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世界卓球2025

伊藤美誠、準決勝で敗退。孫穎莎の徹底したロングサービス攻めを最後まで攻略できず。しかし、堂々の銅メダル!

●女子シングルス準決勝
伊藤美誠 -7、-5、-9、-4 孫穎莎(中国)

昨日、王芸迪を破った勢いで絶対女王・孫穎莎にぶつかっていった伊藤美誠だったが、やはり孫の強さは揺るがなかった。

1ゲーム目、出足から幸先よく2-0とリードした伊藤だったが、その後4本を連取され逆転を許す。中盤では回り込みレシーブからのフォアハンド強打などで6-5と再逆転した伊藤だったが、孫穎莎は強力なバックハンドドライブを軸にまたも逆転。7-9となったところでは、バックサイドに上がったチャンスボールを伊藤が回り込んでスマッシュを打ちにいったがヒットせず。最後はフォアハンドの台上強打がミスとなって、7-11で伊藤はこのゲームを落とした。

第2ゲームは孫穎莎が前半、伊藤のミドルを狙ったコース取りで機先を制し、バックハンドのドライブ強打などで伊藤を追い詰める。伊藤は2-2から3-7と離され、その差を最後まで詰めきれずに5-11でこのゲームも失う。特にバック対バックの打ち合いで孫が伊藤を上回った。

伊藤にとって唯一のチャンスは第3ゲームだった。序盤で1-6まで離されながら、4本連取で5-6まで挽回。バックハンド強打を連発したり、ロングサービスからバック・フォアの高速連打で得点したりと、伊藤らしい攻撃的なプレーが冴えた。そこからは一進一退の攻防が続き、7-8からの1本では伊藤が勝負をかけた。バックハンドでストレートへのレシーブドライブからクロスへの戻しという完璧なコース取りだったが、孫穎莎が驚異的な反応とバックハンドドライブで盛り返し、スコアは7-9に。ここで伊藤はタイムアウトを要求した。

タイムアウト明けの1本は、伊藤が孫穎莎のバックハンドドライブを回り込んでカウンターし、痛烈に得点。その次の1本では、ストップレシーブからの回り込みドライブで連続得点。9-9と追いつき、このゲームの奪取が期待されたが、ここからの2本が孫穎莎の真骨頂だった。バック側へのロングサービスを2本続け、伊藤は2本とも回り込んで1本目はドライブ、2本目はスマッシュとベストレシーブを見せたが、孫はそれを読んでいて1本目をクロスへブロック、2本目はストレートへブロックと完璧な対応。結局、伊藤はこのゲームも9-11で落とし、0-3と追い詰められてしまった。

第4ゲームは仕上げに入った孫穎莎が序盤から一気に突き放す。伊藤も何とか流れを変えようとリスクを背負った強打や、難しいコースを狙ったショットを繰り出すも、それがミスとなり失点を重ねる。あっという間に1-9までリードされ、そこから意地のバックハンド強打などで3点を返したが、それが精一杯。最後はミドルから体勢を崩しながら放ったフォアハンドスマッシュがミスとなり、4-11。伊藤の世界選手権は幕を閉じた。

以下は試合後の伊藤のコメント。

「毎回毎回やって思うんですけど、やっぱり孫選手はみんなよりもひとつ上……ひとつじゃないか。もうちょっと上。自分としては頑張って、前後に落としたり、振り回したりしたいんですけど、なかなか威力だったり回転量が強くて。バックからフォアに、ストレートへ回したりとかしづらくて。本当はもっと回したいって1ゲーム目からすっごい思ってたけど、やっぱり回せないような回転量や強さがありました。
 ナイスボールだなって思いながらも、やっぱこういうボールにもやっぱ対応していきたいなと、すごく思った。孫選手と練習したほうが早いのかな?(笑)本当に次やる時は、毎回そう思ってるけど、やっぱり1ゲームは絶対取りたい。でも、今回は良い試合できたし、楽しめた試合でした。
 (ベンチのお母さんと)一緒にメダル取ることができてよかったなと思います。やっぱメダルを獲りたいっていうのは、元々世界選手権の個人戦出場が決まってから、始まる前までもそうだったし、ずっと言ってたので、それはひとつ叶えられたかなと思います。楽しかったしうれしかったし、幸せな瞬間だった」

次の目標を聞かれ、「まだ確定ではないんですけど、早田(ひな)選手とのダブルスに再挑戦していきたい」と答えた伊藤。自信と輝きを取り戻した「復活の大魔王」は、これからさらに卓球ファンを楽しませてくれそうだ。

孫穎莎(右)のボールの質の高さに、伊藤は技のバリエーションが限定されてしまった

3ゲーム目にはバックハンド強打から回り込みフォアハンドスマッシュという必殺パターンで応戦した伊藤

伊藤の速射砲のようなバックハンドにも動じず、威力と精度の高いバックハンドドライブを打ち続けた孫穎莎

ベンチの母・美乃りさんと二人三脚で戦い抜いた伊藤(右)。これほどの孝行娘もそうはいないだろう

試合後の記者会見ではスッキリした笑顔を見せた伊藤。孫穎莎には及ばなかったが、今大会を通じてのプレーぶりは見事だった

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