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インタビュー

大竹庸介「部活が私のやりがい。生徒も楽しく 練習したりすると、抜け出せないですね」

坂戸西高の練習風景

 

「最初の5年間は怒ってばかりの指導でした。

でも、これではダメだと思い、

生徒たちとたくさん話をするようにしました」

 

ーー去年の大会のない時期は部活動はどうしていたんでしょう?

大竹 休校の時期は全く練習はやれませんでした。私は生徒たちに手紙を書いていました。7月に3年生の引退試合をしました。普通の登校に戻っていましたが、週2、3回、1回90分以内でやっていました。10、11月くらいである程度は戻っていました。

 

ーー卓球をやりたい子どもたちにとってはとても辛い時期でしたね。

大竹 「またできないんですか」と子どもたちには言われました。去年11、12月で大会があったけど、勝ち残りは1月にやりますと言っていたのに、中止になって、本当に悔しかったですね。うちの子どもたちの中には人の試合を見たり、応援するのが大好きな子がいて、試合が見られないとか、先輩たちの気持ちが後輩に受け継がれないのが辛かったですね。「県大会の審判を手伝って」と言うと、「県大会のプレーを見たいです」と喜んで手伝ってくれる子もいます。

 

ーー引退試合では先生も飛び入りで参加したそうですね。

大竹 普段は参加はしないんですが(笑)、先生が出たほうが面白いと生徒たちに言われて出たんです。弱いけど、奇跡の勝利で、保護者の方も来ていて、楽しい1日を過ごしました。

 

ーー今、坂戸西高は部員は何人ですか?

大竹 男子は30人、女子が14人ですね。新入生もコロナと関係なく、増えてきてました。男女とも5月の関東予選では男女ともベスト8でした。

 

ーー公立校に行くなら坂戸西で卓球をやる、という子もいるんですか?

大竹 そう言って入ってくる子もいます。県で活躍していた中学生から初心者もいる部活です。

 

ーー大竹さんは失礼だけど、温かい感じだから、「あの先生は面白い」と言われたりするでしょ?

大竹 「よく挨拶をしてくれる先生」と言われています(笑)。練習試合をたくさんしてきたので知っている子どもも多いんです。私も他校の先生方にやさしく卓球を教えていただいたし、生徒たちが教えてくれたからこそ、今の自分があります。

 

ーーあまり生徒を怒るような感じには見えませんね。

大竹 最初の5年間は怒ってばかりの指導でした。でも、これではダメだと思い、生徒たちとたくさん話をするようにしました。みんな頑張っているので卓球の勝ち負けでは怒らないけど、プレー以外の挨拶ができていない時とかは怒ります。

 

「部活動があると、

その子の本質的な面を見ることができて、

それが面白いです」

 

ーー公立校の顧問の先生とかはなかなか練習に顔を出す先生も少ないように聞きますけど

大竹 進路指導になると受験期は(時間的に)きついです。普段は7時まで練習なんですけど「最後の30分は必ず見に来るから」と言っています。でも、部活に行きたすぎて……どうやったら行けるんだろうと。部活に行くことを考えたら、仕事の効率も上がりました(笑)。効率が上がったら、4時くらいから卓球場も行けるようになりました。

大学の合唱部で一生懸命をやることがどれだけ大切かを学んで、卓球部の活動で一生懸命やろうと生徒たちと話をしていたら、この坂戸西高の卓球部のみんなが応えてくれるんですね。それがあって、部活が私のやりがいになったし、自分ものめり込んで、生徒も楽しく練習したりすると、抜け出せないですね。

 

ーーそれが先生冥利に尽きることかもしれないですね。昨今、部活動というものに、先生は業務が大変になっているし、学校スポーツではなく、社会体育に目が向けられている話もたくさん聞いてきました。部活動の学校での存続の意義が議論されている中で、大竹さんのような人がいると救われますね。

大竹 本校は他の部活動も盛んなのですが、学校の授業だけを教えていると勉強面でしかその子を測ることができない。部活動があると、「この子は周りが見えて、ほかの子に声をかけられるんだな」とか「裏でコツコツ卓球ノートをつけていたんだな」とか、その子の本質的な面を見ることができて、それが面白いです。どうやって部活動の中で子どもたちが成長していって、卒業まで持っていけるかを考えると、部活動にはやりがいを感じます。

長時間練習とかで練習を押し付けられると生徒たちも嫌がるし、苦しくなるので、今の時代はメリハリをつけることが大事ですね。まだヨーロッパのように社会体育としてのクラブ活動も整備されていないので、部活動を学校の先生がポイントを絞ってやるべきだと個人的には思います。

 

ーー卓球の部活動が楽しみで学校に来るような子もいると思いますが、今はコロナ禍で子どもたちも大変ですね。

大竹 はい。卓球部の中には卓球をやりたくて学校に来るような子もいるので、もう少し勉強をさせなきゃという思いもあります(笑)。

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