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「逃げないで攻め続けた時には勝てますよね」石川の言葉vol.4

「つらいと感じることも多いですよ。

絶対成功するまで諦めないで頑張れたのは、

その先に見えるものがあるからかな」

 

苦しい時もあるけど、

今は目標があるので、

それに向かって楽しい気持ちを

持ってやることが大切ですね

石川佳純は昨年は1月の全日本選手権で3度目の優勝を飾り、5月の世界選手権では混合ダブルスで銀メダルを獲得。ワールドツアーの連戦を重ねながら、9月にリオ五輪の日本代表の切符を手にして、世界ランキングも自己最高位の5位まで上げた。

しかし、左足の故障で9月下旬のアジア選手権を棄権した。故障やケガのない選手と言われてきた石川にとって想定外の故障だったが、10月末のワールドカップで見事に復活。日本選手として初の決勝へ進んだ。国際大会の連戦をこなしながら確実に力をつけていった1年間だった。

●――昨年は9月に左足を故障して、アジア選手権を棄権しました。

石川 (故障で棄権したのは)初めてですね。自分の体のケアとか、体に対する考え方を改めて見直すことができた。万全に体が動けてこその卓球なので、そこをもっともっと意識して、ケガとか病気をしないようにと自分自身勉強になりました。

 

●――体も年々変化していると思うけど。

石川 体の感覚というのは小さい頃からどんどん変わっています。成長もしていると思うし、年齢とともに感覚も変わっているので、何がダメだったから体調が良いとか悪いとかをわかっていくことがケガを防いだり、調子が良い時と悪い時の波をなくす秘訣になるのかなと思います。

卓球をやめるまではフィジカルは成長を続けなければいけない。速く動く、強く動くのがすごく大事です。フィジカルはもっと鍛えなければいけない。

 

●――ここまでのレベルになると、ポンとレベルアップすることなく、何ミリ単位でじりじり上がっていくしかないね。

石川 落ちる時は早いですけど、上がるのは難しいですね。最近は改めて卓球の楽しさとか、試合の時に思いついたことをやるとか、楽しく工夫して好奇心を持ってやるのも武器になると思っています。レベルが上がれば上がるほど安全にやろうと思ってしまうけど、自分が小さかった頃を思い出して、もっと工夫してやってみよう、相手のやりにくいことをやってみようと思えたことは大きい。自分より年下の中学生や高校生を見ていたら、そういう頃の自分を思い出しました。

苦しい時もあるけど、今は目標があるので、それに向かって楽しい気持ちを持ってやることが大切ですね。

 

●――男子チャンピオンの水谷君は「石川はストイックだ」と言っていますが。

石川 水谷君もすごいじゃないですか。人が見ていないところで努力しているから。

 

●――でも石川さんはストイックでしょ。そう言われるでしょ?

石川 ストイックだと思わない。水谷君にそう言っていただいてありがたいけど、全然、自分で思わない(笑)。ただ、 楽しいから卓球にはまっているということですね。つらいと感じることも多いですよ。ただ絶対成功するまで諦めないで頑張れたのは、その先に見えるものがあるからかな。でも、ストイックじゃないですよ。いつも周りの方にいろいろ支えていただいている感じです。

 

●――水谷君の新しい本の中で「チャンピオンは異常者だ」というフレーズがあります(笑)。

石川 えー、私は普通ですよ(笑)。

 

●――「全日本決勝の大舞台、世界選手権の舞台、五輪の舞台で勝てる人は普通じゃない」と。

石川 試合が終わった時に「怖い」と思うんですよ。「あんな場所であんなプレーをしていたのか」と怖くなる時があります。09年の横浜大会で帖雅娜に勝った時や、世界選手権東京大会での香港戦とか、あとで考えると恐ろしいと思う試合がいっぱいあります。でも、コートに入ったら「やるしかない、攻めるしかない」と思っています。逃げないで攻め続けた時には勝てますよね。

 

●――他の選手と違う部分って何だろう。

石川 そんなにないですよ。練習をいっぱいすることかな。

 

●――小さい頃、練習嫌いだったでしょ。

石川 いや、今でも「練習が好きです」とは言えないです(笑)。でもやります。やらなきゃ勝てないんですから。

 

●――負けるのが嫌いでしょ。

石川 そうですね、メチャクチャ負けず嫌いですね。自分の中で何が誇れるかと言ったら、「負けず嫌い」が誇れます。ひとつのことにはまったら、それに集中できる。とことんやりたい。負けず嫌い、負けたくないという気持ちが人一倍強いからここまでやってこれた。

もうひとつは、「本当に強くなりたい」という気持ちが強いんです。いつも「強くなりたい」という気持ちで練習している。単純に、強くなりたい、うまくなりたいと考えているから、「じゃ、今度この練習をしようかな」と思える。課題が毎日見つかると楽しいじゃないですか。ただ練習をやるのはつまらないです。練習での(課題や上達の)意識がなかったらボールが打てないし、集中した練習じゃなかったら時間がもったいない。

 

●――「練習嫌いの石川」が、いつそんなに「練習をする石川」に変わったんだろう?

石川 10年のモスクワでの世界選手権が終わった時です。その時に平野(早矢香)さんとか福原さんと団体戦に一緒に出て、オリンピックに出ようと思ったらその二人よりも上に行かなきゃいけない。できるかどうかわからないけど、できるところまで頑張ってみようと思った。オリンピックをきっかけに大きく変わったと思います。

私の中ではオリンピックは大きな存在ですね。日本で3人しか出られないんですよ。しかも2人しかシングルスには出られない。そう思うと、やっぱり、私はロンドンとリオに出ることはできたけど、出られない人もたくさんいて、その人たちの分も頑張らないといけないと最近思います。オリンピックは出ることがメチャクチャ大変だから。

 

●――ロンドンではシングルスで準決勝まで行った、団体では銀メダルを獲った。その時の残像が残っている中で、今回のリオは全く違うものになるんだろうか。

石川 残像は残ってますよ。でもリオは全く違うものになると思っています。その経験を生かしてというよりは4年後の新しい自分で挑戦したい気持ちですね。

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