本日の午後、日本卓球協会はパリ五輪の代表内候補予定選手の3番手(団体戦用)として、男子は篠塚大登(愛知工業大)、女子は張本美和(木下アカデミー)の選出を発表した。
これで男子代表は張本智和(智和企画)、戸上隼輔(明治大)、篠塚大登、女子代表は早田ひな(日本生命)、平野美宇(木下グループ)、張本美和の6人が揃った。
2008年北京五輪から4大会連続で五輪代表になり、2016年リオ五輪では団体の銀メダルとシングルス(日本初)銅メダルを獲得、東京五輪では混合ダブルスの金メダル(伊藤美誠とペア)、団体の銅メダルを獲得した水谷隼さんに発表された3番手選手について聞いてみた。
<水谷さんのコメント>
篠塚を選んだのは選考ポイントが3位(松島は同14位)だったことと、全日本での直接対決で勝ったことは評価に大きく影響したと思う。そこまで力の差がない2人なため、オリンピックのシード権のために世界ランキングが高い松島を選ぶという可能性もあったが、直接対決で勝ち世間一般から批判の浴びにくいほうを選択したとも言えるだろう。
3番手に選ばれた篠塚は戦術が非常に上手い選手である。対戦相手の心理を読む力は日本一だろう。ところが戦術が上手く、そこに絶対的な自信を持っているがゆえにそこが弱点とも言える。なぜならば、世界のトップ選手は彼の常識が通用しない選手がゴロゴロいるし、あえて罠にハマったフリをして最後にそのボールを狙う戦略をとってくるような選手もいる。
さらに成長するためにはもう1種類サービスの球種を増やすことと、右利きのバック前にサービスをだす頻度が増えればより相手を混乱させることができるだろう。
女子はこの1年間の張本美和の成長と、伊藤美誠のこの2年間の状態を考えれば妥当な選考だと思う。伊藤はどこかで調子が上がってくるかと思っていたけれども、東京五輪以降、最後まで調子は上がってこなかった。
伊藤はパリ五輪の選考方法が決まってから、不満を抱いていた感情が、そのまま選考会でも出ていたのではないか。過密スケジュールや選考方法に対するモヤモヤ感が抜けなかったことが大きく影響したかもしれない。
また、伊藤はプレースタイルに変化がなかった。みんなが彼女の卓球を研究しロングサービスをだしてくるのだが、そのボールに対して最後まで苦しんでいた。過密なスケジュールや怪我で、練習時間が確保できず、最後まで改善できなかったのが悔やまれるところだろう。
一度チャンピオンになったり、メダリストのように結果を残した選手というのは調子が悪くなると、良い時の過去の自分に戻りたがる。あの時はこうだった、あの時はこんな練習をしていた、あの時はこういう用具を使っていたとか。でも周りは未来に向かっているので、過去の強い自分に戻ったところで勝てなくなってしまうのだ。ひょっとしたら伊藤も過去の自分に縛られていたのかもしれない。
張本美和は伸びしろを考えれば3番手として良い人選だろう。彼女はバック対バックからストレートに、相手のフォアサイドを厳しく攻めるのは非常に上手い選手だ。サービスレシーブでの幅も広く、これから半年間さらに強くなっていくだろう。
*写真は東京五輪で混合ダブルスで優勝した水谷隼・伊藤美誠ペア
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