卓球王国 2024年11月21日 発売
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「全日本選手権に優勝して頂点に立つと、今度は自分がみんなの標的になって追いかけられる」

 

最新号で語られた石川佳純さんの「本音」と「真実」

2019年の五輪代表レースで彼女は変貌した

 

東京五輪の代表決定以降、卓球王国が行った「石川佳純」のインタビューを読むと、彼女の意識の高さに誰もが「素晴らしい」と感銘する。

石川さん自身はミキハウス時代に平野早矢香さん(五輪メダリスト)に影響を受けたというが、求道者のように卓球の道を極めようとする平野さんと石川さんは真反対のような性格とも言えた。ミキハウスの大嶋雅盛監督はこうう証言する。

「佳純に会った時には普通の小学生で、練習はあまり好きではないタイプ。でも試合をすれば強いという子でした。当時、ミキハウスにいた平野早矢香とは真逆だった。練習があまり好きではないけど、覚えるのが早い佳純と、どん臭いけど、ものすごい練習をする平野。平野と会ったことで、お互いに刺激しあい、佳純に化学反応が起きたのでしょう」(別冊KASUMIより抜粋)

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私も小学生の頃は、我慢強くないし、

集中力が長く続かない子どもでした。

それはもともとの性格です。

でも、メンタルは訓練で鍛えられます

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アスリートのメンタルは生まれつきのものだと考える人もいるが、鍛え抜いた石川さんだからこその言葉だろう。自分の弱さを認めた上で、石川さんは自分を変えようとした。だからこそ、自身の経験として「メンタルは訓練で鍛えられる」と実感していた。

編集者として、文章にまとめるのに苦労する人もいれば、インタビューをまとめながら小躍りしたくなるほど喜びを感じさせる選手もいる。 

石川佳純さんのインタビューは、選手の前半時代は実は前者で、選手時代の後半では後者になり、深い言葉が並び、インタビューでの彼女の言葉は大きく変わった。やはり2019年、もしくはその少し前から始まった平野美宇選手との東京五輪代表レースで苦しい経験を経て人間的に成長したのだろう。

その代表レースで髪の毛一本ほどの差で競り勝った石川さんと、シングルス枠から外れ、団体戦のみの出場となった平野美宇選手。ふたりは東京五輪でともに戦い、ともに笑った。そして今では時々食事をする仲になっている。

石川さんが小さい頃に「愛ちゃんに憧れていた」ように、2009年世界選手権横浜大会で、9歳になったばかりの平野美宇は、16歳ながら世界のベスト8に入った石川の試合を、会場の片隅で憧れの眼差しで見ていたのだ。

「追いかけている時には卓球は楽しいものです。目の前の人を追い抜いていく時には自分の成長を感じられます。ところが、全日本選手権に優勝して頂点に立つと、今度は自分がみんなの標的になって追いかけられる立場になります。それは苦しくて、1回負けただけで『石川は負けた』と言われます。全日本で3連覇した翌年(16年)の決勝で美宇ちゃんに負けた時には『世代交代』と言われましたが、私はその時まだ23歳でした。

 2019年頃からは負けたことのなかった相手に負けることもあり、苦しい時期が続きました」(卓球王国9月号より)

石川さんに憧れた2009年から10年後、平野美宇選手は東京五輪のシングルス代表を懸けて石川さんと戦った。憧れの人だった「愛ちゃん」が、石川さんのライバル、チームメイトになっていったように、平野選手と石川さんの間に同様の時間が流れ、日本の卓球が受け継がれていった。

石川佳純という不世出の選手は舞台から降りていった。しかし、彼女の卓球と向き合う姿勢、卓球を楽しむ心、自分のため、そして日本のために戦った闘志あふれるプレーはすべての卓球ファンの心に刻まれている。「石川佳純は永遠」なのだ。

選手時代には表に出なかった「本音」と「真実」が卓球王国最新号には綴られている。

 

 

卓球王国最新号9月号 https://world-tt.com/blog/news/product/az317

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