卓球王国 2021年2月20日 発売 vol.287
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インタビュー

ドイツでのコーチ生活5年:板垣孝司

 板垣の青森山田中・高時代の教え子である及川瑞基(木下グループ)が、2021全日本選手権を制覇した。ヤマダ卒業後も、板垣は全日本で及川のベンチに入ったこともあり、また昨シーズンまで及川はケーニヒスホーフェンに在籍。長く及川を見てきた板垣は、今回の優勝をどう考えるのだろう。

ブンデスリーガの試合で及川瑞基にアドバイスを送る板垣

 

 「もちろん私もドイツから全日本の試合配信を見ていました。及川が全日本を獲れたのは本人の努力の賜物(たまもの)ですが、関わってきた私にとっても、やはりうれしいですね。及川は中高時代から何でもできて、大きな穴のない選手でした。でも逆に自分のストロングポイントが見つけられず、『最後に何で勝負するのか』というのは当時からの課題でした。

 日本では、相手に攻められても、足を使ってフォアでしのいでいれば勝てていたけど、ドイツではそれが通用しない。180cmや190cmの選手ばかりで、自分が下がったら相手のパワードライブは取れない。1部リーグで生き残るためにははどうすればいいかというのを、ずっと2人で考えていました。

 チームが1部に昇格した時のシーズンでは、及川は負け越したけど、翌シーズンは勝ち越して、勝利数で上位に食い込んだ。対戦相手の動画を見て、フランチスカ、ボル、K.カールソン、カルデラノなど、世界トップ選手一人ひとりの対策を考えて「彼らにどうやって勝つか」を研究した成果だと思います。

 彼の長所で、ドイツでさらに磨かれたポイントは、正確なサービス、台上の強フリックなどいくつもあると思います。特に「台の近くでの足の速さ」があり、3球目で早い打球点で打ち込める点は、ブンデスリーガの他の選手にない長所でしょう。

 そして及川の素晴らしい点は、「相手のストライクを外す」という目を持っている点。全日本では張本智和(木下グループ)とバック対バックのラリーで優位に立つ場面が多く、「及川はバックが強い」と言われていると思います。もちろん彼はドイツでバックハンドが大きく向上したと思いますが、それだけではなく、張本が強打できないバックミドルを突くコース取りがうまく、ストライクを外しながら逆に自分から先にバックストレートを突くことができた。これがブンデスリーガで培った経験だと思います。

 低い身長の及川がパワーヒッター相手にし、どうすれば世界トップクラスの卓球界で生き残っていけるかを常に考えていた結果が、彼の戦術面の巧さに繋がったのだと思います」

全日本初優勝の及川。バックサイドの強さが際立った

 

 ドイツ生活が丸5年になった板垣。チームは赴任早々から2部で2季連続優勝し、1部昇格を果たしている。現在のブンデスリーガの状況、今の思い、そして今後について尋ねてみた。

 「今は2部以下のリーグはストップしており、1部の試合だけが無観客で行われています。プロ選手や、州代表クラスのジュニア選手だけが練習が許されている状況です。ケーニヒスホーフェンのサポーターたちはみんな卓球が大好きな人ばかりで、グループLINEで『卓球を取ったら何して生活をすればいいの!?』というメッセージが飛び交ったりしています。でも自宅に卓球台があって、家族で卓球を楽しんでいる人も多いですね。

 私はドイツに来てちょうど5年が経ったところです。同じ土地に10年いてぶれずにやっていけば、次の方向性が見えてくると、昔から考えてきました。青森山田でも10年目くらいから、選手や親御さんたちの信頼を得られるようになりました。ドイツ生活は6年目に入りますが、4強に入ってプレーオフに出場するのがクラブの悲願なので、引き続き頑張っていきたいですね。

 また、コロナ禍が落ち着いたら、ぜひ日本選手にドイツでプレーしてほしい。海外での生活、練習や試合経験が選手を大きく育てるという確信があります。やはり私は日本が好きですから、日本の卓球を応援したいし、可能な限り選手の力になりたいと思っています」

ブンデスリーガでプレーしていた森薗政崇(青森山田卒業生)と敵チームとして対戦

板垣孝司ブログ

※ PEOPLE板垣孝司 は「卓球王国2021年4月号」でも掲載しています。

板垣 孝司 いたがき・こうじ
1970年8月3日生まれ、山形県出身。埼工大深谷高、中央大卒。三井生命で活躍後、英語教諭に。01年より青森山田学園で吉田安夫監督(故人)のもとでコーチ、13 ~15年には監督を務めた。16 年からドイツ・ブンデスリーガのケーニヒスホーフェンでヘッドコーチを務める