤の変化プレーにミスを連発。7‐0で伊藤がリードし、8‐4になったところで伊藤ベンチがタイムアウト。このタイムアウトが功を奏し、11‐6で伊藤が取る。完全に伊藤ペースが試合が進んでいる。
王芸迪は2年前の早田ひな戦に続いて、2大会続けて準々決勝で日本選手に敗れた
第5ゲームも伊藤は表ソフトを有効に使ってツッツキとストップで王芸迪を前後に揺さぶる。3‐1と伊藤がリードしたところで中国ベンチがタイムアウト。ベンチの馬琳監督の表情に生気が失われてきているように見えたのは気のせいか。5‐2で伊藤リードから5‐5、7‐7、8‐8、9‐9と王芸迪が食い下がったが、9‐9から伊藤は短い横回転系のサービスを出して3球目をフォアスマッシュで得点してマッチポイントを握ると、次のプレーも同じように横回転系サービスから3球目フォアスマッシュで王芸迪のフォア側をノータッチで決めて、ゲームセット。9オールから伊藤の代名詞であるフォアスマッシュでの2連続得点からは、かつての輝きを取り戻した伊藤の渾身のプレーだった。
ベンチで涙を見せる伊藤と母の美乃りさん
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