大会初日の5月17日、シングルスに男女4選手、そして混合ダブルスに松島輝空/張本美和が出場した日本チームは、見事に単複5戦全勝。最高のスタートを切ることができた。
世界卓球へのデビュー戦、そして日本チームのトップバッターという重圧をストレート勝ちで乗り越えた大藤沙月。欧州の俊英・レジンスキーの豪打を粘り強くしのぎ、打ちミスから来る集中力の乱れを誘って競り勝った吉村真晴。バック表のレシーブが冴え渡り、気力充実のプレーを見せた伊藤美誠。いずれも素晴らしいプレーを見せたが、今日の「殊勲賞」はやはり篠塚大登だろう。
まだ大会初日なのに、試合後のミックスゾーンに声を枯らして現れた篠塚。パリ五輪での悔しい敗戦から、「相手に圧力をかけるためにも、感情を表に出して戦うことも大事」という教訓を得て、ゲームポイントを取られた場面でも気迫あふれるプレーを見せた。
裏面打法を駆使する右ペンドライブ型の薛飛に対し、ベンチの岸川聖也監督と共有した戦術はシンプルだった。サービスはロングサービスが主体、レシーブは長いツッツキが主体、そして薛飛のドライブを両ハンドのカウンターで狙い打ち、優位な形でラリー戦に持ち込む。
長いツッツキを薛飛に打たせ、果敢に狙い打った篠塚
薛飛の両ハンドドライブは安定していたが、威力と変化を欠いたか
薛飛のフォアドライブと裏面ドライブは安定性はあるが、先輩の王皓(現・中国男子監督)のような球質の高さや、横回転が加わる変化は少ない。また、バックサイドのボールに回り込んでフォアで打つ強打も少ない。篠塚はフォア前へのサービスに対し、薛飛のバックサイドへ長いツッツキを送り、裏面ドライブを飛びついて狙い打つフォアカウンターが冴えた。ロングサービスも、競った場面でミスが出るのも承知で、積極的に出し続けた。
0-2の苦しいスタートから、開き直るようにシンプルな戦術で戦えたのは、パリ五輪後の成長の証明。以前はパワー不足も指摘されたラリー戦でも、互角以上に勝負できていた。「日中戦」の第1ラウンドでの篠塚の勝利は、日本チームに大きな勇気を与えたはずだ。
マッチポイントの場面では、それまでの鬱憤を晴らすようにフォア前からチキータを振り抜いた
勝利を決めたあと、少し間をおいて大きく吠えた篠塚。その時の心境を、「かなり点数が離れていたし、本当に『気持ちいい』という感じですね」と振り返った。2日目以降も、日本チームの「気持ちいい」勝利が、まだまだ見たい!
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