卓球王国 2024年11月21日 発売
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今野の眼

37年間の「赤・黒」から「色の自由化へ」。卓球の何が変わっていくのか

試作品で様々な色のラバーが作られた

新たな在庫を心配するメーカーとショップ。

カラーラバーは新たな市場の起爆剤になるだろうか

 

現時点では、すべての卓球メーカーがこぞってカラーラバーを発売する動きはない。

それは在庫の問題があるからだ。たとえば日本で人気のニッタクの『G-1』にさらに4色追加するとしよう。スポンジの厚さは「中」「厚」「特厚」の3種類なので、4色で厚さを揃えたら、それだけで12枚増えることになる。新製品で4色に赤と黒を加えた6色を揃えると、一度に18枚を揃えることになる。

そうなると卓球ショップでは在庫を多く抱える問題に直面するし、同じことは卓球メーカーにも言える。当面は、どこかのメーカーがカラーラバーを出したら、日本のユーザーがどういう反応をするのかを注意深く観察しながらラインナップを揃えることになるのだろう。

 

カラーラバーでは、おそらくスポンジは白か、白に近い明るいスポンジになるだろう。というのも、トップシートは半透明なので、下の色が透けてしまう。もしブルースポンジにピンクのトップシートを貼ると、色は混ざり合いながら濃い目のパープルに見えてしまうからだ。(濃いめのパープルや濃いめの赤は、片面の黒色との識別が難しいので使用不可)

たとえば、XIOMの『VEGA』や『OMEGA』というラバーがある。ブラックスポンジが「売り」だが、トップシートは特殊製法で半透明ではなく、下のブラックスポンジが見えないようなトップシートにして赤いラバーにしてある。これがブラックスポンジで半透明の赤いトップシートだと、エンジ色になり、ルール上、使用できない暗色ラバーとなってしまう。

 

卓球選手は視覚効果によって心理が左右される。

「黒いラバーのほうが回転がかかっている」「黒いラバーのほうがボールも重い」「赤いラバーのほうが弾力のあるボールに見える」という感じ方をする。同じ『テナジー』でも、黒い『テナジー』で打ったボールと、ピンクの『テナジー』で打った場合、多くの人が黒い『テナジー』で打ったほうが威力のあるボールに感じるかもしれない。これは視覚効果による人間の感じ方の相違だ。

昔から卓球選手は「中国ラバー=粘着性=回転がかかる」という固定観念を持っている。たとえば4月に発売した紅双喜の『キョウヒョウ3国狂ブルー』は黒色のみの製造・販売だ。

しかし、ラバーの製造段階で、わずかな顔料がラバーの性能に与える影響は非常に小さい。機械測定をしても、たとえば、『黒いテナジー』と『ピンクのテナジー』では同じ数値になるはずだ。

4色増えたからといって、卓球選手がすぐに新色に飛びつくとも思えない。しかし、女子選手などはラバーがピンクやグリーンになって、あえてそのラバーの色にあったウエアを選んだりする楽しみが増えるかもしれないし、単純にピンクやブルーのラバーのほうが可愛らしく見えるかもしれない。

 

気の早い関係者やラバー製造会社は「これで卓球市場が広がり、消費が増えるかも」と期待するかもしれないが、4色増えても世界中の卓球選手が使用するラバー枚数は変わらない。発売の初期段階で、メーカーやショップが在庫を増やすだけのことで、その分、納入枚数が増えるだけだ。

新色ラバーだけでなく、どうやって卓球の競技人口を増やすのかということを日本卓球協会やITTFは考えるべきなのだ。

ただし、ラバーのカラフル化が進めば、それが卓球のホビー市場に影響を与え、卓球をホビーとして楽しむ人が増えることに期待したい。町の卓球場を訪れる「ちょっとピンポンを楽しむ人」にはカラーラバーをススメたくなる。

特に、最近流行っているキャンピングのようなアウトドアで、折りたたみの卓球台を積み込み「カラフルルなラバーを使ってアウトドア卓球」をぜひ推進してほしいと願っている。風が吹いても何のその。その風を利用しながら楽しむアウトドア卓球はどうだろうか。想像するだけで楽しくなる。

(卓球王国発行人 今野昇)

 

スッチ(ルーマニア)のピンクのウエアにピンクのラバー。たしかに華やいで見える

 

2012年ロンドン五輪前にイングランドで行われた「PING」というイベント風景。キャンピングではないけれども、なんとも良い感じですね。卓球台はフランスの「コニヨール」。雨にぬれても大丈夫な全天候性

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