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【卓球レディース】嗚呼!卓球母 その1/卓球母とは金銭感覚にバグを起こした新種の人間

スケートボード場ではなく、そのショップで滑りまくった卓球母

【エッセイ=西村友紀子】

 

ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(卓球父)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。

 

私は高校生スタートの卓球レディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が小学生になると卓球教室へ週3以上も通わせることに。そんな矢先、子供が突然「スケボーを習いたい」と言い出しズッコケました。

卓球とは見た目も見た目が全然違うシャレオツな競技。その効果をググると「下半身の強化やバランス感覚を養なう」とのこと。卓球にも役立つならいいかと、外国へ行く気分でスケートボード教室の体験レッスンを予約。卓球の練習帰りに子供を連れて行きました。

場所はファッションビルの一室で、ノリの良いヒップホップが流れるコンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュな空間。大人は空気を含んだダボダボの服に身を包み、万単位のフォロワーへ披露するためか、子供のスケーティングをバシャバシャと撮影しています。

卓球ウエアを着た私たち親子が身の置き場に困っていると、「あっ、〇〇君や」と息子が声をあげました。偶然にも同じクラスの子が来ていたのです。その子のお母さんを見ると、モノトーンのボーダーファッションが似合うモデルのように素敵な方。卓球ファッションの私はあわてて壁と同化し身を隠しました。ところが、顔は土色でもパープルのウエアが目を引いたのか、お母さんに声をかけられ「よかったら、一緒に習いましょうよ」と誘われました。

えっ、私、JTTAのセットアップ姿なのに? 完全アウェイの卓球母を快く受け入れてくれた美しいママに感化されたのか、私は帰りに併設のショップに立ち寄り、ボードを物色。ちょっぴりその気になったのです。すると丘サーファー風の色黒歯白の店員さんが現れ、初心者のジュニア用のボードを勧めてくれました。それはどれも2万円越え。1万円の物を手にすると「それはすぐ使えなくなるのでおすすめしません」とキッパリ。どれだけ稲村ジェーンやねん!!!

建築現場ならそこらに転がるであろう板キレに、おまけ程度のコロコロが4つ付いたら2万円を超えるって、はぁ? 主婦の感覚ではありえない。ボードやってる人は金銭感覚がバグっているんじゃないか。歯白君に「100円ショップのウッドコーナーに向かって土下座しろ!」と文句を言ってコスパのいろはを教えてやりたくなりました。

とはいえ、それがこの業界の値ごろ感なら仕方がありません。サンタさんに頼むか、そもそもサンタさんのおカネの出どころは……と2ヵ月ほど真剣に悩んで結局買いませんでした。子供の気が変わり「サンタさんにゲームをお願いする」と言い出したからです。6000円ほどのサンタ費で良かったと胸をなでおろし、無事にその年を越すことができました。

あれから2年。先日、子供に「ラケット割れたから買い替える」と言われ、「はーい」とお財布から2万円を取り出し、ふと手が止まったのです。あれ、何か感覚がおかしい。手の平よりちょっと大きい板切れとゴム2枚に諭吉さん2枚って……。しかもクリスマスでもない日に、稲村ジェーン級の出費!!!

今度、100均のウッドコーナーで土下座してまいります<m(__)m>

 

 

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