卓球王国では5月17日発刊の「別冊卓球グッズ2022」のためにラバーの商品名を切り取り、スポンジを黒く塗りつぶして、20枚の「ブラインド試打」と、商品名を切っていないラバーを7種類(新商品)、合計27枚の試打を行った。
過去の同じ試打では参加者の半数以上が[テナジー]を言い当てた、もしくは支持した。中上級者であれば、ラバーの差異が感じ取れたが、今回は参加者が認識できなかった。
中級者向けのドイツラバーを試打した後に「これはディグニクス05ですね、間違いない」と言う人もいた。また、現在ディグニクス09Cを使用している人が「これは今使っているラバーよりも上かもしれない」とドイツラバーを絶賛する人も出てきた。
もちろん10〜15分程度の試打なので、直感的であり、ラバーの耐久性も考慮していないが、そこでわかったことはがあった。
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<1> 中上級者(特に中級者)はふだんラバーの商品名を認識しながら、今までバタフライ商品を使ったことがある人は、バタフライのラバーを基準にして、ラバーを評価している。(ただし試打してもバタフライの商品を当てられる人は少ない)
<2> ドイツラバーの性能(短い時間での試打という条件下で)がバタフライのラバーに近づいている。
<3> ドイツラバーと言って全部が同じではない。よくユーザーは、自分はドイツラバーが好きだ、ドイツラバーは好みではない、というようにひとくくりにして言うが、ブラインド試打した20枚のうち、16枚がドイツラバーだったが、試打の感想はまちまちだった。「それぞれのドイツラバーが全く同じ」という感想はなかった。似ているものがあったとして、ラバーに合った打法や特徴がある。
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一方で、卓球ファンや用具マニア(今回の試打に参加した人たち)の中での「バタフライ信仰」は根強い。
「ビスカリアスーパーALC」にテナジーとディグニクスを貼って試打してもらうと「なんかバタフライというラケットとラバーを持っただけで入る気がする」というコメントを発する人もいた。そこまでバタフライ商品のブランドイメージは確立されている。
もちろん、「バタフライは高いから買えない。似たような性質で2000円くらい安いならそちらを選ぶ」と言う人も少なくなかった。
なぜそこまで彼らはバタフライに信仰心を持つのか。それは世界や日本のトップ選手がバタフライを選ぶからだろう。特にプロ選手ならば試合での勝利は生活に直結するから、勝てる用具を選ぶ。その事実が一般愛好者まで浸透しているのだ。
ところが、今回の松平健太は金銭的な条件だけで移ったのではなく、使えるラバーがティバーにあったことに彼自身も驚き、契約を決めたという経緯がある。
「ラバーが使えないないなら条件をいくら話をしていても時間も無駄になるし、意味がないので、(金銭面などの)条件の話し合いは一番最後にしました。ラバーが良くないとティバーには行かないので試打をしてラバーが使えるかどうかという結果で決めようと思いました。
いろいろなラバーを選んでくれて、一番最後に使ったラバーがすごく良かったので、『これだったらバタフライと同等』と感じて、『これならティバーに行ける』と思いました」(松平)。
松平はまだ現役で、あと数年はTリーグでプレーを続ける選手だ。彼にとってラバー、ラケットは最重要な要素であるにも関わらず、バタフライからティバーに移ったことが、タマスに与えた衝撃、卓球市場に与える影響は大きい。
卓球ブランドの巨人「バタフライ」を脅かすまでにドイツラバーが進化したと見るべきか。しかし、[テナジー]が売れている時にさらにその上の[ディグニクス]を開発したタマスが黙ってはいないだろう。さらに先を行く用具を準備しているに違いない。
しかし、「全日本で決勝に行った選手、世界でメダルを獲った松平健太が満足できる用具があるんだ」という新たな発見。
松平のティバー契約が市場の潮目を変えるきっかけになるのは間違いなさそうだ。
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