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インタビュー

関西の雄、坂根翔大「オンリーワンとしての坂根翔大を表現したい。 自分の終わりは見えないですね」

混合ダブルス準決勝、坂根・塩見は張本・早田に敗れた

 

カットマンゾーンに入り、
御内、英田を連破。
笠原に勝ち、初のランク入り

 

●−全日本を振り返ってみましょう。シングルスはノーシードでした。
坂根 2回戦の吉田大輔(松戸市役所)には勝ったことがなかった。高校のインハイの団体でやっていて、大学の最後の全日学の最後のシングルスでつぶされていて、苦手意識がありました。ただ、彼も社会人になっていて今の自分とは練習量の差が出ると思って、大きなラリーに持っていこうと思っていました。

●−次の3回戦が御内健太郎(シチズン時計)選手でしたね。
坂根 ぼくはカット打ちがめちゃくちゃ好きだし、カット打ちの自信もあって、去年の4月のビッグトーナメントのベスト8決定で対戦して勝っていた。ただ、12月の日本リーグファイナル4で御内さんは大島祐哉(日鉄物流ブレイザーズ)さんにも勝っていた。その試合を見る限りでは全部攻撃をしてくると思ったので、徹底的にカットの追い込む作戦にしました。ただ全日本という舞台なのでお互いが思うようにいかないこともあって、最終ゲーム8−10で負けていたけど、逆転できました。
実はポーランドに行く時に、御内さんもポーランドでプレーする時だったのでたまたま同じ飛行機だった。ドバイの乗り継ぎの時に御内さん、町飛鳥(ファースト)さん、松山祐季(協和キリン)の4人で「これから頑張ろう」と言っていた。その時にはまだ全日本の組み合わせもわかっていなかった。御内さんからは「もう坂根とやることもないな」と言われていたのに、3回戦で当たりましたね(笑)。
ぼくの中では同じ選手とやって1勝1敗というのは当たり前だけど、御内さんに2連勝できたのは実力がついたのかと感じました。勝つことができて自信になったし、次の英田(理志・T.T彩たま)さんにも勢いでぶつかることができた。

男子シングルス3回戦で御内を破った坂根

●−カット打ちはもともと得意だったのかな?
坂根 今ではカットマンが好きで得意なんですけど、これにも理由があって、もともとは好きではあったんですけど、打ち抜けなくて得意ではなかったんです。でも大学1年の時から美誠ちゃんと同様にミキハウスにも練習相手に行かせてもらって、佐藤瞳と橋本帆乃香の練習相手もしてたんです。そこで何度もやらせてもらったので、カット打ちのコツをつかみました。

●−英田選手とは今までやったことは……。
坂根 英田さんはスウェーデンでプレーしていて、T.T彩たまに入る前に、大阪で何度か練習していた。関大に来て、一緒に練習をしていたこともあったし、苦手意識はなかったですね。

●−とはいえ、前半は拮抗した展開になっています。
坂根 以前やった時の英田さんと質が違うというか、彩たまに入ってからさらに活躍が目立っていた。ぼくもカットに持っていけばチャンスはあると思っていたし、とにかく先に相手にカットさせようという作戦でした。勝って自信になりました。

●−ラン決は笠原弘光(ハンディ)選手でした。
坂根 笠原さんは初めての相手で、年上の名選手なのでランク決定ということで思い切ってやれました。やりにくさはあまりなかった。笠原さんもラリー選手で、ぼくもラリーが好きですから。
ただ、サービスがうまくて、ちょっとした回転の差に対応するのが難しかった。レシーブは最後の最後まで苦しみましたね。

●−最終ゲーム11−8、4−3で勝ちましたね。
坂根 初めてのランク入りは非常にうれしかったですね。全日本のランクは簡単に入れるものではないし、ぼくはカットマンが大好きで、そのカットマンのゾーン(ブロック)に入って、そのチャンスをしっかり活かせた。

男子シングルス4回戦で英田を破った坂根

 

シングルスの5回戦で笠原に競り勝ち、初のランク入りを決めた

●−次の6回戦では吉山僚一(愛工大名電高)選手に完敗でした
坂根 予想よりもラリーの質、回転の質、ひとつ上の強さでした。それに、ぼくのエースボールが普通に返されてびっくりしました。もちろん満足しちゃいけないんだけど、ランクに入って満足して、疲れも一気にきた感じです。
全日本で14試合、こんなに試合をやったのは初めてです。去年も3種目に出て、混合ダブルスに集中しすぎて、シングルスの時に疲れてしまった。苦い思いをしたので、今年は体力に気をつけて、海外も経験して効率よくプレーすることに注意した1年でした。今回の全日本では経験値を積めましたね。

 

全国大会で入賞したのは初めてなんですよ。
ホカバ、カデット、インターハイ、
大学でも(表彰台は)ない

 

●−今年の全日本全体を振り返るとどうですか?
坂根 今回は混合ダブルスで3位に入り、表彰台にも上がれたのはうれしかった。全国大会で入賞したのは初めてなんですよ。ホカバ、カデット、インターハイ、大学でも(表彰台は)ない。
混合ダブルスは塩見さんがミキハウス時代に組ませてもらって、去年は予選の決定戦で上村・木村(当時ともに専大)ペアに1−2の7−10で負けていて、奇跡的な逆転で通過して、本戦の全日本ではベスト8だったので、二人のペアは延命しました(笑)。塩見さんは今、サンリツなのでランクに入らないと、負けた瞬間に即解散になってしまう。今回は勝った喜びと同時に、スリルがありましたね。今年は結果を残せてよかったです。
シングルスでも結果を残せたし、今年はすごく良いスタートを切れた。目標はTリーグに出て、みんなから応援してもらえる選手になりたいし、今年も海外でプレーする話を進めています。現状維持ではおもしろくないので、それ以上を目指したいですね。

