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インタビュー

四カ月のつもりが四半世紀。強豪チームを陰で支える「トンさん」の指導者人生

−もともと青森山田に来たのは、ドイツに行く前の短期間の予定だったわけですが、ドイツに行くことはなかったんですね?

 そうですね。8月までという約束だったんですけど、ちょうど同じ上海市チーム出身で、青森山田に留学生で来ていた妻(華崎麗/中国名:鄭琦)に出会って、これも縁かなと思って日本で指導を続けることになりました。ふたりで相談して、日本に残ろうかと。
青森山田で指導したのは1年くらいで、妻とふたりで岐阜に行って、岐阜の田中スポーツで指導したり、私は十六銀行の女子卓球部コーチとして10年以上教えていました。それから妻が指導していた、愛知・一宮の美崎クラブで一緒に教えるようになりました。もう一度新しい環境で、新しい指導をやってみたいと思ったから、プロコーチになる決断をしました。

 

2012年前期日本リーグ女子1部で、劇的な優勝を飾った十六銀行(左から二人目が董)

 

−現在は美崎クラブでの指導の他に、愛工大名電中・高や愛知工業大でも指導されていますね。

 名電で教えるようになったのは、美崎クラブの教え子である木造勇人や高見真己が愛工大附中(現・愛工大名電中)に入学してから。真田浩二先生に「できれば続けてふたりの面倒を見てほしい」と言われて、教えるようになりました。
今は愛工大名電の中学・高校と愛知工業大に、週に1回くらい指導に行って、選手がローテーションしながらぼくがひとり20分くらいずつ見ていく感じです。あとは日本リーグ女子1部のエクセディでも週に1回、柳延恒さんと交代で指導しています。

 

−木造選手は小学生時代から全国大会で優勝して、天才とも言われていた選手です。董さんから見てどのような選手だと感じますか?

 ぼくは木造を天才とは思わないですよ。努力の人であり、真面目ですね。(水谷)隼や丹羽(孝希)、あのふたりは天才ですけど、木造は努力家だし、性格的にはおとなしくて優しい。
高見は木造とはまた性格が全然違うけど、ちょっと「欲」が足りないですね。小さい頃からシングルスの全国大会も2位や3位が多い。もうちょっと欲を出してほしい。今大会が準優勝で終わったとしたら、次の大会では絶対に優勝したい、死ぬほど優勝したい、もし優勝できなかったら次はないという気持ちですよね。それは技術の問題ではなく、気持ちの問題です。

その欲が一番すごい選手が張本(智和)くんですよ。試合では最後まであきらめずに戦って、勝つまでやめないという欲ですよね。それが張本くんの一番の才能です。たとえば彼が中学1年で初優勝した2016年の世界ジュニアの時、誰も彼が優勝するとは思っていなかった。でも相手と比べて多少格下であっても、勝利に対する欲が技術のレベルの差を埋めてしまう。ギリギリで勝ってしまう。勝つために、最後まで絶対にあきらめないという気持ちがあります。

 

−気持ちの部分というのは、指導者であっても教えるのは非常に難しいですね。今は勝利への欲求が強い子は、あまり多くないかもしれない。

 それは性格ですよね。気持ちの部分、意識の部分については隣で言い続けるしかないけれど、コーチはあくまでサポートする役割で、最後に実行するのは選手。大事な場面ではどうしても気持ちのあまさや迷い、弱い部分が出てしまいやすい。卓球は大事な場面になるほど、選手の人間性が現れます。それは間違いないですよ。木造も大事な場面で安全策に気持ちが傾いて、「ミスをしたらどうしよう」という心理状態になりやすい。その意識を変えるのは一番難しいことですね。

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