戸上が行っていた送球に変化をつけた多球練習について、フーコーチは「戸上は打球点が早く素晴らしいスピードを持っていて、直線的で速いラリーには強い。でもスローなボールや変化のあるボールが来るとタイミングが狂ってミスしてしまう。これは戸上だけでなく日本の選手に共通する課題」と話す。
さらに「諸外国の選手に比べ、日本の選手は緊張しやすいと感じる」とも語る。実際、戸上もデビュー戦では前日から緊張してしまい、「試合が始まっても硬くなって自分のプレーができなかった。世界選手権でもあそこまでじゃなかった」と振り返っている。
だが無理もないだろう。実際に見るブンデスリーガは会場がコンパクトでコートとスタンドの距離が近く、選手と観客の一体感が魅力だが、新参の選手にとっては目の肥えた熱烈なサポーターが「お手並み拝見」とばかりに自分を品定めしているように感じるはずだ。戸上もデビュー戦を「経験したことのない異様な雰囲気」と表現していた。
しかし、12月12日のグレンツァオ戦、16日のザールブリュッケン戦を経験した戸上はかなり会場の雰囲気に慣れ、現在リーグ2位のザールブリュッケン戦ではエースとして2点起用されて、第2マッチでは神巧也にゲームカウント3-1で勝利。
第4マッチの強敵ヨルジッチには1-3で敗れたものの、フーコーチとのレシーブ練習の成果や、今年3月にヨルジッチにフルゲームで惜敗したWTTシンガポールスマッシュを踏まえたミドル攻撃などでポイントを重ねる成長を見せた。
「自分の弱点を見つめ直しながら課題に取り組んで、それを緊張感のあるブンデスリーガの舞台で試せる経験はそうできない。まだまだ自分のプレーを出し切れていないので、ありったけの力を出し切って自分の存在価値をアピールしたいです」(戸上)
戸上は12月22日のノイ・ウルム戦に出場予定で、これが年内最後の試合となる。そして、ブンデスリーガはこの一戦をもってシーズンを折り返す。
文・写真=高樹ミナ(スポーツライター)
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