●−−次はひとつのヤマだと大会前に思っていた森薗戦。4ー1だったけど各ゲームは競っていた。
水谷 組み合わせを見た時に一番きついかなと思ってました。グランドファイナル(12月/バンコク)では0ー3で負けていてひっくり返した相手で、そこで一度やっていたのは大きいですね。2年前の全日本でも4ー2くらいの試合をしている。今回は1ゲーム目7ー1でリードしていてそこから追いつかれている。でも、その時は油断していないし、焦らなかった。集中力を切らさずにやれたし、あの試合が一番良い試合だった。評価できる試合だし、相手も調子が良かったと思う。
●−−次の準々決勝は吉村戦(愛知工業大)。3年前の決勝で負けた相手です。
水谷 3年前に負けてからも何度かやっていて、(11月の)ロシアオープンでも4ー2で勝っていて、何となく戦い方はわかっていた。準々決勝から台が2台になって、卓球台のバウンドが全然違うんですよね。照明のせいなのかわからないけど弾みが違う。自分は小さく出している感覚なのに8割くらいは大きく台から出て、レシーブから打ち込まれた。嫌な感じでした。1ゲーム目、10ー7から10ー11になったけど、また逆転して13︱11で取れた。10ー11で吉村のウエアに当たってからボールがネットインで入ってきた。審判はそれに気づかなかったけど、ぼくが指摘したら吉村も「当たった」と言ってくれた。彼もフェアだった。作戦を途中からガラッと変えたのがうまくいきました。
●−−最終日、準決勝は松平健太選手に勝って上がってきた岸川選手が相手だった。打ち慣れている岸川選手は嫌な相手だと以前から言っています。
水谷 今回は苦手な感覚は少なかった。大会に入ってから3日間ほど一緒に練習をしていたから慣れていた。ほぼ自分のイメージどおりの戦い方ができました。
●−−競り合った笠原戦はフィッシュなどでしのぐ展開が多かったのが、試合が進むにつれて台の近くでプレーすることが多くなっていった。準決勝、決勝でもフィッシュやロビングでしのぐ場面が本当に数えるほどしかなかった。
水谷 自分ではあまり意識していない。台につこうと思っているわけじゃない。日本人はボールの威力がないから前で十分できる。下がるところまでもっていかれなかった。
●−−以前なら1本ブロックしてしまうようなボールを、今は前で伸ばしたり、カウンターをするようになっているから台から下がらない。
水谷 練習でそれを意識していることもあるし、プラスチックボールになってからボールの回転量も減って、今のラバーの特徴を生かしやすい。『(テナジー・)64』は回転量の多いボールに対してカウンターは難しいけど、プラスチックになってからは回転量が減ってカウンターがやりやすくなったので、打たれてから劣勢になることは少なくなりました。
●−−決勝は神選手(明治大)でした。
水谷 頑張っていた後輩の神が上がってきてうれしい半面、嫌な気持ちもあった。ただ反対側のブロックから丹羽が来たら、分が少し悪い面もあるから嫌かなという程度で、相手は誰だろうとあまり気にしない。
大会前に神とは練習もしてなかった。明治大にいる時には彼とはよく練習していた。彼はぼくのサービスをレシーブするのを苦手にしていたし、久しぶりにやるのでサービスが効くなと思っていた。ところが、自分が効くと思っていたサービスと実際に試合で効いたサービスは全く逆でした。今までは普通のサービスを出すとチキータされていたので、逆の回転を出したら、そのサービスをうまくレシーブされた。逆に普通のサービスが効いたし、チキータされなかった。
ぼくのイメージでは神はチキータからバックをどんどん振ってくる感じだったけど、やった人から聞いたらほとんどオールフォアの感じで打ってくると言われた。ぼくはチキータから攻められたら嫌だから、そのほうが良かった。対策も立てやすかった。レシーブさえできれば問題ないと思っていました。
●−−なぜノーランカーだった神選手が勝ち上がってきたのだろう。
水谷 (大島戦で)0ー3から逆転勝ちとかをやっている選手はトーナメントでは強いんですよ。勝ち上がりやすい。
●−−優勝を決めた瞬間のポーズも今回は地味だった(笑)。大会前は大本命だったのに、本人と周りの見方のずれは何でしょう。
水谷 自分でも優勝できると思っていなかった。周りが思っている以上に、優勝することは困難。やっているほうからすると毎回難しいんですよ。応援している人とか、周りの人には「優勝できると思っていない」とは言えないじゃないですか。本音は、優勝できると思っていない、良いプレーをしたいだけ。ただルールが変わった時の自分は強い。今までスピードグルー禁止や補助剤禁止の後の全日本でも勝っている。プラスチックボールになった今回は、そういう自信がありました。
●−−終わってみたら、やはり笠原戦が大きなポイントだった。
水谷 そうですね。あそこで簡単に勝っていたら、その後の試合も同じようにはなっていないと思う。その試合で10ー5から追いつかれたゲームを何とか勝って、森薗戦や、吉村戦でも同じようにリードしていて追いつかれて、何とか勝つというゲームをしていった。リードしても気を抜かないというゲームができた。
ひとつ言えるのは、去年も今年も全部1ゲーム目を取っていること。笠原戦を除けば、去年も今年も全部3ー0でリードしている。邱さんに、スタートが遅いから最初から飛ばしていけと言われていますから。
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