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インタビュー

セカンドキャリアは“神社を継ぐ”。元日本リーガー・中尾優子、故郷の香川で奮闘中

●銀行、コーチ、神職、多忙な日々も「やりがいを感じます」

–——銀行で働いて、卓球部のコーチをして、神職も務めての生活ですが、1週間のスケジュールを教えてください。

中尾:平日は夕方まで銀行で働いて、最低でも週に2回は卓球部の練習を見にいきます。土日は神社でのご祈祷や行事に参加して、卓球部の試合や合宿などがあれば、もちろんコーチとしてついていきます。あと、百十四銀行以外にも地元で卓球を教えています。

 

–——多忙ですね……。

中尾:そうかもしれないですけど、充実していますね。エクセディで選手だった頃は午前中だけ仕事をして、午後からは練習させてもらっていたので、規定練習も18時くらいには終わっていました。百十四銀行は夕方まで仕事をして、20時半くらいまで規定練習。その後もみんな残って練習するので、家に帰るのが23時近くになることもあります。そう考えると、前に比べたら忙しいのかもしれないです。

 でも、みんな本当に頑張り屋で、一緒にいると忙しさや疲れを忘れさせてくれるし、やりがいを感じます。神職もやっぱりやりがいが大きくて、神社って、七五三だったり、初宮参りだったり、人生の節目に来ていただくことも多い場所なので、そうした場に立ち会えるのは光栄なことですね。

 

–——百十四銀行の雰囲気はどうですか? 個人的には若い選手が多いイメージがあります。

中尾:みんな大卒1~3年目の選手で、若くて元気で明るいチームだと思います。コーチになる前は、日中はきっちり仕事をしてから練習ということで、選手はモチベーションを維持するのが大変じゃないかなと考えていました。でも、いざ来てみたら全然心配する必要はなかったですね。こっちが「休んだら?」って思うくらいみんな努力しています。銀行だけじゃなく、香川で卓球をやっている方々にもサポートしてもらって、コーチの私が言うのも変かもしれませんが「応援したくなるチーム」ですね。

 

–——昨年の後期日本リーグでは27年ぶりに2部で優勝しましたが、銀行内でもその反響はありますか?

中尾:すごくよろこんでくださって、たくさんの方に「頑張ってたもんね」って言ってもらいました。銀行の全支店に貼るポスターに卓球部が採用されたり、これまで以上に注目してもらっています。選手も意識が変わりましたね。今までは1部に昇格することが目標だったけど、「1部の選手と戦えるレベルにならないと」っていう気持ちを感じるし、ひとつステップアップできたんじゃないかと思います。

昨年の後期日本リーグ女子2部優勝の百十四銀行。今年の前期日本リーグでは26年ぶりに1部で戦う

 

–——コーチとして本格的に指導をするのは百十四銀行が初めてですが、そこについてはどうでしょう?

中尾:やっぱり難しさは感じます。選手によってプレースタイルも、感覚も、体の使い方も全然違うので「これ」っていう正解はないじゃないですか。何かアドバイスをするにしても、ものすごく考えるようにしています。指導というよりは、ひとつの意見として提案する感じですね。私も日本リーグでプレーしていたので、気持ちの部分で選手に寄り添えることはひとつの強みなのかなと思います。

 

–——最後に、今後の目標についてお願いします。

中尾:まだまだ努力が必要ですけど、将来的には宮司としていつも神社にいられるようにできたらなと考えています。百十四銀行にはこうやって関わらせていただいているので、今後もできる限りのサポートをしていきたいですね。神職と卓球、これからもこの2つに携わって生活していけたらと思っています。

 

◆PROFILE

中尾優子(なかお・ゆうこ)

1991年5月4日生まれ、香川県出身。小学6年時に全日本ホープスの部3位。富田高から早稲田大に進み、大学1、2年時には全日学女子シングルスで2年連続3位に入賞。日本リーグ・エクセディでも全日本社会人女子ダブルス準優勝など中心選手として活躍。2018年度をもって現役を引退し、現在は百十四銀行に勤務。卓球部のコーチとして活動しながら、実家の神谷神社で神職を務める。

 

PEOPLEインタビューは卓球王国2021年7月号にも掲載

※最後に、ビックリしたエピソードをひとつ。卓球王国2021年7月号『PEOPLE』ページで中尾さんのお隣のページで紹介した定岡正直さんは、かつて中尾さんのお母様と混合ダブルスを組んでいたことが判明。編集部内でその事実を知っていた人間はおらず、奇跡的に同号、しかも見開きでの掲載となった。それを中尾さんから聞いて、「やっぱり、神様が見てる…!」と思うのであった。

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