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全中2021

ともに口にした「メンタル」の重要性。両校監督が語る全中男子団体決勝

 愛工大名電(愛知)の2連覇で幕を閉じた全中男子団体戦。初優勝を目指した野田学園(山口)はラストまでもつれる接戦を展開したが、惜しくも頂点には手が届かなかった。愛工大名電と野田学園は前回大会(2019年度)、今春行われた選抜、そして今回の全中と3大会続けて決勝で対戦。高校でも、今年行われたインターハイ男子学校対抗決勝も前回大会に続き2大会連続で愛工大名電と野田学園のカードとなり、選抜に至っては6大会連続で両校が決勝を戦っている。現在の男子中・高卓球界を牽引する存在の両校だが、全中男子団体戦決勝を愛工大名電・真田浩二監督、野田学園・中川智之監督の試合後のコメントから振り返る。

愛工大名電・真田浩二監督

野田学園・中川智之監督

 

【男子団体戦決勝】

〈愛工大名電 3-2 野田学園〉

○菅沼 9、8、10 岡本

○吉山 7、3、2 木村

 渡邊/日髙 6、-9、-8、-7 丸川/大坪○

 坂井 -8、-7、-7 小園江○

○杉浦 -6、10、8、8 渡辺

 

 まずは決勝のオーダー、愛工大名電が動きを見せる。決勝までシングルスの出場は予選リーグの1試合のみで、他の試合ではダブルスに出場していた菅沼翔太を1番に起用した。この意図を真田監督は「どうやって3点取るかと考えた結果」だと語る。

決勝でのシングルス起用に応え、先制点をあげた菅沼

 

 「菅沼はシングルスの実力でもチームの中で3番手の実力がある選手。大会前の練習の段階から、『シングルスでもダブルスでも、どんな場面で使われても良いように準備してくれ』と伝えていました。決勝の相手が決まって、どうやって3点取るかと考えた時に、菅沼の個人戦での試合を見て、信用できるなと感じていたので決勝ではシングルスで起用しました」(真田監督)

 その菅沼は中川監督が「ウチで一番勢いのある選手」と評した岡本智心をストレートで完封。見事にシングルス起用の期待に応えると、愛工大名電は2番の吉山和希も木村友哉を3-0で下し、一気に2連覇に王手をかけた。

エースの吉山もきっちりと勝利をあげて愛工大名電が王手

 

 追い込まれた野田学園だが、丸川智弘/大坪祥馬が1ゲームを先行されながら逆転で勝利をあげると、4番では小園江紀也が団体戦ではなかなか調子の上がらなかった坂井雄飛を一蹴。野田学園が前半の悪い流れを引きずらず、ラストに持ち込んだ。中川監督は1・2番を取られても「自信はあった」と振り返る。

 「(決勝の)オーダーは半分は当たったかなと。ダブルスは自信があったので、1・2番を取られても、ダブルスと4番で勝負して、5番まで回ったら思い切ってやれた方が勝つと考えていました。ダブルスの練習は中国大会が終わってから2週間くらいの間、けっこうやってきました。右利き同士のペアが来ても、右利きと左利きのペアが来ても良いように対策練習はずっとしてきたので相手がどうであれという感じでしたね。(4番は)準決勝まで、小園江の出来がすごく良かったので、イメージ的に坂井くんと勝負できるかなというのがあって、思い切って当てにいきました」(中川監督)

中川監督の「自信はあった」という言葉どおり、丸川/大坪がポイントゲッターの役目を果たす

決勝でも好調ぶりを見せた小園江

 

 勢いに乗る野田学園は5番に出場の渡辺凉吾が思い切りの良いプレーを見せて第1ゲームを奪う。対する愛工大名電の杉浦凉雅はやや硬さが見られ、2ゲーム目も渡辺ペースで試合が進む。ただ、真田監督は杉浦のスタイル、性格的にも、ここからが勝負と考えていた。

渡辺は出足から素晴らしい強打を見せた

 

 「オーダーを発表した時点で杉浦には『必ず回るよ』と伝えていました。自分が出ずに優勝するよりも、自分が試合に出て勝って、記録に残ったほうが良いんじゃないのと。自分が出て勝って、それで優勝を決めるという経験は人生の中で大きなものになるから『オレに回せ』という気持ちで準備してくれと伝えていました。ウォーミングアップを見ていても、そういう気持ちでやってくれていた。でも最初は硬かったですね。

 彼はベテランみたいというか、相手のボールを見極めて試合を進めていくタイプなので、1ゲーム目より2ゲーム目、2ゲーム目より3ゲーム目と試合が進むにつれて良くなっていく。2ゲーム目を逆転して取れたのが大きかったですね。性格的にもあまり動じないタイプなので、良い意味で鈍感な部分が結果につながれば良いなと考えていました」(真田監督)

1ゲーム目は精細を欠いた杉浦だが、徐々に流れを引き寄せていく

 

 2ゲーム目の終盤で逆転し、ゲームカウントを1-1に戻すと、3ゲーム目も杉浦が奪取。4ゲーム目も終盤まで点差が離れずに試合が進んだが、最後は11-8で杉浦が逃げ切ってチームに優勝をもたらした。真田監督の言葉どおり、ゲームが進むにつれて本来のプレーを取り戻した杉浦。得点を急ぐことなく、バック対バックでは緩急をつけながら細かなコースチェンジでチャンスメイク。あまくなったボールを確実に仕留めていったが、その佇まいには中学2年生らしからぬ落ち着きがあった。

尻上がりに調子を上げた杉浦。気迫を前面に出しながら、プレーは冷静だった

 

 団体戦決勝を振り返り、両校の監督が口にしたのは「メンタル」について。敗れた野田学園の中川監督は、そこに愛工大名電との差を感じると口にした。

 「最後に流れをつかめなかった部分が意識の差、経験の差、メンタル的な部分が日頃の練習から足りないのかなと思います。(5番の渡辺は)1ゲーム目あれだけ思い切ってやって、このまま行けるかなと思ったけど、競ってくるとあまい部分が出るというか、そこが名電さんのほうがメンタル的に強いのかなと感じました。試合前に『こっちがチャレンジャーなんだから』という話はして臨んだんですけど、やっぱり硬くなりましたね。

 今年は中国大会のシングルスでも優勝できなかったり、チーム全員が同じくらいのレベルだったので、エースがいないというのは厳しいのかなと感じました。エースを育てること、全体としての意識だったり、卓球に全力で向き合えるかどうかが今後の課題かなと思います。来年こそはリベンジできるように頑張っていきます」(中川監督)

 

 例年、愛工大名電は主要大会前にはメンタルトレーニングを取り入れて準備を進める。しかし、「選抜から実力だけでなくメンタル面でも不安があった」(真田監督)と今回は例年より2カ月早くメンタルトレーニングに取り組み、それが優勝の一因だと真田監督は語った。

 「(団体戦を終えて全体として)想定していたような試合内容だったかなというのが正直な感想。予選リーグも含めて、どの試合も苦しむんじゃないかとは大会前から思っていました。戦力的にダウンしている部分もある中で勝てたのは良かったかなと思います。実力もそうですし、メンタル的な部分での不安も選抜から感じていたので、それを解消するためにいつもより2カ月早くメンタルトレーニングを取り入れ始めました。結果的にそれが良かったかなと思います。

 今後はひとりひとりが高い目標に向かって、1日1日どれだけ努力して近づいていけるかなというところで、1人でも多く世界に羽ばたけるように努力して行きたいと思います」(真田監督)

 

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