卓球王国 2021年4月21日 発売 vol.289
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XIOMの逆襲。XIOMの野望

<卓球王国別冊『卓球グッズ2018』より>

 

XIOMの逆襲。XIOMの野望

XIOM Attack

 

韓国に作られたXIOMの工場「ファクトリーO」。まるで美術館を思わせるような外観だ

 

ファクトリーOのエントランス。このセンスの良さがXIOMのデザインに通じている

 

大ヒットラバー『ヴェガ』が発売されてから、

もうすぐ10年が経とうとしている。

この間、多くのメーカーを刺激したXIOM(エクシオン)。

『ヴェガ』を意識した商品も数多く発売された。

上級者用のラバーのスタンダードが『テナジー』ならば、

ボリュームゾーンの初・中級者のスタンダードラバーは『ヴェガ』だった。

2017~18年に『ヴェガ ツアー』と

『オメガⅦ』を立て続けにリリースするXIOM。

その攻勢の裏に潜んでいる

XIOMの野望を探ってみる。

 

文=今野昇

写真=江藤義典・中川学

 

オメガⅦでプロとアジアの投入。

そしてヴェガツアーの破壊力

 

2009年に『テナジー』(バタフライ)へのカウンター商品としてリリースされ、大ヒットしたXIOM(エクシオン)の『ヴェガ』。ヒットした理由は、テナジーのようなスピン系テンションのラバーを当時3千円台の価格で発売し、その性能と価格が見事に市場にマッチしたためだ。

『ヴェガ』の大ヒットはXIOMのマーケティングの勝利だった。スピードグルー禁止の後に一気にユーザーを引き寄せた『テナジー』(当時の本体価格は6000円)に対抗し、安価で似た性能の『ヴェガ』(当時は3500~3800円)をリリース、その後に 『ヴェガ』の上位機種の『オメガⅣ』『オメガV』を出すなど、戦略的な商品構成とタイミングだった。商品そのものも、卓球界で初のブラックスポンジで従来のラバーとの差別化を図り、「ブラックスポンジはXIOM」という印象を強く与えた。宣伝広告も斬新で、ビジュアルイメージはいつも強烈だった。

さらに当時のXIOMの日本販売代理店だったヤマト卓球(現VICTAS)にはドイツラバーがなかったために、ヤマト卓球の営業力を最大限に生かし、販売された。つまり、XIOMはユーザーマインドを動かし、かつヤマト卓球経由でショップマインドを動かしたブランドとなった。

09年に『ヴェガ』が発売された後、他社からも類似した商品、つまりリーズナブルなスピン系テンションのラバーは多く出された。それらの商品にとって、スタンダードラバーが『ヴェガ』となった。つまり『ヴェガ』が初・中級者市場の標的となったのだ。

それらの販売戦略、マーケティングで陣頭指揮を執っていたのは、XIOMのフィリップ・キム社長だ。ソウルの名門大学、延世大学を卒業後、アメリカの大学でMBA(経営学修士)を取得。その後、アメリカの企業や韓国の外資系企業の財務畑を歩みながら、自身の父の会社、韓国のスポーツメーカー『チャンピオン』を継承した。同社は1976年に創業し、1988年のソウル五輪では公式卓球台となり、卓球以外にもスケート競技のシューズやウェアなどを手がけていたが、後にその部門を売却し、卓球に専念した。

2004年には韓国卓球界でホビーマーケットに強い『チャンピオン』と別に、競技者向けの『XIOM』というブランドを立ち上げた。

また04年のアテネ五輪金メダリストの柳承敏(韓国)を電撃的にバタフライから引き抜き、06年に契約を結び、関係者を驚かせた(のちに柳承敏はバタフライと再契約し、現在はITCと契約)。かつて韓国卓球市場の80%近くを占めていたのはバタフライだったが、XIOMは韓国の国内市場でも攻勢に転じ、16年時点で、60%ほどのシェアを獲得するまでに成長した。

数多ある卓球メーカーの中で、フィリップ・キム社長のマーケティングの手腕は傑出している。財務畑という数字への強さと、建築好き、デザイン好きの一面をあわせもち、商品開発からデザイン、マーケティング、プロモーションまでを一気に牽引する。

 

卓球界のマーケティングガイ、XIOMのフィリップ・キム社長