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韓国卓球界のカリスマ、千栄石「選手には良いものを食べさせて、地獄の練習をやらせる」

2004年12月、千栄石氏のインタビュー

 

中国独占の世界の

卓球じゃなくて、

これからは、チャンピオンが

あっちからもこっちからも

出るようになっていかないと、

卓球は今後オリンピックでも

生き残れないですよ

 

●――韓国では、才能のあるジュニア選手、若手の発掘というのはどのようにやっていくのですか。

千栄石 それが一番重要な課題ですね。2005年度から2009年度の1月15日までが私の任期ですが、計画では長期的に将来を見据えた選手の強化、下のホープス、カデット、ジュニアを徹底的にナショナルチームと同じような合宿による訓練計画を持っています。そのホープスの下の小学生も見て、発掘して、そうすると5段階になるけど、そこに集中的に投資したい。協会の役員たちが夕食会をするとか、そういうところでお金を使うのではなく、もっと強化にお金を使いたい。05年からは、オリンピックで金メダルを獲った協会に国から補助金が出る予定なので、いい方向に行くと思います。

 

●――日本では、高校までは一生懸命練習して、レベルも高いけれども、高校を卒業して大学に行くと指導者もいなくなって伸び悩むということが、ここ何十年もの制度的な問題でした。それを破る形で、有望な選手をドイツに送り込んでアミズィッチコーチが指導するというやり方が出てきましたが、韓国では話を聞いていると、かなり一貫した強化ができるのですか。

千栄石 今まではそうじゃなかった。でもこれから、私がやっている限りは一貫した強化をやっていきたい。韓国では大学は勉強するところで卓球はしないところです。日本は大学生でもナショナルチームに選ばれるような選手がいるから、逆に私はうらやましい。全体を引っ張り上げるのは大変でしょうけど、日本では大学も実業団のように卓球をやっているのだから、エリートを選んで協会が強化していくことが可能ですね。できないからとあきらめていたら何もできないから、それをひっくり返してポジティブな考え方で、何ができるのか、そのために何をするのかと首脳部が考えたほうがいいですね。

今、日本全体が「愛ちゃんブーム」になっていて、卓球としたら幸せなことで、ラッキーなことですよ。それを首脳部がそれを卓球の復活のために応用して、活用すればいいですね。韓国から見れば、日本はうらやましい状況です。木村興治さん(元協会専務理事)も頑張っているけども、ほかの関係者もみんなで頑張ってほしいし、韓国と日本で頑張って、中国独占の世界の卓球じゃなくて、これからは、チャンピオンがあっちからもこっちからも出るようになっていかないと、卓球は今後オリンピックでも生き残れないですよ。それに中国選手は世界中に流出している。私も冗談で徐寅生さんに「中国は卓球の世界を植民地化しようとしている」と言うけども、中国選手の海外流出を否定するよりも、まず中国に勝つために考え方を変えないといけない。

 

●――千さんは昔から日本の卓球をずっと見ていますが、日本の卓球に関して、どう考えていますか。

千栄石 私は荻村伊智朗さんとも一番親しくて、夜遅くまで技術論を戦わせたりしたことがあります。偉大な日本の先輩は亡くなられたけど、日本の卓球が昔の50年代から60年代はじめまで世界を制覇していた栄光の時代があります。あとは良い指導者を養成して、現場に積極的に立たせれば可能性はありますね。日本は27万人という登録人口もあるわけで、日本がやってできないことは絶対ない。中国が出てくる前に日本は世界の頂点にいたけど、中国はその日本の戦型や用具、戦術、技術を10年間徹底して研究したからこそ今につながっている。日本には熱心で賢明な指導者が多いのだから、その人たちがもっと卓球を愛することができるような雰囲気作りがとても大切ではないでしょうか。

 

●――これから日本も韓国に追いつき追い越せ、そしてともに頑張っていきたいですね。きょうはありがとうございました。

70歳を越えても、その卓球への情熱は消えることなく、会場でも鋭い眼光で試合を見つめる千栄石会長。韓国チームを、そして韓国選手を幾度も世界の頂点に導いたカリスマ指導者は、「打倒、中国」に燃えている。(2005年3月号より)

 

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