卓球王国 2021年6月21日 発売 vol.291
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XIOMの逆襲。XIOMの野望

2018年、XIOMはアグレッシブに

新商品をリリースする

 

今年、XIOMはかつてないほどアグレッシブな展開を見せる。

まずは看板商品と言える『ヴェガ』シリーズとして、『ヴェガ ツアー』と『ヴェガ DEF』が新発売された。これで『ヴェガ』には13のラインナップが揃った。選べるうれしさと選ぶ悩みが同居するような『ヴェガ』シリーズだ。

『ヴェガ DEF』はカットマン用のラバーだが、『ヴェガ ツアー』は独特の開発方法論とも言える「サイクロイド技術」を適用し、『ヴェガ』シリーズの中では最強のラバーを作り上げた。「リーズナブルで高性能」が『ヴェガ』シリーズの形容詞だったが、この『ヴェガ ツアー』は5000円(本体・当時/現税込4950円)という価格をつけた。これは『ロゼナ』(バタフライ)や『ファスタークG-1』(ニッタク)という人気商品に対抗する中級者用のハイスペックラバーであることは明らか。編集部内での試打でもこの『ヴェガ ツアー』の評価は極めて高い。

XIOMの大ヒットラバーの『ヴェガ ヨーロッパ』(当時本体4000円)で中級者の仲間入りをして、さらにレベルアップした人が『ヴェガ ツアー』を使っても、十分に満足できるラバーになっている。スピードを出せて、弧線もしっかりと出る特徴がある。

さらに17年12月から18年の夏にかけて、XIOMは『オメガⅦ』シリーズをリリースしている。『オメガ』シリーズはローマ数字を使うがオメガⅤ(5)のあとはⅥ(6)を飛び越えて、Ⅶ(7)の発売となった。しかも、XIOMラバーの中で最も高い7000~7700円(当時・現すべて税込7,700円)という価格をつけた。これは店頭価格では5~6千円台で販売される。8000円弱の『テナジー』ほどではないが、価格的にはそこを意識したのかもしれない。当然、ターゲットは上級者のゾーンだ。

まず第1弾としてリリースしたのは『オメガⅦ ヨーロ』だが、スポンジ硬度は42・5度で軟らかく、ミート打ちでの評判はいいが、上級者は物足りなさを感じるかもしれない。第2弾は1月に発売された『オメガⅦ プロ』で、スポンジ硬度は47・5度。プロという名前の割にはまだマイルドな打球感になっており、やはり上級者のフォア面では物足りなさがあるかもしれない。

そこで急きょXIOMは3月発売予定だった『オメガⅦ アジア』のスポンジ硬度を45度から52・5度に変更し、フォア面でも使えるスポンジ硬度として発売も7月に変更した。これは相当に威力とコントロールで期待できる。さらに、8月にはプロ選手仕様で、スポンジ硬度55度の『オメガⅦ ツアー』(税込7700円)をリリースする。

これらはトップシートは同じで、スポンジ硬度を変えている。52・5度や55度のスポンジというと相当に硬いイメージを持つが、試打した人の感想ではそこまで硬くないという印象を持つようだ。それはトップシートのゴム質や粒の形状や構造と関係するのだろう。

 

「サイクロイド」という新しい性能を

拡大させる開発方法論

 

XIOMは『ヴェガ ツアー』で中級者のボリュームゾーンを狙い、今回、さらに『テナジー』がひとり勝ちしている上級者ゾーンに、『オメガⅦ』シリーズで勝負を挑もうとしている。

ちなみに『オメガⅦ』での広告イメージはクネクネとした黒青色の物体。見ようによっては蛇のウロコにも見えて、気持ち悪さを抱く人もいるかもしれない。XIOMに聞くと、これは蛇ではなく、黒いバネで『オメガⅦ』の特徴である、「技術の連結性」をイメージしたものだと言う。

『ヴェガ ツアー』のビジュアルイメージの金色のスプリングと言い、『オメガⅦ』の黒のバネと言い、一見何の意味も持たないが、視覚に引っかかる広告を展開するXIOM。選手を使ったり、スマートなラバー広告を展開する他社と、完全に一線を画している。

本来はこの手の上級者ラバーというのは契約選手を前面に押し出し、「トップ選手が使っている高性能ラバーだから、試合で勝てます、安心して使ってください」という路線で売り出すのが常だが、XIOMはあえてトップ選手を使わず、独自のプロモーションで挑戦しようとしている。

今回新たに「サイクロイド」というキーワードを用いたXIOM。『ヴェガ ツアー』や『オメガⅦ』は「サイクロイド」を使って製造されたと言う。この「サイクロイド」をフィリップ・キム社長はこう説明する。

「卓球のラバーには、材料としてのゴムの生かし方、トップシートの粒の形状・密度、スポンジの製造という大きなくくりがあるが、ドイツの工場には何千種類ものサンプルデータがある。そのデータを基にしたラバーのデータベースを作り、そのデータを多元的に解析したのだ。これはデータマイニング(Data Mining)と言われる作業で、それをコンピュータに深層学習させ(ディープラーニング)、ラバーを作り上げようとした。その解析、学習したデータ数は何億件にのぼった。

つまり、工場は累計で今まで何千種類のサンプルを作ってきた。そのうちのA1というサンプルがあるとしよう。A1=A1ゴム配合+A1粒の形状・密度+A1スポンジなのだが、そこにA2ゴム配合+A1粒の形状・密度+A1スポンジや、A1ゴム配合+A2粒の形状・密度+A1スポンジというようなシミュレーションをコンピューター上で行っていく。実際に作るわけではないが、コンピュータ上で様々なバリエーションを作っていく。その組み合わせで何億という数のラバーサンプルの数字がコンピューター上ででき上がっていく。これがまさにビッグデータを使ったディープラーニング(深層学習)なのだ。

これらの開発方法論を『サイクロイド』と名付けた。その着想のもとに最終サンプルのためのアルゴリズム(最適なやり方)を追求したのだ。そのためにテストと分析を繰り返し、ビッグデータを積み重ねていった」

何やら難しい説明をフィリップ・キム社長は熱く語るのだが、実際に選手がラバーに求めるのはスピードや回転、コントロール、ボールの食い込みや球持ちだろう。

「『オメガⅦ』の特徴は、鋭い弧線を描くスピードボールなのだ。放たれるボールは明らかに速いが、速いだけではオーバーミスをするし、直線的に飛ぶことはミスを誘発する。しかし、『オメガⅦ』のボールは直線的に飛びながらも相手コートのエンドライン付近で鋭い弧線を描き、相手コートに入っていく」(フィリップ・キム)。

 

「VEGA」以降、XIOMだけが採用しているブラックスポンジ