卓球王国 2024年9月20日 発売
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インタビュー

密かにアツい徳島の卓球。陰で支える笑顔あり

ー以前、卓球王国では藤浦さんの所属チームであるさくら卓研を取材させてもらったことがあります。当時は山間(やまあい)にある、廃校になった学校の体育館で練習していましたね。
藤浦 そうですね。口山中という廃校になった中学校で、体育館だけ残してくれたところに1時間くらいかけて車で通っていました。最初は地元の名西(みょうざい)郡というところの名西クラブで3年くらいやって、もうひとつ地元にあったクラブと両方が人数不足になったので、合併して新しくさくら卓研を作ったんです。45歳くらいの時ですね。

さくら卓研の練習拠点だった口山中学校。廃校になった中学校の体育館で練習していた(写真:高橋和幸)

さくら卓研は初めて全日本クラブ選手権に出た時、「全国のレベルはどんなものか」と思って2部に出たら、ベスト16に入れたんです。これは50代ならいけるなという話になって、翌年50代の部に出たら、あれよあれよという間にまさかの優勝。日本卓球協会が主催する大会の団体戦で、徳島県勢として初めて優勝したので、有志で祝勝会もしてもらいましたね。

その時は徳島県出身の高橋和幸さん(元・卓球王国発行人)がチームの監督を引き受けてくれて、バックプリントが「卓球王国」のユニフォームをプレゼントしてくれました。そんなに勝つわけがないということで一枚しかなかったのですが、せっかくなので「負けるまでこのユニフォームで」ということで1試合目から着たら、結局その1枚で予選と決勝、2日で10試合くらいやりました(笑)。

2007年全日本クラブ選手権・50代の部で優勝を飾ったさくら卓研

ー現在も毎日ラケットを握っているんですか?
藤浦 毎日やっていますよ。指導は個人的に教える他にも、徳島県卓球協会や体育振興公社、北島町役場と提携して卓球教室をやっていて、ラージも硬式もあります。たとえば月・火・水・土は1日4時間くらい教えていて、その合間に自分の練習もやっています。我ながらよくもつなと思うくらいで。
体はどこかしら痛いけど、ラケットを握ったらできるんですよ。2時間の指導でも、30分ずつ4人の相手をして、ずっと打っている。だから、たまにマシン練習をやりたいという人がいたら歓迎しています(笑)。

※レディースの大会スタッフの方からの証言
「藤浦理事長の指導はすごく人気があって、今は教室の枠が全部埋まっていますよ。すごく優しいから、レディースの方からすごく人気がありますよ」

藤浦 レディースやシニアの方だと60歳を過ぎている方ばかりですけど、私はどこに打たれても返します(笑)。あちらこちらに来るボールを返しているうちにうまくなったようなもんで、感謝していますよ。

ー硬式とラージ、両方の魅力を知り尽くしていると思いますが、ご自身の練習はどちらが多いんですか?
最近は、基本的に硬式よりもラージですね。ラージってラリーが続くでしょう。私は球はそんなに速くないんだけど、ラリーが好きなんですよ。だからラリーが続くラージのほうが面白い。

ー全日本ラージ(2023年)では、混合ダブルス130でも優勝されています。
藤浦 パートナーの十川(そがわ/旧姓・鎌田)早苗さんとは長い付き合いで、愛知工業大の同級生なんです。私がミスをせずにつないで、彼女が打ち込むスタイルですね。彼女は強いですよ、レシーブがものすごく上手だし、ツッツキ打ちもうまい。稲森(愛弓)さんと組んで全日本学生選手権のダブルスチャンピオンですから、ダブルスの職人ですよね。

ぼくらのペアは県内では弱いんですよ(笑)。全国ラージ(2022年)で優勝する前に県の大会に出たら9位だったし、全日本ラージで優勝して帰ってきて大会に出たら3位でしたから。徳島は結構ラージのレベルが高いんですよ。阿波おどりカップの影響もあると思いますけど、楽しいですよね。

2023年全日本ラージ・混合ダブルス130で優勝した藤浦・十川ペア

ー最後に、今後の目標を聞かせてください。
藤浦 ダブルスパートナーの十川さんに、マスターズで表彰台に乗ってもらいたいですね。私はフィフティで一度3位に入っているんですけど、十川さんはベスト8にはもう10回以上入っているけど、なかなか3位に入れない。一回その壁を突破したら優勝してもおかしくないですね。
自分の目標としては、全日本ラージのシングルスで優勝したいですね。全国ラージはシングルスで優勝できたんですけど、初めての全国大会で無欲の勝利だった。大会のレベルもわからなかったし、自分のレベルもわからなかったので、全日本ラージでしっかり勝ちたいです。

 ダブルスパートナーの十川早苗曰く、藤浦哲夫は「本当に信頼できる人」。藤浦は「パートナーが強い」と謙遜するが、十川は「藤浦さんが良いコースを突いてくれるから、次に私に打ちやすいボールが来る。大事なところでミスしないし、私がミスをしても怒らない」と語る。理事長として、スタッフの人数も限られる中で全国大会を毎年のように開催できたのも、その実直な人柄が周りの人たちを動かしたからだろう。

 2023年12月に行われた全日本マスターズで、十川は女子ハイシックスティで3位となり、ついに表彰台に上がった。パートナーをベンチで支えた藤浦とともに、2024年はラージで、硬式で、さらなる自己新記録の更新を狙う。

 

■Profile ふじうら・てつお
1956年11月15日生まれ、徳島県出身。富田中・徳島工業高を経て愛知工業大に進学し、和歌山銀行でもプレー。35歳で徳島県に戻り、2007年全日本クラブ選手権・50代の部優勝(さくら卓研)、2008年全日本マスターズ・フィフティ3位、2023年全日本ラージ混合ダブルス130優勝(十川早苗とのペア)。(一社)徳島県卓球協会の理事長を11年務め、2023年4月に副会長に就任。

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