卓球王国 2022年6月21日 発売 vol.303
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インタビュー

「成績でしか評価されないジレンマ」「何がしたいの? 『卓球だよ』って」異能の男・西東輝は卓球をとことん“考える”

●人を変える、人に影響を与えるのが指導者

---指導者になりたいっていう気持ちを持ち始めたのはいつ頃なんでしょう?

 きっかけは実践の渡辺(健一)先生ですね。渡辺先生を見て、指導者になりたいって思いました。中学を卒業する前の最後に日誌に「将来は指導者になりたい」って書いたんです。

 

---じゃあ、中学生の時にはもう指導者が目標だったわけですね。

 そうですね。でも、中学生なので漠然としていました。「先生になりたい」じゃなくて「指導者になりたい」でしたし。中学生になったばかりで、「あまちゃん」だったぼくを、渡辺先生が変えてくれたと思っていて。人を変えること、人に影響を与えるってスゴいことだなっていう気持ちはありました。先日、結婚式で8年ぶりに渡辺先生にお会いできて、お話ししただけで涙が止まらなくて。ぼくの原点は渡辺先生ですから。大きな夢を叶える土台を作っていただきました。

 

---大学を卒業し、函大有斗高で目標だった指導者になったけど、また石川に戻ってきましたね。

 高校では契約社員で、職員として寮監督をしながら指導していました。教員に空きが出たら教員になれたんですけど、空きがなくて。他の学校からもオファーがあったんですけど、結果も残せていないのに1年でいなくなるのも違うだろと思って、2年目にインターハイの学校対抗に出ることができたんです。でも、翌年も空きがなくて、教員になるのは難しいかなと思って、あれこれ動いていた矢先に縁あって清水スポーツで働くことになりました。

勤務する清水スポーツは今年3月にリニューアルオープン

 

---でも、これだけ長く石川で過ごしたら、愛着みたいなものも深くなったんじゃないですか。

 もう石川でしか暮らせないんじゃないですかね(笑)。人からも言われるんですけど、ぼく、人にはなかなか理解してもらえないというか、良くも悪くも考え方が少し変わっていて。でも、石川には、ぼくが無茶なことをやろうとしていても「西東らしいな」って思ってくれて、応援してくれる雰囲気があります。人が良いし、そういう風土がある。ぼくを理解してくれる人が多いですね。それが石川の卓球のために頑張りたいって思わせてくれる理由になってます。

 

---初対面で失礼かもしれないですけど、「変わってる」っていうのはなんとなく…(笑)

 自分では変わってるとは思わないんですが、人がそう評するのでそうなんでしょうね。でも、悪い気はしていません(笑)

 

●やっているのは「卓球」だけ

---清水スポーツのホームページのプロフィールに「卓球に人生を捧げてます」っていうコメントがあって、そう言い切れるのもスゴいなと思いました。

 やっぱり父親の影響が大きくて。憧れの人って、たくさんいるんですけど、父親が一番。父親も卓球をしていたんですけど、実家の建具屋を継ぐために、若くして卓球を諦めないといけなかった。その卓球への情熱をぼくに託して、すべて注いでくれました。そして、ぼくが家業を継がずに卓球で生きていくことを許してくれた。父親にこれだけ愛情を注いでもらったんだから、卓球で何か成し遂げたいっていう気持ちが強いですね。

 

---当然、これからもそういう人生が続くわけですもんね。

 ぼくの知らない卓球の魅力って、まだまだあるはずなんですよ。それを発見していくのがおもしろいし、そういう人生なのかなとは思います。指導するカテゴリーの広さ、目的もそうですけど、そうやっていろんな角度から卓球に触れているからこその発見もあるのかなと思って。

 

---そうなんですよね。卓球との関わり方って、本当はたくさんあるわけで。

 卓球ショップで働きながら、コーチもやって、講習会もやって、国体の監督もやって、あれこれ活動しているように見られますが、ぼくの中では1個なんですよ。全部「卓球」なんですね。だから仕事は「卓球」ですって。すごくシンプル。逆に「卓球しかしてない」って感覚で。

 

---ぼくも仕事柄、「やっているのは卓球だけ」っていう考え方はよくわかるし、素敵だと思います。見る角度、触れる角度によって感じ方が違うだけであって。

 中途半端に見えることもあるかもしれないし、「何がしたいの?」って言われたこともあるんですけど、「卓球だよ」って(笑)。たとえば、学校の先生だってそうじゃないですか。授業をするだけじゃなくて、担任としての仕事もあれば、生活指導の仕事もあるし、部活の顧問もあるし、全部まとめて「先生」なわけですから。

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