21日に全国高校選抜卓球大会7連覇を達成した「メイデン」こと、男子の愛工大名電高(愛知)。
卓球王国最新号(5月号)では、特集「メイデンの教え方」として、二人の指導者、今枝一郎と真田浩二の両監督へのインタビューと、卒業するメイデン四天王への贈る言葉と、練習内容を紹介している。
創部から92年、日本の卓球界を長く支えてきた。インターハイで通算19回の優勝、高校チャンピオンをのべ9人輩出している「メイデン」はどのように練習し、鍛えられているのか。
練習場では、中学と高校の垣根はなく、メイデンは今枝一郎・真田浩二というツートップの指導者の元に作られている。全寮制で練習場の横にある寮で生活する選手たち。二人の指導者が寝食をともにして選手たちをコーチングする様は、「名古屋のジュニアナショナルチーム」のようだ。
2016年に監督としてインターハイで初めて優勝した今枝一郎は、自身の指導法の変化を口にした。
「以前は、負けたことを追求する、反省していくことをやっていたけど、今は負けたら、『さあ、次行こうよ』と、あまり気にしないし、選手を責めたりもしない。負けて一番辛いのは本人だし、負けた時に何か言っても聞く耳はないと思い始めました」
「今は試合で負けると、『オレのアドバイスが悪かったかな、ごめんな』と言うことのほうが多いですね。それは本心でもあるし、選手が傷つかないように気をつけます。落ち込んでからはい上がるのはエネルギーが必要で大変なので、こちらが責めなくても、本人が気づくことのほうが良いのです」
「昔は口うるさく言ってましたが、あまり言い過ぎると選手たちの耳にも入っていかないから、ボソッと言うようになりました。プラスのことを言うべきか、叱咤するべきか、そのタイミングを見計るようにしています。たくさん言い過ぎると言葉が軽くなります」(卓球王国5月号今枝インタビューより)
現役時代、インターハイチャンピオン、全日本チャンピオンという栄光の足跡を残しながら、母校の指導者に転身した。勝てない時期を乗り越え、常勝軍団を作り上げた今枝。
全日本チャンピオンになったあとに彼にインタビューしたことがある。今から30年前の話だ。愛知工業大時代に全日本チャンピオンになった直後。印象的だったのは「ぼくは自分の試合のラブ・オールからゲームセットまでの得点と内容を記憶しています」というコメント。
その今枝監督の特性は指導者になっても生きている。奇しくも、真田浩二(愛工大名電中監督)が今回のインタビューでこう語っている。「今枝先生も選手の本質や気持ちを見抜く部分が非常に研ぎ澄まされています。その部分では自分と共通します。加えて、試合の中でも、試合の流れを読んで、選手に解説できる人です。目の前に起きていることを解説できるスペシャリストです」。
愛知工業大時代に全日本選手権で3位に入賞し、協和発酵時代には日本リーグでも活躍した真田浩二。練習場で独特のオーラを発しながら練習を見つめる今枝が「静」なら、選手への細かな打法や練習のアドバイスをする真田は「動」の指導者だ。そして、選手との距離感の近い。
「ぼくが参考にしているのは中国卓球です。ぼくは中国に近づきたい、中国に勝つ選手を育成することが大前提です」「愛工大を含めて、日本代表に近いことは理解しているけど、トップのレベルまで育てきれない歯がゆさも身にしみて感じています」と語る真田が目指すところは高い。
東京五輪金メダリストの水谷隼は「日本男子に氷河期が来る」と予言している。全国から英才が集まる「メイデン」がその氷を溶かすことができるかどうか。二人の指導者の熱量にかかっている。
「メイデンの教え方 前編」を特集した最新5月号
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