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世界卓球2025

日本勢46年ぶりの男子シングルスのメダルにあと一歩。戸上隼輔、モーレゴードの執念に屈す

●男子シングルス準々決勝
モーレゴード(スウェーデン) ー14、ー3、7、8、10、9 戸上隼輔

……本当に惜しかった!
戸上隼輔、スウェーデンの「鬼才」モーレゴードから2ゲームを先取するも、勝利への執念を見せたモーレゴードに僅差でかわされ、2ー4で惜敗。日本男子の男子シングルスでの戦いが終わった。

1ゲーム目からモーレゴードのサービスを正確にレシーブ。台上で先手を奪い、モーレゴードの堅いブロックを連打でこじ開け、得点を重ねた戸上。1ゲーム目を16ー14の接戦で制し、2ゲーム目も中盤で一気にリード。モーレゴードが苛立ちを隠せず、プレーが荒くなったのを見て「ついに男子シングルスのメダルか?」とコートサイドでゾクゾクした。戸上のサービスも非常によく効いていた。

威力と安定性を兼ね備えた「カミソリ両ハンド」は、モーレゴードの堅陣をも切り裂いた

しかし、時折いら立ちを爆発させながら、そこで切り替えてスッと集中力のスイッチを入れてくるのがモーレゴード。しぶといブロック、独特の緩急と強打で2ゲームを奪い返す。

バックのチョップブロックにプッシュと、相変わらずの多彩なプレーを見せたモーレゴード

それでも5ゲーム目は戸上が出足から離し、10ー8でゲームポイント。ここを取って勝利に王手をかけたかったが、勝負どころで痛いミスが出てモーレゴードが12ー10と逆転。6ゲーム目もシーソーゲームとなったが、モーレゴードの10ー9のマッチポイントで戸上の強打がコートを大きくオーバーした。

勝利したモーレゴードが「いつものポーズ」をしばらく繰り出せないほど、追い詰められた一戦だった。しかし、戸上のカミソリ強打でラリー戦を支配されても、様々なテクニックで得点を稼ぎ、接戦を制する試合運びはさすが世界のトップクラスだった。

メダル獲得を決め、ベンチに入った兄・マルテと抱き合うモーレゴード

試合後のミックスゾーンで、「モーレゴードの長所は守備力の高さと、変幻自在な回転をラリーで混ぜてくるトリッキーなスタイル。上田コーチとはラリーになれば五分五分なので、ラリーに持ち込むまでは我慢、我慢と試合前に話していた」と語った戸上。「レシーブは思った以上にできているなという感覚はあったんですけど、相手のほうがサービスの種類は豊富で、対応しきれなかった部分もある。競った場面であまいレシーブになったり、サービスが出てしまったりして、そういう細かい技術に差を感じました」(戸上)

ミックスゾーンでコメントする戸上

現役を引退したばかりの上田仁コーチがベンチに入り、初めて二人三脚で戦った世界卓球。最後は悔しい逆転負けに、試合後のベンチでじっと考え込むふたりの姿があったが、滑り出しとしては文句なし。ここからエースの張本智和に肩を並べ、日本男子のツインエースと呼ばれる存在になれるか。「彼(張本)をひとりにさせるわけにはいかない。張本選手以外の日本代表、みんなで彼を支えて、そして彼を追い抜ける存在にぼくがなれるように頑張りたいと思います」と抱負を語った戸上。意外な形で決勝に進出した男子ダブルスで、1961年北京大会の星野展弥/木村興治ペア以来、実に64年ぶりのタイトルを日本にもたらすか。

試合後のベンチでの戸上と上田コーチ。今日は悔しい敗戦だった、今後の戸上のさらなる成長が楽しみだ

●男子シングルス準々決勝
王楚欽(中国) 10、8、8、10 林昀儒(チャイニーズタイペイ)
梁靖崑(中国) 5、8、ー7、ー5、8、ー8、7 林詩棟(中国)
カルデラノ(ブラジル) 4、6、ー9、7、10 安宰賢(韓国)

男子シングルス準々決勝、その他の3試合の結果は上記のとおり。中国の王楚欽と梁靖崑、男子ワールドカップで優勝したカルデラノが勝ち上がった。準決勝は梁靖崑とカルデラノ、そして王楚欽とモーレゴードという、非常に楽しみな対戦カードになった。

競り合いながらも林昀儒をストレートで破った王楚欽。次第に調子を上げている

左ひざに故障を抱えながらのプレーとなった林昀儒だが、実力の高さは見せた

後輩の林詩棟をゲームオールで振り切った梁靖崑

世界ランキング1位の林詩棟は、梁靖崑にあと一歩

カルデラノは初の世界卓球のシングルスの表彰台。次第に調子を上げている

昨日の4回戦でF. ルブラン(フランス)を破った安宰賢だが、カルデラノには通じず

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