●――陳莉莉さんのコーチング、特に女子選手においてコーチの影響は大きいと思うけど。
石川 もう2年半くらいですね。(コーチを受ける)時間が長くなればなるほど、自分の良い時、悪い時を見ているので、悪い時は悪いなりにどうすればいいのかと道しるべを教えてくれます。一緒に戦っているので陳さんは私を助けてくれる存在です。もちろん最後にやるのは自分だけど、大きな支えだからいろいろなことを教えてくれます。厳しいんですよ、優しいだけのコーチではない(笑)。
ただ、ベンチで怒っているわけではないし、言い合っているように見えるかもしれないけど、そうではない。お互いの信頼関係ができていますから。
●――リオ五輪まであと半年ですね。
石川 オリンピックは4年に1回しかないので、後悔しないように自分のできることは全部やってあの舞台に立ちたい。本当に特別な舞台だと思うので、自分のできる準備を全部やって臨みたい。
●――これからの半年間のプランニングはもうでき上がっているんですね。
石川 ありますよ。言わないですけど(笑)。やっぱり自分の良いところを伸ばすということじゃないですか。
●――4年前の自分より強くなっているという自信とか手応えは確実にあるでしょ?
石川 ロンドンの時、19歳だったけど、そこからの4年間はすごく大きいですね。たまに自分が成長できてるかなと思うこともあるし、まだまだダメだなと思う時のほうが多いけど、いろいろなことが気にならなくなった。自分自身、成長している部分もありますね。
経験は財産ですね。今までのいろ~んな経験が生きています。試合は40分間くらいだけど、それまでの経験や、コートに入るまでの努力、練習していない時の努力が試合に影響するんだなというのを4年間で学びました。コートに入ったら年齢も何も関係ないじゃないですか。そういうのを何も気にせず戦えるようになるまで時間もかかります。経験を積んできて、自分が年下の頃は向かっていく立場でしたけど、向かってこられる立場にどんどん変わってきて、その中で学んだこともたくさんあります。
自分は緊張しないタイプだと思っていたし、実際にそうだった。ところが、そうじゃないんですよ。やっぱり大人になれば自信もついてくるけど、その分プレッシャーもついてくるんですよ。以前のように、「思いついたからやろう」という感じにはできなくなってくるじゃないですか。選択肢も増えてくる。「これもできるし、あれもできる」と。小さい頃は、「これしかできないからやるしかない」と思っていた。
今はいろいろ経験して、1周回ってきた感じで、ポジティブな気持ちというか、挑戦者の気持ちを持ってワクワクした気持ちでやりたい。後悔しないようにやり切りたいと思っています。
●――4年間は早かった?
石川 早いです。
●――ロンドンが終わった時には、これから4年もあるんだと思ったでしょ?
石川 思いました。ロンドンからリオまでの4年は長かった。ロンドンからの2年は早かったけど。いろんな経験がありましたね。これから半年間頑張ります。
●――今日はありがとうございました。
●
希に見る才能と希に見る努力。
天才・水谷隼をして「石川はストイックだ。すごい選手だ」と言わしめるほどに、類い希な打球センスを持ちながらも努力することを怠らない。そして本人曰く「その先に見えるものがあるから頑張れる」と。
その先にあるものは4年に1回しか訪れない。
全日本選手権はすべての卓球人が緊張に身を震わせ、勝利と敗戦に悔し涙とうれし涙を流す舞台だ。今年、石川佳純はその「全日本」で圧勝した。その先に見える大きな目標に向かう彼女は、この国内最大のビッグゲームを優勝という結果で越えていった。 ■(文中敬称略)
石川佳純●いしかわ・かすみ
1993年2月23日生まれ、山口県出身。四天王寺高卒、全農所属。13歳の時に全日本選手権でベスト4に入り、平成22年度全日本選手権で初優勝。26年度大会で54年ぶりの三冠王、27年度大会で4度目の優勝を果たした。2009年世界選手権ではシングルスベスト8、12年ロンドン五輪では団体銀メダルを獲得し、シングルスでも日本人初の準決勝進出を果たした。14年ITTFワールドツアー・グランドファイナル優勝、15年女子ワールドカップでは日本人初の決勝進出。世界ランキング5位(16年2月現在)
20日発売の卓球王国最新号(4月号)では、石川佳純のチャンピオンインタビューを掲載。「今までの石川さんへの取材では最高に素晴らしいインタビューとなった」(今野発行人)→最新号のご案内
https://world-tt.com/ps_book/newdetail.php
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