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インタビュー

セカンドキャリアは“神社を継ぐ”。元日本リーガー・中尾優子、故郷の香川で奮闘中

●神道の信念は「物事への感謝」

–——ご実家の神社は国宝なんですよね。

中尾:そうなんです。でも、あまり宣伝というかアピールはしていないので、香川でも知ってる人は少ないと思います(笑)。

 

–——子どもの頃からお父様の姿を見ていたと思いますが、神職はどんなイメージでした?

中尾:父の仕事を見ていて、なんとなく「カッコいいな」というイメージはありました。でも、将来、自分がそういう仕事をするイメージはありませんでしたね。父は宮司ですが、神社だけで生活しているわけではなくて別の仕事もしていて、そちらがメインです。なので、ずっと神社にいるわけではないんです。

 

–——中尾さんは一人っ子ですが、「ご実家を継いでほしい」とは言われなかったんですか?

中尾:私の祖父が早くに亡くなったので、父は20代前半で神社の宮司をやることになり、それがしんどかったこともあって、私には「神社を継いでほしい」とは思わなかったそうです。私が継がないのなら、「他の神主さんにお願いするから無理する必要はないよ」って言われていました。本当に神社のことについては何も言われませんでした。父に言われなかったからこそ、自然と神職を目指そうと思ったのかもしれませんね。

 

–——そんな中で「神社を継ぐ」と伝えた時、お父様の反応は?

中尾:父は「そっか」みたいな感じでした。あとは「やっと引退できる」とも。私に対してはそんな感じでしたけど、人の前で話した時には「本当にありがたいと思っている」と言ってもらいました。私には直接そういうこと言わないタイプなんですよ(笑)。神社も後継者が少なくて、困っているところは多いと聞きます。

 

–——お父様も照れがあるんだと思いますよ(笑)。 実際に神職になってからはどうでしょう。

中尾:大変なこともありますけど、神社に来ていただいた方とお話できたり、楽しいことも多いです。誰でも経験できることではないし、神社の子に生まれたからこそできる経験だと思っています。

 

–——神職に就くうえでの勉強というのはどんな内容なんでしょうか? あまり馴染みがないので、いまひとつイメージしにくいのですが……

中尾:資格みたいなものがあって、私は短期の講習でそれを取りました。授業は座学と実技で、座学では神様や神道の歴史、祝詞などを勉強します。実技は神事での所作などですね。神事での所作は「この場所にいる時はこっちの足から進む」とか、お辞儀にしても「こういう時は15度」、「この時は30度」みたいな細かい決まりがあって、これがすごく難しいんです。伊勢(三重県)で1カ月生活して講習を受けたんですけど、短期間で覚えることがたくさんあるので、結構厳しかったですね。座学も実技もテストやレポートがあって、それに合格しないといけません。

 

–——大学みたいですね。神職の資格にもランクというか、区分みたいなものはあるんですか?

中尾:「階位」というものがあって、講習や実習を受けてステップアップしていきます。実習は指定の神社で受けなければいけません。私は父と同じ階位を目指しているので、もうひとつ階位を上げたいと思っているんですけど、そのための実習がこの1年くらいはコロナで何度も中止になっていて、なかなか受けられない状況です。

 

–——当然、そうやって勉強する中で発見みたいなものもありますよね。

中尾:神社の子なのに本当に何も知らなかったので新鮮でしたね。ゲームとかに出てくる神様の名前が座学で出てきて「あ、そういう神様だったんだ」みたいな感じでした(笑)。

 神道にはいろいろな物事に感謝する精神、信念があって、それを学ぶことで自然と周囲に感謝の気持ちを持てるようになりました。神社の中での所作も、「人がいる時は目立たないように振る舞う」、「神様に背を向けない」とか、すべてに意味があるんです。神道は日常生活にも密接したものなので、普段の生活の中での気づきも多いです。毎日のひとつひとつの行動すべてに意味があると改めて思いますし、原点に帰れる感じですね。

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