男子シングルス準々決勝、張本智和が中国の世界ランク10位・向鵬を4-2で下した。ファンの声援、戦術、そして昨日敗れた妹・美和の試合への想い―試合後のミックスゾーンで語られた言葉には、勝利の喜びと同時に、競技の在り方への率直な提言も滲んでいた。
⚫︎男子シングルス準々決勝
張本智和(日本) 4 (-11,6,-7,7,6,11) 2 向鵬(中国)
「すごくうれしいですね。相手も出足から良いプレーをしてきて、地力のある選手に勝てたことがうれしいです」。
第1ゲームを落とし、第3ゲーム終了時点で1-2とビハインド。それでも張本は慌てなかった。「どう逆転するかを考えてやれた」と語る通り、流れを一つずつ引き寄せた。
さらに張本の背中を押したのは、会場を包んだ大歓声だった。「ファンからいつも以上の歓声をもらったし、うれしかった。みなさんのためにも明日頑張りたい」。
準決勝では、過去に敗れているカナック・ジャー(アメリカ)との対戦が待つ。「粘り強い選手で以前負けているのでリベンジしたいです。」と語った。
張本は劣勢でもおくせずに両ハンドでたたみかけた
試合後、張本は相手チームの監督の振る舞いにも言及した。「相手の監督がぼくが勝った時には握手をしてくれない。林詩棟に勝ったときもしてくれなかった。でも王楚欽が勝ったときにはしてくれる。もう少し相手をリスペクトしてほしい」。
国際舞台でのエチケットや態度に対する率直な思いが、言葉に乗った。
この日の張本は足に軽い痙攣を感じていたが、「できればメディカルは使いたくなかった(笑)」と苦笑い。
妹・美和の試合で起きた、長時間に及ぶメディカルタイムアウトについては表情を引き締め、以下のように応えた。
「勝つためには己を強くするしかない。ルールは守ってくれない。終わってから言っても……。でも見てて涙が出るくらい悔しかった」。
さらに制度運用の在り方にも踏み込む。「あそこはナショナルチームの中立なマッサーがやるべきだと思う。(コーチである)お父さんが美和のマッサージをやるのと同じですから。」
勝利後にはともに戦ったベンチの岸川監督に飛びついた
向鵬に勝利したことで、張本は改めてその存在感を示した。「どんな状況でも勝つんだ、オリンピックチャンピオンはどんな状況でも勝つ」。
ファンとともに戦った横浜の一夜を糧に、準決勝では過去の雪辱を晴らすためコートに立つ。(楊彩乃)
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