●−Tリーグもチームが増えているし、海外からも声がかかりそうです。
坂根 日本の大会は優先するけど、海外でもやりたいですね。

●−卓球はこの1年で何が変わったんでしょう?
坂根 技術は大きく変わっていないけど、負けている場面でもパニックになることなく、頭が働かない状況でも、どうせ負けるなら他の技術を使ってみようと精神的に落ち着いてプレーできている感じです。

●−指導者、練習相手、プロ選手と3足のわらじだね
坂根 卓球大好きなのでうれしいことです。全日本の1週間後に美誠ちゃんのWTT遠征(ヨルダン)にも帯同してました。浮かれてる場合じゃない(笑)。全日本で上のほうでやらせてもらうと、男子の上のレベルでは全然違うと感じましたね。

●−全日本前は男子とも練習していたんですよね?
坂根 仕事があるので出稽古はなかなか難しいのでアカデミーにいる選手とやっていました。女子の世界のトップクラスのボールを打ったり、ヨーロッパ男子の重いボールも打つとか、こういう経験する人はなかなかいないと思います。

 

塩見との混合ダブルスで3位入賞、これが坂根にとって「初の全国大会の表彰台」となった

 

練習量の多い選手、センスのある選手とか、
たくさんいる中でナンバーワンになって
輝くのもいいけど、
ぼくはオンリーワンでいたい

●−全日本でランクに入る、表彰台に上がるような選手はいわゆる名門校で鍛えられた選手がほとんどで、坂根君のような経歴を持つ選手は少ないですね。
坂根 父の教えなんですけど、ナンバーワンではなく、オンリーワンという考え。練習量の多い選手、センスのある選手とか、たくさんいる中でナンバーワンになって輝くのもいいけど、ぼくはオンリーワンでいたい。その先にナンバーワンがあると考えている。ぼく自身の存在価値を大事にしていて、ぼくにしかできないことは何だろうと考えています。名門校で鍛えられて勝ち続けるのはよくある話です。ぼくがジュニアでベスト8に入った時に関東の大学からも声がかかったけど、関西に残ってどう頑張るのか、そこで結果を出したらかっこいいだろうという意識がありました。それは今でも大事にしています。

●−関西で頑張ることの意味と意義とは何だろう?
坂根 関西で育っているし、お世話にもなっています。関西から全国に羽ばたいていくことで、子どもたちにも夢を与えたい。「環境のせいじゃなくて、自分次第でどうにでもなるよ」ということを、ぼくの結果やぼくの卓球人生を通して示していきたい。

●−でもインタビューでは関西弁にはなっていないね(笑)。
坂根 敬語を使っているからです。普段はバリバリの関西弁です(笑)。

●−坂根君はプロコーチ、プロの練習相手、そしてプロ選手だけど、プロフェッショナルを意識することはある?
坂根 ぼくのイメージではプロ選手というのはスポンサーがついて、卓球場とかの環境も整っている人ですね。社会人になる時に卓球に携わる環境を与えていただいたので、仕事に携わる以上、プロ意識を持って何事にも取り組むようにしています。ぼくにはピッタリの仕事でした。

●−企業スポーツという選択肢は?
坂根 高校選び、大学選びも同じですが、縛られるのはあまり得意じゃないので、オンリーワンとしての坂根翔大を表現したい。早くに海外リーグも意識していたけど、ちょうど社会人になる時にコロナになったので時期が遅れた感じです。ひとりでいるのが意外と好きで、海外にひとりで行くのは平気なんです。何かしらひとりで生きていけるし、海外でも伸び伸びやれます。

●−今回のように全日本で成績を残すと教えている子どもたちや周りの人の反応も違うでしょ?
坂根 全然違いますね。ただ、大阪の子はヤンチャで気が強い子が多いから、全日本から帰ってきて一発目は「坂根さん。そんな強かったんや」と言われました(笑)。大阪は結構おもしろいんですよ。

●−卓球選手として描く夢、大きな目標はなんだろう。
坂根 まずはTリーグ参戦ですね。それに全日本もランク入りできたので、ベスト4に入り、シングルスでも表彰台に立ちたいですね。卓球でご飯を食べさせてもらっている以上は、もっともっと上を目指したい。
コーチングもしていますが、選手として理屈ではなく頑張る背中を見せてあげたい。そうすれば説得力も付いてくると思います。今、引退してすぐにプロコーチになる人も増えていますが、ぼくのようにコーチ兼選手をやっている人は少ないと思うので、そこで目立ちたい。
ただ矛盾しているかもしれないですけど、中途半端は良くないと思う。選手も頑張るし、指導面でも、ぼくの持っている考えや技術をすべて教えるようにしています。今の3つの役割を全力で全うしたいし、常に感謝の気持は忘れてはいけないと思っています。関西卓球アカデミーという環境もそうだし、ぼくひとりで強くなるわけでもないし、選手のあとの、コーチングも疎かにできない。筋を通そうと思っています。

●−坂根君自身、まだまだ伸びしろがありますね。
坂根 まだまだできないことだらけなんで、今できることを試合で出すのが毎回の目標。自分の終わりは見えないですね。

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●さかね・しょうだい
1978年12月21日生まれ、兵庫県高砂市出身。宝殿中を卒業後、育英高(兵庫)2年で、2015年全日本選手権ジュニアでベスト8。インターハイでは3年のシングルスのベスト32が最高成績。関西大に入学後、16年関西学生選手権優勝、17・18年準優勝。18年全日本学生でランク入り。23年全日本選手権の混合ダブルスで3位、シングルスでは初のランク入りを果たす。所属は関西卓球アカデミー

 

坂根翔大のAnother storyは卓球王国最新号5月号で紹介しています

 

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