なんとも強烈な一戦だった。T.T彩たまが木下マイスター東京に大逆転勝ちを収めた、男子開幕戦の余韻冷めやらぬまま、18時30分からスタートした2022ー2023シーズンのTリーグ女子開幕戦。大田区総合体育館には2333人の観客が入り、まさにワールドクラスの激しいラリー戦を堪能した。その結果は下記のとおり。
【2022-2023Tリーグ・女子開幕戦】
〈日本生命レッドエルフ 4ー0 木下アビエル神奈川〉
○麻生麗名/笹尾明日香 6、10 長﨑美柚/木原美悠
○早田ひな ー10、8、10、5 木原美悠
○伊藤美誠 ー7、4、8、8 平野美宇
○リ ジャイ 7、7、6 石川佳純
今季、日本生命レッドエルフから平野美宇と長﨑美柚が移籍した木下アビエル神奈川。開幕戦のオーダーは、復活した「Wみゆう」ペア、長﨑/木原をトップに置き、国際大会での活躍で世界ランキングを14位まで上げている木原が2番。今シーズンから、ダブルスと2番で同じ選手が連続して出場できるようになった、Tリーグのルール変更を早速生かしたオーダーだ。そして3番、4番に東京五輪日本代表の平野美宇と石川佳純が続く。日本女子代表といっても差し支えない、強力な布陣となった。
しかし、日本生命レッドエルフは、1番ダブルスでいきなり木下の「勝利の方程式」を打ち破る。大卒1年目の笹尾明日香と、高卒2年目の麻生麗名の元気印ダブルスが、笹尾の「ゴリゴリ」のフォアドライブと、麻生の粘り強い両ハンドドライブで、実績にまさる長﨑/木原を追い詰めていく。1ゲーム目は中盤でリードを広げて奪取し、2ゲーム目は4ー7、7ー10のビハインドから逆転した日生ペアが殊勲の勝利。「ダブルスがポイント、日本で一番強いペアに勝てた」と試合後の日本生命・村上監督。
続く2番は早田対木原。試合後、早田が「ダブルスをやってからの対戦だったので注意した」と語ったとおり、序盤は木原ペースで試合が進む。世界ランキング6位の早田の連続パワードライブを、ブロックとミート打ちで次々に跳ね返した木原のプレーには息を呑んだ。しかし、3ゲーム目に5ー8から10ー8と逆転しながら、このゲームを落とした木原は、4ゲーム目は出足から連続失点。早田が一気に9ー3、11ー5で試合を決め、経験の差を見せつけた。
ダブルスの勝利を皮切りに、綱引きの綱をジリジリと引き寄せるようにペースをつかんでいった日本生命。後のなくなった木下は3番の「みう・みま対決」で、平野に逆襲の一手を託した。力攻めでは逆に不利になると、ナックル性のボールや緩急を生かしてミスを誘い、1ゲーム目を奪った平野。互いを知り尽くした両者の駆け引きは見応えがあったが、根比べではやはり伊藤に分があった。3・4ゲーム目は中盤の競り合いから最後は伊藤が抜け出すパターンで、伊藤に軍配。
「緊張感もありながら、すごく楽しく試合ができました。応援してくれる人がたくさんいたので、集中して試合ができたし、緊張感の中で、強気な気持ちで勝てたのが良かった。レシーブ、サービスからの3球目も良かった」と試合後に語った伊藤。国内での団体戦は「いつ以来?」というくらい久しぶりだが、自ら「大好き」と語る団体戦でのプレーはやはり生き生きとして映る。
3ー0で日本生命が勝利を決め、4番はリ ジャイと石川佳純の対戦。今を遡ること13年前、2009年の全中国運動会で、遼寧省チームのホープだった彼女と同じシャトルバスに乗ったのを思い出す。郭躍(07年世界女王)の「妹分」だった当時と比べるとかなり体重は増えたが(失礼)、バックハンドの懐の深さ、サイドを切る両ハンドドライブで相手を追い詰めていくプレーは健在だった。サービス・レシーブからの速攻では石川が上回っていたが、ラリー戦で得点を重ねたリ ジャイが勝利。ベンチと勝利の歓喜を分かち合った。
「木下の勝利は確実」と思われた1番ダブルスで、麻生/笹尾が流れを作り、一気に4ー0で勝利した日本生命レッドエルフ。ベンチからの一体感のある応援をバックに、大型補強の木下をひと息に呑み込んだ試合運びは、さすが4連覇の女王。そして木下も、この悔しさをバネに悲願の初優勝への決意を新たにしたことだろう。今年のTリーグ女子が、ますます楽しみになってきた。何ともハイレベルだ。
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