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「隼輔も陸杜も、内側から出る優しさを持った人間」戸上隼輔と前出陸杜の土台を築いた“道場の教え” 松生TTC

 現在発売中の卓球王国2023年2月号の『潜入ルポDX』では、三重県津市で活動する松生TTCにお邪魔させてもらった。世界トップランカーの1人に成長した戸上隼輔、希少なペンドラのホープである前出陸杜らを輩出し、2016年の全国ホープスでは準優勝(男子)に輝くなど、全国でも活躍中。今回は小・中学生チームの指導理念や練習などについてお話をうかがった。

 松生TTCの活動拠点である松生卓球道場が誕生したのは2006年。地元の百五銀行を定年退職した現在の松生幸一館長が資材を投じて建設。現在は幸一館長の次男・瞬コーチが中心となって運営、指導を行なっている。会員数は300名を越えるそうで、小・中学生から高校生、社会人にレディースと、道場には幅広い年齢の選手たちが訪れる。

道場を運営する松生幸一館長(左)と松生瞬コーチ

選手たちは明るく伸び伸び、元気いっぱい

 

 幸一館長、瞬コーチがともに指導で大事にするのは「人間形成」。卓球だけでなく、文武両道を志し、何より人の気持ちがわかる選手を育てたいと語る。では、そんな中で育ったクラブOBの代表格・戸上と前出は、どんな子どもだったのか。幸一館長と瞬コーチに聞いてみた。

 「(戸上)隼輔はとにかく優しくて、人の話をよく聞いて、努力もする。それでいて頭も良いですね。(前出)陸杜はとにかく練習して、こっちが“今日は休み”と止めないと、故障するまで練習するような子だった。彼らは上辺だけじゃなく、内側から出てくる優しさを持っている人間。2018年に2人揃って日本一(戸上:インターハイ、前出:全日本カデット14歳以下)になってくれた時はうれしかったですね」(幸一館長)

 「隼輔も陸杜も人気があるんですよ。年上からも年下からも好かれて、周囲に人が集まってくる。何事もサボらず必死にやるから、周りが応援したくなる存在なんです。そして、応援に応えようと頑張れるんです」(瞬コーチ)

 幸一館長の指導は「叱っている姿を見たことがない」というほど優しい。瞬コーチは「(幸一館長は)優しすぎるところがあるので、ぼくが厳しく言う時もあります。アメとムチと言うか(笑)」と話すが、戸上と前出について「館長の人柄というか、優しさがあったから頑張れた部分もあると思う」と、父でもある幸一館長の指導への敬意も口にした。幸一館長と瞬コーチの愛情を受け、優しくて強い選手に育った戸上と前出。2人はいわば、道場の教えを体現するような存在なのだ。

戸上隼輔、小学2年生時

前出陸杜、小学4年生時

 

 最後に、ページを作成するにあたり、クラブの過去の写真を探している中で、なんとなく幸一館長の人柄が滲み出ているような1枚を見つけた。本誌には掲載できなかったのだが、せっかくなのでここに載せておきたい。映っているのは2016年全国ホープス大会の決勝、4番で敗れて涙する前出と、それを微笑むようにベンチで迎える幸一館長の姿。本当なら準優勝に終わった悔しさいっぱいの写真なのかもしれないが、道場を取材し、幸一館長と瞬コーチの考えや人柄に触れた後でその写真を見ると、とてつもなく優しく、温かい1枚に見えた。(編集部・浅野)

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