卓球王国 2024年12月20日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
今野の眼

なぜ日本だけがパリ五輪選考会をやるのだろうか。選手に与えられるのはお金ではなく、選考ポイント

あまりにタフなスケジュール。
選考会という名のもとのこの大会は、選手、観客、テレビ、どこを向いていたのか!?

中国は国家チームが戦略的にパリ五輪のメンバーを決めていく。国内競争を行いながらも完全な自由競争ではない。世界で勝てる選手を中国協会は意図的に選ぶ。一方、アジアやヨーロッパで、日本のように国内選考会をやる国の情報は聞こえてこない。WTTの試合数も増えてきて、それによる世界ランキングで自由競争をさせる方針がほぼ固まっている。

ヨーロッパなどでは選手が世界ランキングで得た五輪出場権、もしくは予選を通過して得た出場権を協会が拒否し、別の選手を送り込むとなると裁判になるケースも多い。ただし、五輪に選手を送り込むのは、選手本人でもNF(各国・地域の協会)でもなく、NOC(各国のオリンピック委員会)である。

日本だけが激しい国内選考会や特定のTリーグの勝利ポイントを選考対象にするという「特殊な選考方法」を選んだのは、昨年(2021年)の東京五輪直後、ワールドツアーとも言われるWTTの大会がコロナ禍でうまく機能せず、選手が自由にツアーに出られない、世界ランキングが正確なものではないという日本卓球協会の判断があったからだ。

今年3大会目の国内選考会となったTOP32船橋大会

しかし、今年に入って、トップ選手たちは10大会近くWTTに参戦し、世界ランキングも正確なものになっている。しかし、日本卓球協会は方針を変えず、選考基準も変えない。一部のファンからは「国内選考会の放映権をテレビ局と契約しているから後戻りできないのだろう」と揶揄されてしまう。

今回の「全農カップTOP32船橋大会」でも、7ゲームスマッチを休息時間をあまり取らずに1日3試合行うというハードなタイムテーブルを強行。選手たちは疲労困憊の様子だった。昨日も朝10時にスタートした試合が全部終わったのは夜の9時半。決勝などはテレビ向けに演出もされているが、12時間近く会場にいた人は素晴らしい試合を見ることができただろうが、この大会は選手を向いているのか、観客を向いているのか、それとも単純にテレビの向こうの視聴者を向いているのかがわからないものだった(もちろん卓球が露出するメリットは大きいのだが)。

船橋大会の女子シングルス決勝で、早田ひなを4ー2で下した平野美宇。テレビでの中継は話題を集めたが、スケジュールは相当にハードだった

聞けば、スポンサー冠大会なのに選考会という名のもとに賞金はゼロ、選手の移動と宿泊費は自己負担だという。疲労困憊の選手たちに与えられたのは選考ポイントと名誉(?)だった。

こういうタフなスケジュールをこなすのも強化になるという協会の考え方なのか。自費参加が嫌なら棄権すれば良いという姿勢なのか。選手たちは消耗品ではない。協会にはスポンサーマネーも入場料収入の一部も入るのだろうから、「選手ファースト」で行ってほしかった。

関連する記事