卓球場経営と卓球ショップはもコロナ禍で厳しい局面を迎えていた。なんとかこの2年間、高橋は耐えた。
日本にある卓球場は圧倒的に個人がやっているケースが多く、法人化でのフランチャイズ方式は壁にぶち当たるケースが多い。それはなぜか。
卓球場の家賃、光熱費という固定費だけではなく、社員として卓球コーチを雇用すると保険料などの会社負担の経費が増えるし、当然、給料を上げていくことも必要だろう。ところが、卓球のコーチを受けに来るお客さんは特定の卓球コーチという「人」につく。
そのコーチが卓球場をやめるときに、自分のお客さんを引き連れて辞めるというケースはよく聞く話だ。
そこで高橋は卓球場経営で、卓球教室を開催しながらも、社員を少なくし、プロコーチに時間貸し、場所貸しをするようにしている。また、業務提携という形で、自治体と組んで、「卓球場のコンサル契約」をして、卓球場からの利益ではなく、コンサル料を一部の収益にしている。業務提携の卓球場では、自治体や姫路競馬場のような組織が人件費、固定費を出し、運営をTTSタカハシに委託する形っとなっている。
その卓球場に来ている人の1割、2割の人がお店に来ればよいというスタンスだ。
全国のどの町でもシャッター街や空きスペースが問題になっている。実は震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区も復興のまちづくりに時間がかかり、きれいな駅やショッピングビルが建ったのだが、中にあったテナントの撤退が続き、シャッター街になっていた。そこに自治体と組んで「くにづかタック」という卓球場を作った。もともと違う業種の店舗や事務所があったところを卓球場に変身させ、そこで大会をやる時には近所のお菓子屋さん、魚屋さん、鰻屋さんなどの協力を得て、商店街を盛り上げている。
「閉まっている商店街、使われていない土地などを有効活用して、地元の卓球ショップが卓球教室やコンサル契約をすれば町を活性化できます。自分たちで家賃を払って、人を雇ってという時代ではないかもしれない。行政、地方の自治体、収益を求めない組織と一緒に卓球場をやれるのではないですか」(高橋)
日本全国のシャッター街や空きスペースに卓球場ができたら、こんなに楽しいことはないし、卓球界の活性化につながる。そのヒントが神戸にある。
デジタルでつながることもあれば、アナログでしかつながらないこともある。「バーチャル(仮想)ではなくリアル」「デジタルではなく人間のつながり」。マシンを使って黙々と一人で練習するのも卓球かもしれないが、楽しそうに卓球仲間とボールを打ち合い、練習後のお茶や一杯のビールが楽しみという年輩の卓球人も多い。
卓球場がそんな人と人をつなぐ場となり、楽しい町が作られていくことが、ラリーを楽しむ卓球の本来の姿なのかもしれない。
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