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今野の眼

1割以上の棄権者。121人の無念。されど81回目の「全日本」は続く

「全日本卓球」の聖地で戦えなかった121人の無念さ。

しかし、勝っていく選手たちの評価と価値は変わらない

 

昨年、厳戒態勢の中、大阪卓球協会は見事な運営を見せた。そして、今回も日本卓球協会は開催を躊躇せず、東京都卓球連盟の運営は見事に進んでいる。さらに大会前に、協会は土曜日と日曜日を無観客から有観客にする決断を下した。

昨年はダブルス種目を実施できなかったが、今年は全種目を実施、感染対策のための特別なタイムテーブルを作るために、練習会場だったサブアリーナを大会3日目まで試合会場としたり、それによって練習会場がないために、練習なしでコートに入るなど、特殊な環境下での試合を余儀なくさせられている。

1年前の全日本、会見でコメントする選手たちは口々に「開催していただいた関係者の方々に感謝したい」と言葉を残していた。全日本に懸ける選手たちの思いの裏に、運営する人たちの献身があり、選手たちも理解している。

1年前は開催直前まで新型コロナ感染拡大で開催が危ぶまれ、大会途中で大阪では緊急事態宣言が発出され、大会前に「全日本を棄権」と発表するチームもあり、出場する選手たちに戸惑いが走り、心理状態にも影響を与えていた。

しかし,今年、選手たちは順応している。「全日本は開催するはずだ」という心の準備を持ち、徹底した会場での感染対策や試合中の決まりごとにも困惑することなく、試合に集中している。

トップ選手ならば、全日本に10回以上出場する選手は少なくない。しかし、その1回の棄権によって人生が変わってしまう人もいるかもしれない。学生選手ならば進路先に影響するからだ。それがマイナスの影響を与えることなく、選手としてのキャリアを続けてほしい。

「全日本卓球」の聖地とも言える東京体育館で戦いたかっただろう棄権した121人の無念さがあったとしても、勝っていく選手たちの評価と価値は変わらない。この状況での棄権をアクシデントとするならば、そういう中で冷静に、かつ集中した試合ぶりが選手たちに求められている。

今日、張本智和(木下グループ)、早田ひな(日本生命)が混合ダブルスで優勝した。ジュニアでは男子・吉山僚一(愛工大名電高)、女子・木原美悠(JOCエリートアカデミー/星槎)が栄冠に輝いた。観客席からの拍手がなくても、彼らの栄誉に全国の卓球ファンは拍手をおくっている。

ジュニア男子で2年ぶり2回目の優勝を飾った吉山僚一

 

 

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